なっとうねばねば
公開 2011/06/18 11:35
最終更新
-
朝起きるとまたナオミが落ちていた。「痛くないの」ベッドの横の床に大の字になっているナオミを見下ろして尋ねると「なっとうねばねば」と返事があった。「こつぶなっとう、おおつぶなっとう」と私がつづけるとナオミはよろこんで小さな両手をふにゃふにゃ動かす。私はナオミをだっこしてベッドに寝かせ、彼女の手の、桜の花びらほどの爪を見つめた。おもちゃみたいに小さな手の、ひときわ小さな小指の先にも清潔な爪が行儀よく載っているのは何度見てもなんとなく奇跡っぽい感じがする。もう少しナオミが大きくなれば、こんどはこの爪に私がマニキュアを施すのだろうなと考えた。一通り手遊び歌をうたい終えると満足したナオミは急に泣き出す。いまになってベッドから落ちた痛みがよみがえったのだろうか。私はナオミの頭の後ろに手をさしこんでみて、こぶができていないのを確かめた。そうして私が彼女の湿った細い髪の感触をたのしんでいるあいだにもナオミの泣き声は大きくなり、顔はいよいよ西日を浴びたように赤くなり、手足はべつべつの意志を持っているかのようにばらばらと動き、シーツを蹴り、私を殴る。小さな体をめいっぱいつかってナオミは泣き喚く。もう一度ナオミをだっこするが、彼女は渾身の力で私の手を振りほどき、ベッドの上に落下した。それからごろごろと冒険映画の大岩みたいに転がって自らベッドの下へと落ちた。ごつ、という音がして、覗くとナオミはやはり床で大の字になっている。やけにむずかしい顔で私を見あげるので、私もつられて神妙な顔になった。しばらく見つめあっているうちに私はなんだか泣き出しそうになる。「痛いでしょ」するとナオミは「ぺっぺー」と答える。それはペネロペの食器でごはんを食べたいという意味で、いま私は炊飯器を開けている。
車の運転と犬が好き
他人に話すほどでもなく日記に書くほどでもないメチャクチャどうでもいい話と過去の習作置き場です
「いま私は静かにしている」はいちおう連作ですが、それぞれの話につながりはないです
他人に話すほどでもなく日記に書くほどでもないメチャクチャどうでもいい話と過去の習作置き場です
「いま私は静かにしている」はいちおう連作ですが、それぞれの話につながりはないです
最近の記事
タグ
