ウソツキ
公開 2025/11/18 09:19
最終更新 -
5ー

次の日は休日で仕事が休みだった。夕方の6時からお通夜が始まるらしい。わたしは井堀に指定された駅で待っていた。井堀もちゃんと喪服を着てきた。

「喪服もってたんだ?」

「バイト先の知りに合い借りてきたんだ」

なるほど。井堀は今はコンビニでバイトしながら暮らしていた。たまに井堀がバイトしているコンビニの前を通る。

「店長さん?」

「最近は入った大学生の大人しいやつ」

「そう。」

井堀がスマートフォンのアプリで道のりを調べてくれた。それを頼りに葬儀会場まで歩いた。10分ぐらいするとスマホが到着を知らせてくれた。時間も場所も正確だった。

「随分正確なんだね」

わたしが言うと

「唯奈スマホとか疎そうだもんな。」

「うん、よくわかんない」

わたしは素直にそう答えた。

会場に入ると、ロビーで談笑する中に広奈と柿山先生に姿を見つけた。

「まさか唯奈ちゃんまで来てくれるとは思ってなかったわ。」

「ご無沙汰してます。」

「さぁ、一応記帳してご家族に挨拶しようか?」

柿山先生の案内で双葉の母親に会った。

「施設で一緒だった井堀くんと笹塚さんです。」

「この度はわざわざ足を運んでくださってありがとうございます。」

双葉の母親はわたしが思っていたより、年齢をかさねていて常識人のような人に見えた。死に化粧をまとい棺に眠る、双葉の死に顔はまるで別人のように見えたけれど確かに、そこに眠るのは双葉だった。18歳になった彼女は、どうやらキャバクラで働き始めたのだけれど、馴染めなくなって悩んでいたと母親が話してくれた。けれど本当の事はきっと誰も知らない。

「ありがとう。先生もう少しお母さんのそばにいてあげたいから」

わたしたち三人は先生にそういわれて葬儀場を後にした。

「ツグミこなかったね?」

そういったのは広奈とだった。

「明日には来るのかも。」

とわたしが答える。

「どうかな?」と広奈がわたしの顔を悪戯っぽくのぞき込む。わたしは気まずそうな表情を広奈に向けた。

「二人とも仕事は順調?井堀はコンビニだっけ?」

「バイトだけどね。何とかやってるよ」

井堀が答える。

「唯奈は?清掃業?」

「うん。何とかね。生活していくには稼がないとそっちは?」

「わたし?」

広奈はわたしに左手の薬指にはめられた指輪を見せた。

「結婚すんだ広奈ちゃん。」

といったのは井堀だった。

「うん。相手はね高校の先輩。」

なんだか幸せそうだ。

「あの整備工の?」

とわたしが言う。

「うん。そう。」

広奈は施設を出た後、介護職の仕事をしていた。

「ふーん。」

「何?おめでとうって言ってくれないの?唯奈は」

「そりゃ無理があるよ。唯奈の気持ちもわかってやってよ」

広奈は年下のわたしに、たまに揶揄う様なそぶりを見せる。けれど面倒見のいい人だったことには変わらない。

「おめでとう。」

「言わせたような気もしなくもないけれどここは素直にありがとうってうけいれておくよ」

わたしは広奈に笑顔を向けた。

「わたしもさ、いつか介護の仕事に移りたい。」

なぜかわたしは思いもよらないことを口にしていた。

「いつでも言ってよ。相談に乗るし」

「うん。」

広奈とさよならした後、送ると言ってくれた井堀の申し出を行くところがあるからと嘘をついて断った。

わたしは時々つまらない嘘をつく。誰が得をするわけでもないそんなつまらない嘘を平気でつく。

アパートについて喪服を脱ぎ散らかして、クローゼットの奥にしまってある名前も知らないブランド物の服に着替えて、これまた名前も知らないブランド物のバックを手に取って、机の引き出しにしまっておいた香水を自分に振りまいた。そして洗面所の引き出しにしまってある化粧品で自分に化粧を施す。どうやらわたしは化粧がうまいらしい。自分の顔が綺麗に仕上がっていくのがわかる。

そう、わたしは美人でスタイルもいい。そう内面でつぶやきながら鏡を見てつぶやく。

財布とスマホをバックに詰め込んで、シューズボックスの中にしまってある、ヒールを出してそれを履いてアパートの部屋を出る。わたしが歩くと地面ではハイヒールが鳴る。その音にわたしの胸の鼓動は弾んでいた。
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