うしろがみ
公開 2010/09/03 21:16
最終更新
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昼過ぎに届いた箱を開けると大量のそうめんが入っていた。「夏はお葬式多いやろ。香典返しが全部おそうめんで、いま我が家はおそうめんの海やねん。助けて」というのが送り主の言い分で、私は有難く頂戴した。そうか夏はお葬式が多いのか。確かにろくな思い出はない。薄い真綿みたいなちぎれ雲も刺すような日差しも陽炎も、それらは全部遠ざかり消えていったものの象徴でしかない。ぐつぐつとお湯の沸く鍋のまえで私はそうめんの包みを開き、紙で束ねられているのではなくゆるく折りたたまれたかたちの麺を手のうえに載せた。真っ白で、思わず息を詰めてしまうほどの細さだ。折れないようにそうっと鍋のなかに落とすとふわりとひろがったその様が、真夏の湖面にひろがる髪のように見えた。私は額の汗を拭い、まぶたをこする。そうめんはあっという間に半透明になり、氷水にさらすと音もなく揺れた。それはなんだかよかった。いま私は昔よりもそうめんが好きだ。
車の運転と犬が好き
他人に話すほどでもなく日記に書くほどでもないメチャクチャどうでもいい話と過去の習作置き場です
「いま私は静かにしている」はいちおう連作ですが、それぞれの話につながりはないです
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