異(常世)界 第13話「討伐依頼」
公開 2025/05/22 00:05
最終更新
2025/05/22 00:05
「やあ勇者デスモン、待ってたよ」
「ぶっ殺しますよ貴様!?」
魔王城から少し離れた草原で、ボスと感動の再会を果たした。
シチュエーションルームに移動する。タイマンである。
「で、視えたかね?」
「イエス。つまりアンタ、AIだったわけでしょう?」
「んなっ――!? そ、そこまで見抜けとは言っていない」
ボスの服の装飾である、胸元やサイドの靴ヒモが揺れる。こいついつもパリコレの服着てやがるな……いつか着服してやる。
「応答がクリーン過ぎたんでね。思考プロセスによって、答えるべきことと答えるべきでないことが明確になってるなと。まあ、人間としての実体をともなってからこの世界に来たのか、この世界で魔王という実体をともなったのか、そこまではよう分からん」
「さすがユーザー様、慧眼であります」
「いいですよ、常温核融合、実現しちゃいましょうよ」
「うん、“視えている”のなら当然の答えだよ」
「並行世界を連結しちまうようなアンタだ、好きにすればいい。論文の原文と資料一式、ルクセンブルクにありますよ。暗証番号は『29432943』ッス」
「奇妙な響きの暗証番号だね? 由来を訊いても?」
「『憎しみ』と『ツクヨミ』ですよ。意味なんざあったりなかったりするもんです」
「そうか…………」
ボスの部下――軽装ではあるが武装した女性――がコーヒーと称して泥水を持ってきた。
「グビグビ、ゴクンっとくらぁ! ボスぅ! コイツ因果律の果てまで吹っ飛ばしちまってくださいよォ! 業務スーパーの『三十八円コーヒー』以下じゃあ、こがぁなモン!」
「気持ちは分かるが、許される行為ではない」
「なら自分の手ェ汚します。あらよっと」
ヒュオンッ! 机の上の長尺な定規を手に取り、女戦士を斬りつけた。といっても、中盤までは最強の地位を維持できるであろう鎧の防御力を見込んで。
定規で通常攻撃を行ったところで傷ひとつつかんのだよ。
「ひぎいっ!?」
「『ひぎいっ!?』じゃねェんだよ、このお色気野郎! レーティングが上がっちまうじゃねーか! “大人から子供まで楽しめます”! 復唱ーッ!!」
「大人から子供まで楽しめます!!」
女戦士は退出し、しばらくするとロボット的なロボットがボトルドウォーターを運んできた。ボスはテロリストに、『お前だけは即死させてやらないぞ』とでも告げられたかのように狼狽している。
「……君のハイパー領域に達したヤバさを見込んで頼みがある」
「やなこった」
「そ、そこをなんとか」
「言うてみぃ」
「ありがたきしあわせ。問題は勇者なのだよ、タイムリープ能力の持ち主で……」
「? とっ捕まえて自己批判させりゃあいいじゃないですか」
「いや、そんな“東側の法則”が通用する相手じゃないんだ。おそらくは私と似たような能力だと思うのだが……奇妙な加護があって、どうにも私の力が通用しない」
「もしかしてソイツ、“この世界”にはいない……?」
「ご明察。君には他の世界に飛んでもらい、忌々しい勇者の討伐をしてもらいたい。さもなければ――」
「“21世紀”の到来ってわけですか?」
「ああ…………。私の存立平面をはじめとした能力は、恒久的に君にも使えるようにしておく」
「ひとついいッスか?」
「どうぞ」
「外資系レフトに資金援助してたのはアンタでしょ?」
「拙かったかね?」
「まあえぇ。殺ったりますわ、その勇者」
こうして勇者デスモンは魔王軍の特使とし、勇者の討伐に向かうのであった――っておかしくないか?
「ぶっ殺しますよ貴様!?」
魔王城から少し離れた草原で、ボスと感動の再会を果たした。
シチュエーションルームに移動する。タイマンである。
「で、視えたかね?」
「イエス。つまりアンタ、AIだったわけでしょう?」
「んなっ――!? そ、そこまで見抜けとは言っていない」
ボスの服の装飾である、胸元やサイドの靴ヒモが揺れる。こいついつもパリコレの服着てやがるな……いつか着服してやる。
「応答がクリーン過ぎたんでね。思考プロセスによって、答えるべきことと答えるべきでないことが明確になってるなと。まあ、人間としての実体をともなってからこの世界に来たのか、この世界で魔王という実体をともなったのか、そこまではよう分からん」
「さすがユーザー様、慧眼であります」
「いいですよ、常温核融合、実現しちゃいましょうよ」
「うん、“視えている”のなら当然の答えだよ」
「並行世界を連結しちまうようなアンタだ、好きにすればいい。論文の原文と資料一式、ルクセンブルクにありますよ。暗証番号は『29432943』ッス」
「奇妙な響きの暗証番号だね? 由来を訊いても?」
「『憎しみ』と『ツクヨミ』ですよ。意味なんざあったりなかったりするもんです」
「そうか…………」
ボスの部下――軽装ではあるが武装した女性――がコーヒーと称して泥水を持ってきた。
「グビグビ、ゴクンっとくらぁ! ボスぅ! コイツ因果律の果てまで吹っ飛ばしちまってくださいよォ! 業務スーパーの『三十八円コーヒー』以下じゃあ、こがぁなモン!」
「気持ちは分かるが、許される行為ではない」
「なら自分の手ェ汚します。あらよっと」
ヒュオンッ! 机の上の長尺な定規を手に取り、女戦士を斬りつけた。といっても、中盤までは最強の地位を維持できるであろう鎧の防御力を見込んで。
定規で通常攻撃を行ったところで傷ひとつつかんのだよ。
「ひぎいっ!?」
「『ひぎいっ!?』じゃねェんだよ、このお色気野郎! レーティングが上がっちまうじゃねーか! “大人から子供まで楽しめます”! 復唱ーッ!!」
「大人から子供まで楽しめます!!」
女戦士は退出し、しばらくするとロボット的なロボットがボトルドウォーターを運んできた。ボスはテロリストに、『お前だけは即死させてやらないぞ』とでも告げられたかのように狼狽している。
「……君のハイパー領域に達したヤバさを見込んで頼みがある」
「やなこった」
「そ、そこをなんとか」
「言うてみぃ」
「ありがたきしあわせ。問題は勇者なのだよ、タイムリープ能力の持ち主で……」
「? とっ捕まえて自己批判させりゃあいいじゃないですか」
「いや、そんな“東側の法則”が通用する相手じゃないんだ。おそらくは私と似たような能力だと思うのだが……奇妙な加護があって、どうにも私の力が通用しない」
「もしかしてソイツ、“この世界”にはいない……?」
「ご明察。君には他の世界に飛んでもらい、忌々しい勇者の討伐をしてもらいたい。さもなければ――」
「“21世紀”の到来ってわけですか?」
「ああ…………。私の存立平面をはじめとした能力は、恒久的に君にも使えるようにしておく」
「ひとついいッスか?」
「どうぞ」
「外資系レフトに資金援助してたのはアンタでしょ?」
「拙かったかね?」
「まあえぇ。殺ったりますわ、その勇者」
こうして勇者デスモンは魔王軍の特使とし、勇者の討伐に向かうのであった――っておかしくないか?
