アッシュ
公開 2025/05/04 01:08
最終更新 2025/11/03 13:07
わたしは美しく生まれたかった。ちょっと遅めに起きた朝、洗面所の鏡で自分の顔をみてまざまざと思った。フェイスタオルで顔を拭いてもう一度鏡をみても、やっぱり醜い。

毎朝この醜い顔に化粧を施し、よそ行きの顔を作り仕事に向かう。ホームセンターの従業員として働くようになって何年が経つだろう。18歳からだからもう10年以上になる。希望の大学に落ちて、大学に行くのをあきらめてよかった。ゲーム感覚で覚えた投資と節約することでためた貯金で余裕のある暮らしができている。自分で生活費を賄えていることは救いだろう。両親は何も言わない。

別に寂しい子供だったわけではない。両親は共働きで、教育熱心だった。そんな両親はどこにでもいる。一人の時間は自分と向き合う時間で別に嫌いじゃなかった。そんな両親は今は田舎ぐらしに興味があり、物件を探しているというメッセージがきた。

ソファーにもたれて、ノートパソコンを開ける。そうだ、今日は休日だった。休日に仕事が休みのなのが珍しいから忘れてた。今日は株式市場は休みだ。寝ぼけた頭を覚ますために、朝食用に濃い目のブラックコーヒーを淹れて、買っておいた生野菜サラダとパン1枚トースターにセットして出来上がるのを待つ。

出来上がったトーストに、マーガリンを塗って食べる。一人暮らしを始めてから朝食にパンを食べるようなった。おかずを準備する手間も省けるから便利だ。今日の夕飯は何にしよう…、適当なもので済ませようかな。

10分少々で朝食を済ませて、食べた食器の後始末。最近左手中指の先端に赤いプチっとした吹き出物ができた。これができると、手荒れのサイン。なんで素手で洗い物をしてしまったんだろうと、安直な自分に肩を落とす。また洗面所に行って念入りに手を洗い、寝起きに顔を洗って、マウスウオッシュは済ませたから歯ブラシをするのを躊躇ったけれど、ついでなので歯ブラシをする。歯並びは悪い方でもない。虫歯も治療済み。洗面所の鏡を見てため息。口の横に歯磨き粉がついていた。一旦止めた水を再び出して、念入りに口を洗い、フェイスタオルでま口元を拭く。このフェイスタオルは同僚に子供が産まれお祝いをあげたお返しでもらったフェイスタオル。わたしでは買わないブランドのもので拭き心地もまぁまぁだ。

リビングのキャビネットから手荒れ予防用のハンドクリームを取り出して両手に刷り込むように塗る。
そうだ、サンプルの化粧品が届いているんだ。今日の楽しみはこれだ。ハンドクリームをキャビネットにしまい、キャビネットの横続きにある二枚扉を開けてしまっておいた小さな段ボールを取り出す。3000円の商品を買って送られてきた後日発送のサンプル品。そしてリビングに化粧道具を準備。小さな段ボールを開けると、窪んだ真ん中のところに真っ赤な口紅が一つ。わたしには似合わな真っ赤な口紅。塗るのすら躊躇う。似合う人が羨ましい。

そんな口紅を見ながら、わたしは自分の性的な初体験を思い出した。
場所は呼ばれていった両親不在の友達の家。そこには友達と彼氏。付き合っていたことは有名だった。
その頃のわたしも今のわたしも醜かった。顔だけじゃないわたしの身体には痣があった。みぞおちのところと、太ももの内側に。病院で検査したところ、精神的な物からくる皮膚疾患だという。そんなわたしの醜さを知っていた人たち。誰もわたしに寄り付く人なんていなかった。どこもかしこも美しくないから。

そんなわたしの惨めさを知って友達が自分たちの性体験を見せてくれた。果たしてこれが異常なのか異常じゃないのかは今のわたしにもよくわからない。ただ欲情しきった二人は自室のベットで激しく求めあっていた。映像では見たことあったけれど、目の前で起きている惨状に身動きが取れないわたし。女友達のシャンプーの匂いと、様々な物が混ざった匂いが部屋に充満していた。

ことが終わるとシーツには赤いシミ。

「初めてだったの?」

と驚いたわたしに

「そんなわけないじゃん」

と一言。

その後、わたしはスカートをまくりその上にタオルをかけて、二人の前で自分の下半身に手を入れる。イケなかった。ただ濡れていただけだ。

これがわたしの高1の時の初体験。学校ではいつも一人で誰もわたしとは話したがらない。

あの頃と何も変わらない自分の顔。ただ少しだけ大人びたかもしれない。自分の唇にも塗れない真っ赤な口紅を自分の顔が映るか鏡に塗ったくる。時々、目覚める狂気。ハッと気づき我に返る。

この色のつかない鮮やかな記憶にわたしはのお腹の違和感が全身に広がり顔が歪むのがわかる。

ー終わりー この物語はフィクションです。
フィクションで小説を創作しています。


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