サイレントウェーブ
公開 2026/02/05 10:27
最終更新 -


波佐間さんの知り合いという夫婦の予約の当日の日が来た。波佐間さんから聞いた連絡先にこちらから連絡して都合のつく時間帯を調整した。電話でたずねたアンケートによると、30代後半の夫婦で、ご主人はコンサルタント会社を経営していて、波佐間さんとは仕事の付き合いだがあるとのことだった。そして13歳になる娘さんがいてその娘さんのことでの相談らしい。

予約はAM10:30 。予定より10分早く訪れた30代後半の夫婦は何やら大きな後ろめたさを感じているような雰囲気だった。

「山城様ですね。お待ちしておりました。どうぞこちらです。」

席に着くと二人ともコーヒーをオーダーした。

「かしこまりました。」

カフェの曜日の時にだけ来てくれるバリスタにコーヒーをお願いすると、靖穂さんを呼びに行った。休憩室で身支度を整えている靖穂さんはわたしが声をかけると、ありがとうと言って、二人が待つ場所へと向かった。

カウンターが5席、テーブル席が6つ。この席が全部埋まることは皆無に等しかったけれど、まばらに居る客が落ち着いて食事ができるような内装になっていた。

「初めまして、このカフェのオーナーをしている加藤です。よろしくお願いします。えっと、波佐間さんからの紹介でしたね」

「はい。波佐間さんに評判を聞いて、紹介していただきました。」

と奥様の方が答えた。

わたしはそこで靖穂さんに事前に答えてもらったアンケートのメモを手渡し、カウンターに入りタブレットでメモを残す準備をした。世間話が終盤に入ると、ちょうど良いタイミングでコーヒーができた。

「どうぞお召し上がりください。」

その一言から本題に入るようだった。

「娘さんのことでご相談ということでよろしいですか?」

「娘というよりは娘の学校の友達家族のことで。」

靖穂さんは頷きながらこの夫婦の話を聞いていた。

「娘同士が友達でその子の両親とも顔見知りで家族ぐるみの付き合いがありました。けれどある日、その家族が事情があって田舎の方に引っ越ししてしまったんです。娘たちはスマホで連絡を取り合っていたみたいなんですけれど、ある日パタッと連絡が途絶えたらしく、娘が心配して引っ越し先の自宅に電話したところ、おばあさんがでて、その家族は別な場所にまた引っ越したと言ったそうで、引っ越し先を聞いても教えてはもらえなかったと娘に泣きつかれてしまって、なんだか不思議な話だけれど家庭の事情というのもありますし…、でも思い切って警察に相談したところ、失踪届だったり、捜索願いのようなものは出されてなくて、娘になんて説明していいかわからないんです。落ち込んでいて、学校にも行きたくないと登校拒否気味で。」

「それは心配ですね。変なことを聞きますが、そのご家族が住む家というのはどうなりました?」

「娘の話だと、いつか戻ってくるから家はそのままにしておくという話のようで、そういうやり取りをしているメッセージも見せてもらいました。」

相談中旦那さんの方は終始無言で、ときより同意を求める奥さんの言葉に頷くだけだった。

「わかりました。一番心配なのは娘さんのことですよね」

「そうなんです。娘の将来がこのままだと心配なんです。今日もつれてこようと思って声をかけたのですが、嫌がって部屋にこもてしまったんです。友達がいない学校には行きたくないというばかりで、時々、学校に行っては、早退してくるんです」

「少し時間が必要かもしれませんね。突然連絡が途絶えたら気になりますし、自分を責めていたりするかもしれません。まだ10代だしいくらだってやり直しがききますよ。今はそっとしてあげておいてください。占いという名目以外でも、気軽なカフェとしてここは営業していますので、一度娘さんといらしてください」

「そうでしょうか?」

特に奥さんの不安げな様子が解消したようには見ていて思えなかった。その様子を察してか靖穂さんがこういった。

「営業日ならいつでもお待ちしていますよ。その時は事前に予約をお願いしますね。うちはケーキもとびっきりおいしいんですよ。」

煮え切らない様子の奥さんと早くこの場を退散したそうな旦那さん。

「ほかに何かご注文ありますか?」

そう靖穂さんがたずねた。

「今日は申し訳ないですが、コーヒーだけですいません。」

「いえいえ、お気になさらずに、じゃぁ、初美さん、お会計よろしくね」

「はい。」

そういうと靖穂さんは頭を下げて休憩室の方に下がっていった。

「コーヒーがお二つで780円になります。」

すると、夫婦が二人で顔を見合わせた。

「あの相談料は?」

旦那さんの方が言った。

「いただかないことになっています。」

すると旦那さんが財布から1000円札を出した。

「もう一ついいですか?次回の予約って今取れますか?」

そういったのは奥さんの方だった。

「もちろんです」

わたしは予定表をチェックしながら次回の予約を受け付けた。そしてメニューが載っているパンフレットを手渡した。そして夫婦は帰っていった。
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