空席 (*ここに掲載されてある文章はすべて創作した物語、フィクション*)
公開 2025/04/16 11:34
最終更新 2025/11/03 13:08
彼女は醜かった。顔はむくんで肌は黒ずんでいて、、時より酸いた匂いが彼女からした。思春期の子供たちが集う空間に彼女の存在は異様だった。太ってはいるのだけれど、普通に太っているとは違う。異様な太り方をしていた。どうやら彼女は病気だったらしい。ホッとしたのはそのクラス委員をしていた、小絵という女の子と、溝口と呼ばれる男の子。そして二人を取り巻く数人のクラスメイト。

病気で入院したと聞いて見舞いに行くことになった。全員で行くわけにはいかないから、3人の代表を選ぶことになった。溝口は塾があるからという理由で回避したが、その事実は小絵を安心させた。余計なことを口走るし、面倒なことをクラスで騒ぎ立てられても困る。小絵と風山さんと木田さん女生徒3人。時間に都合をつけて集まり、担任の坂口先生が付き添いで行くことになった。

病院のベットに横になっている彼女はホッとした、穏やかな表情を浮かべていたのが小学生である3人の生徒にも理解できた。

「よかったですね。顔色もよくなって…」

担任の坂口先生がそういいかけた時、彼女のお母さんが

「先生、ちょっとお話があります」

と言い、病室の外に出ることを促されていた。坂口先生は

「ちょっと待っててくれるかしら、お母さんとお話があるから」

と優しい笑顔を浮かべた。内心小絵はドキッとした。クラスで彼女の陰口を言っていたことがバレていたのかもしれない。

「キナさん、どう?大丈夫?」

ショートカットで目の大きいかわいらしい女の子である風山さんが彼女に話しかけた。

「ごめんね。」

彼女は細い声でそういった。今まで聞いたこともない優しい声、窓の外を見ると、駐車場の桜の木からヒラリ、ヒラリと桜の花びらが落ちる。個室の病室はあったかくて、清潔な匂いがした。

病室に坂口先生とキナさんのお母さんが戻ってきた。坂口先生は優しい綺麗な手で小絵と風山さんと木田さん3人の頭をなでながら言った。

「キナさんね、まだ本調子ではないみたいなの。また、調子が良い時に来ましょう」

そういうと坂口先生はキナさんの髪を撫でた。

「キナさん、ゆっくり休んでね。」

言葉なく彼女はゆっくり頷いた。お見舞いに行ってから1週間後、彼女は息を引き取った。10歳。心臓の病気で様々な合併症を引き起こして、手術を受ける寸前で亡くなったてしまった。彼女が学校に通っていたのは自分の強い意思だった。

教室の机には彼女の死を忍ぶ菊の花が飾られていた。クラスメイトの誰かが置いたらしい。教室に入るなり、机に飾られたその花瓶を見て、坂口先生は何かを思い出したようにハッとした表情になった。次の瞬間、自分を取り戻し、教壇にたつと

「みなさんご存知のように…」

そういいながら彼女が心臓の病気の合併症で亡くなったことが伝えられた。

「なんて言っていいのか、正直わからないというのが本音です。病気だったということだけれど…」

坂口先生は言葉に詰まった。泣きそうになるのを我慢しながら机が並ぶ通路を歩き、彼女の机まで行き、花瓶をロッカーに移そうと手に持って移動した瞬間、先生は花瓶を手から滑らせて割ってしまった。幸い彼女は一番後ろの席だったので花瓶の破片や水、菊の花は机とロッカーの空いた教室のスペースに落ちて散らばった。数人の生徒がその惨状に手を差し伸べようとすると先生は

「触らないで、危ないから」

と生徒の死が伝えられた冷え切った教室により一層きりっとした先生の声が響いた。

「触らないでね」

と再び言うと、掃除用具入れから箒と塵取りを取り、片付けながら先生は木田さんに用務員を呼んでくるように言った。

花瓶は用務員さんによって片付けられたが菊の花は新聞紙に包まれてロッカーの上に置かれた。

「菊の花はあとで先生が始末します。用務員さんが綺麗に掃除してくれましたが、念のためにあの辺で遊ぶときは注意してくださいね。」

そういうと坂口先生は手を3回鳴らし

「さぁ、切り替えて、今日の授業を始めますよ。窓を開けてくれるかな」

窓を開けると優しい風が入ってきて小絵の髪を揺らした。


*終わり*この物語はフィクションです。
フィクションで小説を創作しています。


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