異(常世)界 第18話「勇気さえあれば」後編
公開 2025/05/22 00:06
最終更新
2025/05/22 00:07
🐾
……うーむ、大地にじかに寝るのはやめておくべきだな。ダンボール・ハウスが恋しくなる……。
「カタぁついたぞ、デスモン殿!」
「おはよう、魔王殿」
立ち上がり、あらゆるものを視界に入れる。たしかに終戦していた。阿鼻叫喚の段階はとうに飛び越えていたらしい。
即死耐性Sで実質的に無効だからといって自爆魔法を使い、中規模のクレーターを創設した大馬鹿者。なお、即死した模様。
炎属性には氷属性だと奥義の応酬を繰り返した結果、時空を歪めたたわけ者。
生き残るにはラック=運の要素が重要なのだと思い知らされる。
開戦前に魔王、ならびに幹部と約束していた。すなわち、勇者以外の転生者はそのまま葬り去ってもいい。元の世界に還っていくだけだ。そしてこの世界での記憶は細分化され、夢となって再生されるだろう。
本来この世界にいた人間、獣人らは、戦死したとしても戦後、順次よみがえらせる。当然だ、どこぞの棄民国家とは違うのだ。
魔王の案内で、大木に縛り付けられた勇者のもとへ行く。どれだけダメージを与えられても、HPが16は残るようにしておいたのが功を奏したようだ。
「悪魔…………」
なかなかの形容であり、間違ってはいない。しかし、恨まれようが蔑まれようが、それがどうした。消沈している勇者に声をかける。
「終わりじゃない、始まりだゾ? これまでに救えなかった――あるいは見捨ててきた――すべての並行世界に対し、責任を取ってもらう」
「マジかー……いや、でも……いつかそんな日が来るだろうと思ってたんだ…………」
「まず冗談みたいな能力値も手に入れただろう? そして魔王とその側近たちは転生者であり、意図的に文明を停滞させている……21世紀をキャンセル、あるいはスキップするために。この情報が揃えば、思うほど困難なことではあるまいよ」
「21世紀か……しかし……」
「もう通過点ですらなくなるぞ? 18世紀から一足飛びに22世紀がやって来る。または、争いごとなどほぼなかったであろう原始社会が半永続する。全世界の理が変化することを念頭に置いて動け」
「デスモン殿」
魔王がヒロインを連れてきた。ちなみに、『しばらくは黙っていることだけがあんたの仕事だ』と警告されていたらしい。
しばし勇者とヒロインを抱擁させておく。
「……………………」
なんつーか、こちとら孤独すぎんかのぅ……?
「やるしかないのでやる」
勇者は立ち上がってそう言った。精神的にも立ち直ったようだ。
「その勇気さえあれば、お前さんは勇者だよ」
「そういうアンタは、結局のところ何者なんだ……?」
「勇者を半殺しにしちまうような腐れ外道ってなところだナ……さて、魔王殿?」
「むむっ」
「お別れの時間だ。コール、存立平面」
少しずつセカイが展開されていく。勇者とヒロインを導かねばならない。
「急に現れて急に去っていくとは……」
魔王との別れの言葉は、どんなものがふさわしいだろう。ふむ。
「悪いね、“私は簡単を旨とする”のでね。さらば魔王殿、“実践理性”を超克せよ!」
カントからの引用に気付いたのか、魔王は拳を突き上げ、雄叫びを上げた――――
……うーむ、大地にじかに寝るのはやめておくべきだな。ダンボール・ハウスが恋しくなる……。
「カタぁついたぞ、デスモン殿!」
「おはよう、魔王殿」
立ち上がり、あらゆるものを視界に入れる。たしかに終戦していた。阿鼻叫喚の段階はとうに飛び越えていたらしい。
即死耐性Sで実質的に無効だからといって自爆魔法を使い、中規模のクレーターを創設した大馬鹿者。なお、即死した模様。
炎属性には氷属性だと奥義の応酬を繰り返した結果、時空を歪めたたわけ者。
生き残るにはラック=運の要素が重要なのだと思い知らされる。
開戦前に魔王、ならびに幹部と約束していた。すなわち、勇者以外の転生者はそのまま葬り去ってもいい。元の世界に還っていくだけだ。そしてこの世界での記憶は細分化され、夢となって再生されるだろう。
本来この世界にいた人間、獣人らは、戦死したとしても戦後、順次よみがえらせる。当然だ、どこぞの棄民国家とは違うのだ。
魔王の案内で、大木に縛り付けられた勇者のもとへ行く。どれだけダメージを与えられても、HPが16は残るようにしておいたのが功を奏したようだ。
「悪魔…………」
なかなかの形容であり、間違ってはいない。しかし、恨まれようが蔑まれようが、それがどうした。消沈している勇者に声をかける。
「終わりじゃない、始まりだゾ? これまでに救えなかった――あるいは見捨ててきた――すべての並行世界に対し、責任を取ってもらう」
「マジかー……いや、でも……いつかそんな日が来るだろうと思ってたんだ…………」
「まず冗談みたいな能力値も手に入れただろう? そして魔王とその側近たちは転生者であり、意図的に文明を停滞させている……21世紀をキャンセル、あるいはスキップするために。この情報が揃えば、思うほど困難なことではあるまいよ」
「21世紀か……しかし……」
「もう通過点ですらなくなるぞ? 18世紀から一足飛びに22世紀がやって来る。または、争いごとなどほぼなかったであろう原始社会が半永続する。全世界の理が変化することを念頭に置いて動け」
「デスモン殿」
魔王がヒロインを連れてきた。ちなみに、『しばらくは黙っていることだけがあんたの仕事だ』と警告されていたらしい。
しばし勇者とヒロインを抱擁させておく。
「……………………」
なんつーか、こちとら孤独すぎんかのぅ……?
「やるしかないのでやる」
勇者は立ち上がってそう言った。精神的にも立ち直ったようだ。
「その勇気さえあれば、お前さんは勇者だよ」
「そういうアンタは、結局のところ何者なんだ……?」
「勇者を半殺しにしちまうような腐れ外道ってなところだナ……さて、魔王殿?」
「むむっ」
「お別れの時間だ。コール、存立平面」
少しずつセカイが展開されていく。勇者とヒロインを導かねばならない。
「急に現れて急に去っていくとは……」
魔王との別れの言葉は、どんなものがふさわしいだろう。ふむ。
「悪いね、“私は簡単を旨とする”のでね。さらば魔王殿、“実践理性”を超克せよ!」
カントからの引用に気付いたのか、魔王は拳を突き上げ、雄叫びを上げた――――
