夜のまえ
公開 2010/09/06 22:31
最終更新
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ナオミと私はもうずいぶん長いこと、並んで座っているのだった。端の欠けたコンクリートのベンチで、遊歩道の向こうに桑の生垣がある。その向こうに線路があって、二十分に一度くらいの間隔で電車が通っていく。ナオミは小さな両足を揺らしながら、ほとんどの時間はじぶんの足を見つめている。淡いミントいろに紫の水玉が散らばる靴下を、ナオミは葡萄の靴下と呼んで気に入っている。私の靴下は焦げ茶とライラックの縞模様だ。私たちは紫いろが好きだ。かたんかたんと駅のほうから音が近づいてくるとナオミは顔をあげ、まじめな顔で電車を指さす。くすんだ銀の車体には、やはり紫いろのラインが走っている。車内の様子はよく見えないが、大して乗客がいるわけでもない。せいぜい五両程度の電車が走り去ってしまうと、またすぐにあたりは静かになる。日が傾いて、梨目に型押ししたようなうろこ雲が縁から順に染まっていった。いま私とナオミは滲んでいく。
車の運転と犬が好き
他人に話すほどでもなく日記に書くほどでもないメチャクチャどうでもいい話と過去の習作置き場です
「いま私は静かにしている」はいちおう連作ですが、それぞれの話につながりはないです
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