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公開 2025/12/22 00:00
最終更新
2025/12/22 00:00
🐾
「雪が溶けたら何になる? 純然たる理解に灯をともす者は挙手したまえ」
教師の問いに対し、すっ――とひとりの少年が手を挙げた。教師は彼の名を呼び、「よろしい、では君の回答に期待する」と告げた。
「潜熱の注入によって、雪から水へと属性が変化するのは自明の理です。しかし次に待ち受けているのは、水分子が熱を得て、液体の結合を振り切り空中へ飛び出すこと、つまり『蒸発』であります。続けて凝結核、昇華を経て、再び降雪へと到ります。
さて、凝縮や気化といった現象は、たしかに脱領土化と言えましょう。しかしそこには常に、再び雪へと回帰――再領土化する可能性が潜んでおり、捉え方によっては『液状の雪』、『気体状の雪』という、属性は変化しつつも本質は不変だと主張することも可能です。
よって質問に対する答えは、循環の始点たる雪はこの円環のなかにおいて、溶ける、つまり形状や属性が変化しようとも、本質的にはなお雪のままであると考えました」
「教室をして『カフェ・ド・フロール』へと変容せしめる驚異的な視点である!」
教師は回答した児童を賞賛しつつ、こう付け加えた。
「二年後の君にA評価(三段階の一番上)を与えておこう」
「雪が溶けたら何になる? 純然たる理解に灯をともす者は挙手したまえ」
教師の問いに対し、すっ――とひとりの少年が手を挙げた。教師は彼の名を呼び、「よろしい、では君の回答に期待する」と告げた。
「潜熱の注入によって、雪から水へと属性が変化するのは自明の理です。しかし次に待ち受けているのは、水分子が熱を得て、液体の結合を振り切り空中へ飛び出すこと、つまり『蒸発』であります。続けて凝結核、昇華を経て、再び降雪へと到ります。
さて、凝縮や気化といった現象は、たしかに脱領土化と言えましょう。しかしそこには常に、再び雪へと回帰――再領土化する可能性が潜んでおり、捉え方によっては『液状の雪』、『気体状の雪』という、属性は変化しつつも本質は不変だと主張することも可能です。
よって質問に対する答えは、循環の始点たる雪はこの円環のなかにおいて、溶ける、つまり形状や属性が変化しようとも、本質的にはなお雪のままであると考えました」
「教室をして『カフェ・ド・フロール』へと変容せしめる驚異的な視点である!」
教師は回答した児童を賞賛しつつ、こう付け加えた。
「二年後の君にA評価(三段階の一番上)を与えておこう」
