熱源思想
公開 2025/06/19 18:00
最終更新
2025/06/19 18:10
🐾
起床してすぐに、カーテンを開け放つ。そこには俺が望んだ世界が待ち受けていた。
「今日もカンカンに照りつけてやがる……!!」
陽光を半裸で受け止めた。皮膚にエネルギーが巡っていくのを感じる。紫外線は血液を巡回し始めただろうか? UVカットなど言語道断である。
「ウルトラ・ヴァイオレット!」
六月。早朝から早くも、気温が三十度へと向かっている。コーヒーカップを口に運ぶと、熱湯に溶けたスティックコーヒーが流れ込んできた。
いいぞ、俺はこの“熱”が欲しかったんだ。
白いノースリーブの上に白い長袖のシャツ。青地に白ドットのネクタイを手に取り、ウィンザーノットを結ぶ。ゆるくできた結び目に大剣を通して引っ張り、結び目を締めてディンプルの形を整えた。
あとはスリーピースのスーツだ。ウール100%がジャスティスを証明するぜ。
完全武装するうちにもじわじわと、室温とともに体温も上昇していく――――
「温暖化じゃあ!!」
「「うおおおおお!!」」
「温和たれ!!」
「「うおおおおお!!」」
社長、つまり俺の社訓に社員一同が呼応する。理想の職場だ。
俺たちは社会を構成する要素にとどまらない。それ自体が熱源になることを目指している。
“暖房”の効いた社長室でPCに向かう。AIを相手に『熱源思想』を熱く語った。
『正気ですか? ヒンバ族(裸族)の方がまだ文明的な生活を営んでいますよ?』と反論されたため、カウンターとして激辛ハバネロソースの画像をアップロードし、『こいつを一気飲みしろ!』と命じておいた。
昼食は社員食堂で『マグマ丼』をセレクト。『マグロ丼』が野性味に欠けていると思わせるほど、刺激的なフード。
「ぐあッ!?」
キャロライナ・リーパーの220万スコヴィルが目に染みた。涙がぶわっと手前に吹き出す。
全身に悪寒が走った。身体感覚に逆説がもたらされる。この不合理、いや不条理がたまらない。
午後。外回りをしている間に、気温は四十度へと向かっていく。
そうだ、上昇につぐ上昇だ……そう自分に言い聞かせ、ハーフマラソンに匹敵する距離を踏破した。
帰宅して靴を脱ぐ。ビジネスシューズの底には汗が滴っていた。これぞ生命の燃焼である。
熱いシャワーを浴びた。この心地よさは、“クールビズ”どもには味わえない。
夜。いやでも気温が下がっていく。そして否が応でも内省的になる。
俺は間違っているだろうか? 否。
俺は時代錯誤――熱い時代の1970年代的――だろうか? 否。
むしろ時代が再び燃え上っているのだ…………。
燃え盛る世界。俺は炎さえも資源として、自身に取り込む。『マグマ丼』を軽く平らげる俺にとって、極超音速ミサイルなど物の数ではない。
やがて俺は、歩いているだけでガソリンスタンドを炎上させる存在と化すだろう。シベリアにでも赴けば、さぞかし壮大な油田火災が見られるに違いない。
ニーチェの『超人思想』さえも超越した『熱源思想』に“適温”など存在しないのである。
明日に備えよう。俺はベッドに背を預けた。
自身が極大期を迎えるのを夢想しながら眠りに落ちていく。
人生は実に素晴らしいじゃないか?
起床してすぐに、カーテンを開け放つ。そこには俺が望んだ世界が待ち受けていた。
「今日もカンカンに照りつけてやがる……!!」
陽光を半裸で受け止めた。皮膚にエネルギーが巡っていくのを感じる。紫外線は血液を巡回し始めただろうか? UVカットなど言語道断である。
「ウルトラ・ヴァイオレット!」
六月。早朝から早くも、気温が三十度へと向かっている。コーヒーカップを口に運ぶと、熱湯に溶けたスティックコーヒーが流れ込んできた。
いいぞ、俺はこの“熱”が欲しかったんだ。
白いノースリーブの上に白い長袖のシャツ。青地に白ドットのネクタイを手に取り、ウィンザーノットを結ぶ。ゆるくできた結び目に大剣を通して引っ張り、結び目を締めてディンプルの形を整えた。
あとはスリーピースのスーツだ。ウール100%がジャスティスを証明するぜ。
完全武装するうちにもじわじわと、室温とともに体温も上昇していく――――
「温暖化じゃあ!!」
「「うおおおおお!!」」
「温和たれ!!」
「「うおおおおお!!」」
社長、つまり俺の社訓に社員一同が呼応する。理想の職場だ。
俺たちは社会を構成する要素にとどまらない。それ自体が熱源になることを目指している。
“暖房”の効いた社長室でPCに向かう。AIを相手に『熱源思想』を熱く語った。
『正気ですか? ヒンバ族(裸族)の方がまだ文明的な生活を営んでいますよ?』と反論されたため、カウンターとして激辛ハバネロソースの画像をアップロードし、『こいつを一気飲みしろ!』と命じておいた。
昼食は社員食堂で『マグマ丼』をセレクト。『マグロ丼』が野性味に欠けていると思わせるほど、刺激的なフード。
「ぐあッ!?」
キャロライナ・リーパーの220万スコヴィルが目に染みた。涙がぶわっと手前に吹き出す。
全身に悪寒が走った。身体感覚に逆説がもたらされる。この不合理、いや不条理がたまらない。
午後。外回りをしている間に、気温は四十度へと向かっていく。
そうだ、上昇につぐ上昇だ……そう自分に言い聞かせ、ハーフマラソンに匹敵する距離を踏破した。
帰宅して靴を脱ぐ。ビジネスシューズの底には汗が滴っていた。これぞ生命の燃焼である。
熱いシャワーを浴びた。この心地よさは、“クールビズ”どもには味わえない。
夜。いやでも気温が下がっていく。そして否が応でも内省的になる。
俺は間違っているだろうか? 否。
俺は時代錯誤――熱い時代の1970年代的――だろうか? 否。
むしろ時代が再び燃え上っているのだ…………。
燃え盛る世界。俺は炎さえも資源として、自身に取り込む。『マグマ丼』を軽く平らげる俺にとって、極超音速ミサイルなど物の数ではない。
やがて俺は、歩いているだけでガソリンスタンドを炎上させる存在と化すだろう。シベリアにでも赴けば、さぞかし壮大な油田火災が見られるに違いない。
ニーチェの『超人思想』さえも超越した『熱源思想』に“適温”など存在しないのである。
明日に備えよう。俺はベッドに背を預けた。
自身が極大期を迎えるのを夢想しながら眠りに落ちていく。
人生は実に素晴らしいじゃないか?
