黒3(草木)と緑3(木賊) 涼しくなりはした
公開 2025/09/12 23:21
最終更新
2026/02/05 22:54
涼しくなりはした
今日は召喚主である来世が珍しく出掛けることになった。来世は王族かつ虚弱故、外に行く度に誰かが着いていってやらねばいけない。厳正なる選抜(ジャンケン)の結果、今回は私に白羽の矢が立った。こんな夏の真っ盛りに出る羽目になるとは、実についていない。
用事を済ませ、屋敷に戻って来たころには日も暮れてしまっていた。来世とは玄関で分かれ、アイスを求めて冷凍室へと向かう。この屋敷はかつて雪女である弟子が住んでいたため、巨大な冷凍倉庫ような部屋があるのだ。
黒3「こんな暑い日はアイスを食べるに限る!」
二重の扉を開け、声高らかに己の欲望を叫ぶ。もう召喚されなければ湧き上がることのない食欲に、大分浮かれていた。
いつも来世がお菓子を入れている冷凍庫を探し、辺りを見回すしていると、ふと可笑しな光景が目に入ってきた。本来ならば冷凍庫の装置に入っているべき食料が、床へ乱雑に置かれている。この屋敷には、こうやって食べ物が無駄になりかねないような愚行を放置する生者はいないはずだ。ならば、何か異変が起きていると考えるべきだろう。
警戒しつつ、冷凍品の近くに歩み寄る。特に魔法を使われた形跡はない。屋敷の住人以外は、結界魔法を使わなければ生身で此処に滞在出来ないはずだ。ならば、来世の魔力の流れに影響を受けない程の魔族か幽族の侵入か?
そうして、顎に手を当てながらあらゆる可能性を考える。地面に散らばった物に視線をやると、適当に置かれているように見えて、ある一つの冷凍庫から流れが出来ていることに気づく。しかも、その冷凍庫からは見知った奴の魔力が感知された。こりゃ、現在も中に入っているぞ。
なるほど、召喚された者ならば、屋敷で魔法を使わず無傷なまま奇行に走れる。納得した私は冷凍庫を勢い良く開けた。
黒3「やっぱり君か」
予想通りの妖怪が座り込んでいるのが視界に入り、思わず溜め息をついた。彼は己の弟子である木賊 柳。雪女という種族のため、氷点下の中とは思えないくらい穏やかな顔で寝ている。快適な夢の旅のところ悪いが、事情を聞くために叩き起こさせて貰う。
体を揺すりながら声をかけるが、顔をしかめて嫌そうな声を上げているだけだった。
黒3「⋯⋯我が弟子よ」
呼びかけを繰り返すと、木賊の目にある雪の結晶が見えてきた。だが、完全な覚醒には至っておらず、此方に焦点は合っていない。
暫くすると、夢見心地から抜け出せたのか、雪片が此方を見つめだした。そして、寝起きとは思えない大声が返ってくる。
緑3「どうした師匠!」
黒3「何で業務用冷凍庫の中で寝てるんだい?」
笑顔でストレートに疑問を弟子へぶつける。回答次第では、床の惨禍への糾弾をしなくはいけない。
答を待っていると、弟子は悲痛を浮かべた面持ちで喋りだした。
緑3「外出たら急激に体溶けちまったんだ。なんとか此処に来れたから助かったけども。今後2週間は外出れねえ」
黒3「随分と大変なことになってたんだね。じゃあ、この惨状はわざとじゃないのか」
私は後ろを指差し、木賊が放り出したであろう食料に思いを馳せる。流石に、生死がかかっている状態では慮る余裕もなかったのだろう。既に死んではいても、死に対する恐怖と焦りは消えないものだ。
木賊は己のしでかしたことに気がついたのか、ただでさえ血の気が通っていない顔が青ざめていく。
緑3「あっ、ヤベ。冷凍品は流石に戻せねえよな。どうしよ」
黒3「来世に事情を説明すれば、料理と食べる奴を用意してくれるさ」
緑3「あいつならしてくれそうだが、申し訳ねえな」
木賊は心苦しそうな顔で呟く。容易に私の来世が言った通りの対応をすると想像出来たからだろう。あいつは失敗をカバー出来る代案を用意すれば、大抵のことは許す。木賊は自身の不甲斐なさを他愛もなく許されるのが、納得出来ないのだろう。面倒くさい性格だ。
早速、来世のところに連れて行こうと木賊を手招きする。
黒3「とりあえず出ておいで。サイコホラーみたいになってるから」
緑3「師匠、オレまだ出れねえ」
黒3「仕方ないねぇ。魔法で固めてあげるよ」
木賊がバツが悪そうな顔で此方を見つめてくる。それを気にも留めずに、私は木賊を冷凍庫から引っ張り出した。雪女は魔力が体の主成分と成っているため、魔法の氷でも固まる。ならば、今魔法が使える草木が固めてしまったほうが早い。
それに、生前には弟子の短い間しか面倒をみてやれなかった。今世話を焼かずしてどうする。木賊の両手を掴み、彼が幼い頃によく唱えた呪文を口ずさむ。かつて、共に暮らした日々が思い出され、大変気分が良い。
とりあえず、来世に連絡を取りつつ、木賊と床に落ちてしまった物を拾おう。木賊の体が固まったことを確認し、早速行動に移そうと歩みを進めた。
今日は召喚主である来世が珍しく出掛けることになった。来世は王族かつ虚弱故、外に行く度に誰かが着いていってやらねばいけない。厳正なる選抜(ジャンケン)の結果、今回は私に白羽の矢が立った。こんな夏の真っ盛りに出る羽目になるとは、実についていない。
用事を済ませ、屋敷に戻って来たころには日も暮れてしまっていた。来世とは玄関で分かれ、アイスを求めて冷凍室へと向かう。この屋敷はかつて雪女である弟子が住んでいたため、巨大な冷凍倉庫ような部屋があるのだ。
黒3「こんな暑い日はアイスを食べるに限る!」
二重の扉を開け、声高らかに己の欲望を叫ぶ。もう召喚されなければ湧き上がることのない食欲に、大分浮かれていた。
いつも来世がお菓子を入れている冷凍庫を探し、辺りを見回すしていると、ふと可笑しな光景が目に入ってきた。本来ならば冷凍庫の装置に入っているべき食料が、床へ乱雑に置かれている。この屋敷には、こうやって食べ物が無駄になりかねないような愚行を放置する生者はいないはずだ。ならば、何か異変が起きていると考えるべきだろう。
警戒しつつ、冷凍品の近くに歩み寄る。特に魔法を使われた形跡はない。屋敷の住人以外は、結界魔法を使わなければ生身で此処に滞在出来ないはずだ。ならば、来世の魔力の流れに影響を受けない程の魔族か幽族の侵入か?
そうして、顎に手を当てながらあらゆる可能性を考える。地面に散らばった物に視線をやると、適当に置かれているように見えて、ある一つの冷凍庫から流れが出来ていることに気づく。しかも、その冷凍庫からは見知った奴の魔力が感知された。こりゃ、現在も中に入っているぞ。
なるほど、召喚された者ならば、屋敷で魔法を使わず無傷なまま奇行に走れる。納得した私は冷凍庫を勢い良く開けた。
黒3「やっぱり君か」
予想通りの妖怪が座り込んでいるのが視界に入り、思わず溜め息をついた。彼は己の弟子である木賊 柳。雪女という種族のため、氷点下の中とは思えないくらい穏やかな顔で寝ている。快適な夢の旅のところ悪いが、事情を聞くために叩き起こさせて貰う。
体を揺すりながら声をかけるが、顔をしかめて嫌そうな声を上げているだけだった。
黒3「⋯⋯我が弟子よ」
呼びかけを繰り返すと、木賊の目にある雪の結晶が見えてきた。だが、完全な覚醒には至っておらず、此方に焦点は合っていない。
暫くすると、夢見心地から抜け出せたのか、雪片が此方を見つめだした。そして、寝起きとは思えない大声が返ってくる。
緑3「どうした師匠!」
黒3「何で業務用冷凍庫の中で寝てるんだい?」
笑顔でストレートに疑問を弟子へぶつける。回答次第では、床の惨禍への糾弾をしなくはいけない。
答を待っていると、弟子は悲痛を浮かべた面持ちで喋りだした。
緑3「外出たら急激に体溶けちまったんだ。なんとか此処に来れたから助かったけども。今後2週間は外出れねえ」
黒3「随分と大変なことになってたんだね。じゃあ、この惨状はわざとじゃないのか」
私は後ろを指差し、木賊が放り出したであろう食料に思いを馳せる。流石に、生死がかかっている状態では慮る余裕もなかったのだろう。既に死んではいても、死に対する恐怖と焦りは消えないものだ。
木賊は己のしでかしたことに気がついたのか、ただでさえ血の気が通っていない顔が青ざめていく。
緑3「あっ、ヤベ。冷凍品は流石に戻せねえよな。どうしよ」
黒3「来世に事情を説明すれば、料理と食べる奴を用意してくれるさ」
緑3「あいつならしてくれそうだが、申し訳ねえな」
木賊は心苦しそうな顔で呟く。容易に私の来世が言った通りの対応をすると想像出来たからだろう。あいつは失敗をカバー出来る代案を用意すれば、大抵のことは許す。木賊は自身の不甲斐なさを他愛もなく許されるのが、納得出来ないのだろう。面倒くさい性格だ。
早速、来世のところに連れて行こうと木賊を手招きする。
黒3「とりあえず出ておいで。サイコホラーみたいになってるから」
緑3「師匠、オレまだ出れねえ」
黒3「仕方ないねぇ。魔法で固めてあげるよ」
木賊がバツが悪そうな顔で此方を見つめてくる。それを気にも留めずに、私は木賊を冷凍庫から引っ張り出した。雪女は魔力が体の主成分と成っているため、魔法の氷でも固まる。ならば、今魔法が使える草木が固めてしまったほうが早い。
それに、生前には弟子の短い間しか面倒をみてやれなかった。今世話を焼かずしてどうする。木賊の両手を掴み、彼が幼い頃によく唱えた呪文を口ずさむ。かつて、共に暮らした日々が思い出され、大変気分が良い。
とりあえず、来世に連絡を取りつつ、木賊と床に落ちてしまった物を拾おう。木賊の体が固まったことを確認し、早速行動に移そうと歩みを進めた。
