異(常世)界 第17話「勇気さえあれば」前編
公開 2025/05/22 00:06
最終更新
2025/05/28 22:20
🐾
勇者は森へと逃げ込んだ。地中での戦いはどうなったのだ……そうか、空間転移か。まあ生き埋めになってくたばった勇者など聞いたこともない。決着には舞台というものがある。
「クソッ、こうなったら――ぬわっ!?」
「させるかよ、タイムリープなんざ!」
ギインッ!! 勇者と盗賊王の剣が交差する。スピード値がカンストした盗賊王にひけをとらない……やはりチートしていたか、勇者。
ギインッ! ギインッ!! ギインッ!!!
ここは盗賊王に一任しよう。ステイルメイト確定だ。
「騙されるな! 甘言に身を委ねるな! 歪んだ理想に身を投じるな! カント読め! 自身をして己が主たらしめよ!!」
魔王が勇者軍に呼びかける。しかし戦場で啓蒙活動だと……? この中世の時代、まだカントに相当する人物が誕生しているはずはないのだが、頭に血が上っているらしい。
「悪は悪ゆえに悪。そして魔王! お前は巨悪!」
「「そうだそうだ!!」」
「“経験値”はワシのモンじゃあ~!」
「確定ドロップとレアドロップを同時にしやがれ!」
やはり魔王は頭がいい。それにひきかえこの勇者軍どもの下劣さときたら、教育腐敗の輝ける見本である。
ワルプルギスの夜が訪れる。魔王軍と勇者軍との戦いは熾烈を極めた。最新のゲーミングPCでも間違いなく処理落ちするだろう。
長引くな……というか、徹夜コースだな。ブラック残業に甘んじるなど断じてあってはならない。ひと眠りする。
「後衛の分際でダメージが半減しないだと……? その槍、さては“遠隔判定”だな!?」
「リミットブレイク! ……っておいおい、逃げるんじゃねーよ!? ターン経過で効果が切れちまうじゃねーか!?」
「卑怯な! リキャスト中を狙っての攻撃などと!」
「敵は多段火炎魔法で燃焼の付与を狙っている! 各自備えよ!」
「特効は通らぬ……か。しかし即死耐性にも気を配るべきだったな。その首もらったぁ!」
「ぬう、まだだ、まだ倒れるわけにはいかん。恐るべきは集約付きグループ攻撃か……」
「必中スキルを回避するやつがあるか!? おとなしく殉職せい!」
…………ようやるのぅ。睡眠用BGMとしては最低の部類だな、これは。
こちらの眠りを阻む一方で、戦っている当人たちは永眠未遂を繰り返す。
だが――美しい。基本的に個と個のぶつかり合い。各々の限界を受け入れ、全力を尽くしている。
匿名SNSでの腐れイデオロギー戦争の醜悪さを知っているからこその感性だが。
ここに干渉するのは無粋というもの。
仮眠を継続する。
勇者は森へと逃げ込んだ。地中での戦いはどうなったのだ……そうか、空間転移か。まあ生き埋めになってくたばった勇者など聞いたこともない。決着には舞台というものがある。
「クソッ、こうなったら――ぬわっ!?」
「させるかよ、タイムリープなんざ!」
ギインッ!! 勇者と盗賊王の剣が交差する。スピード値がカンストした盗賊王にひけをとらない……やはりチートしていたか、勇者。
ギインッ! ギインッ!! ギインッ!!!
ここは盗賊王に一任しよう。ステイルメイト確定だ。
「騙されるな! 甘言に身を委ねるな! 歪んだ理想に身を投じるな! カント読め! 自身をして己が主たらしめよ!!」
魔王が勇者軍に呼びかける。しかし戦場で啓蒙活動だと……? この中世の時代、まだカントに相当する人物が誕生しているはずはないのだが、頭に血が上っているらしい。
「悪は悪ゆえに悪。そして魔王! お前は巨悪!」
「「そうだそうだ!!」」
「“経験値”はワシのモンじゃあ~!」
「確定ドロップとレアドロップを同時にしやがれ!」
やはり魔王は頭がいい。それにひきかえこの勇者軍どもの下劣さときたら、教育腐敗の輝ける見本である。
ワルプルギスの夜が訪れる。魔王軍と勇者軍との戦いは熾烈を極めた。最新のゲーミングPCでも間違いなく処理落ちするだろう。
長引くな……というか、徹夜コースだな。ブラック残業に甘んじるなど断じてあってはならない。ひと眠りする。
「後衛の分際でダメージが半減しないだと……? その槍、さては“遠隔判定”だな!?」
「リミットブレイク! ……っておいおい、逃げるんじゃねーよ!? ターン経過で効果が切れちまうじゃねーか!?」
「卑怯な! リキャスト中を狙っての攻撃などと!」
「敵は多段火炎魔法で燃焼の付与を狙っている! 各自備えよ!」
「特効は通らぬ……か。しかし即死耐性にも気を配るべきだったな。その首もらったぁ!」
「ぬう、まだだ、まだ倒れるわけにはいかん。恐るべきは集約付きグループ攻撃か……」
「必中スキルを回避するやつがあるか!? おとなしく殉職せい!」
…………ようやるのぅ。睡眠用BGMとしては最低の部類だな、これは。
こちらの眠りを阻む一方で、戦っている当人たちは永眠未遂を繰り返す。
だが――美しい。基本的に個と個のぶつかり合い。各々の限界を受け入れ、全力を尽くしている。
匿名SNSでの腐れイデオロギー戦争の醜悪さを知っているからこその感性だが。
ここに干渉するのは無粋というもの。
仮眠を継続する。
