響き(どよめき)
公開 2025/11/04 10:43
最終更新 -
欲を満たす関係性だけならあとくされがない。互いに性欲を満たした後で、さよなら。次会うか会わないかは、どうだっていい。会ったばかりの人と肉体関係を結ぶ、そのことに危険を感じないか…と言われれば嘘になる。そのスリルにさえ、快感があるのだと思う。危険なドラックと同じかもしれない。

わたしにとってその日の相手を選ぶとき結婚してるかしていないかの有無はとても重要なこと。火遊び程度でも、ちょっと心に影がかかれば、わたしは大切な物を壊しにかかる。その代償もちゃんとわたしにふりかかってきて、民事で裁判なんてことになって、挙句の果てには離婚劇に巻き込まれる…、そんな面倒なことごめんだ。

けれども、ちょっと危険な雰囲気が漂う場所で相手を探す場合は既婚者が多い。もしかしたら、わたしが知らなかっただけで、過去に関係を持った人たちも結婚していたかもしれない。でもそんな事どうだっていい。もう過ぎた日のことだし。

たまに、道ですれ違う、恋人同士や親子連れをみる。年齢は同年代ぐらいだろう。わたしはその関係性にわたしの未来を見ることができないしその状況に不思議と悲しさはない。悲しさというよりは、その関係性に徹底した矛盾を見つけ出し、わたしの心の中でぐしゃぐしゃにする。そしてこのぐしゃぐしゃな心の安定を取り戻すように欲を満たす。それでわたしはわたしを取り戻していく。

不思議と危険な目に会ったことがなかったのが救いだったのかもしれない。それともわたしが特質的に相手を見抜く力を直感的に備えていたのかな…。けれど、自分が選んだ相手との時間の共有はわたしにとっては楽園。相手がわたしを求めれば求めるほどわたしは欲情していく。

会って食事だけの関係で終わった人もいた。相手に一線を引かれたらそれ以上は踏み込めない。差し出された手をとって街を歩けてしまうそんな風にはなれないし。

「俺、彼女いるんだよね」

情事が終わった後、コンドームを始末しながらベットに横たわるわたしに向かって男はそういった。だから何?と思った。けれどそこでその感情をぶつけては負けだと思った。なぜ負けだなんて思うのかはわからないけれど、そう思ってしまった。会うのはこれで三度目だった。

「そう。なんでそんなこと言うの?」

本音はきっと見透かされていない。わたしは悲しそうな顔をする。

「今日は帰るよ」

男はベットの下に散らばった服を着て、そそくさと帰る準備をする。わたしは快感に浸りきった身体で相手の感情を読み取ろうとしたけれどできずに何も答えない。

「引き留めないんだな?」

男はわたしの方を見ながら言う。

「引き留めてほしい?」

「泣かれるかと思ったよ」

泣けたらここでわたしは純粋な女になれるのかな。

「泣けないけど、悲しいかな。」

「そんなに知らないもんな。お互いの事をさ。」

「知らないね」

男は黙ってベットに座たままだ。

「改めて自己紹介でもしますか?」

わたしは冗談まじりに言う。

「仕事は?」

と男はたずねる

「聞かれても。嘘しか答えないよ」

とわたしは答えた。

ここでわたしは一つ賭けをした。男がわたしに最後に一瞬でも身体に触れたら、次がある。男が触れずに帰ったら次はない。くだらない賭けだ。どちらにしても、わたしは戸惑いや揺れ動く感情をかき消すように次を求めていくのだろう。

ー終わりー

この物語はフィクションです。
フィクションで小説を創作しています。


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