ニッケル㉕
公開 2025/05/06 00:02
最終更新
2025/05/06 00:02
🐾
月曜日。梅と鮭をブレンドしたお茶漬けを朝食とし、それを飲み干してから大学へ向かった。
午前中は必修がふたつ。授業中にスマホで住吉温泉の近くに宿泊施設はないかと調べる。あった。『ななみ旅館』、いい名前だ。
しかし『直前不可』の文字が立ちふさがる。そしてGWが終わるまでは満室が続くらしい。知らない土地でいきなり野宿というのもな……。
すがるように空室チェックの画面をリロードしていたら、おそろしく都合よく、海側の和室に空きが表示された。やるな、事務三本。俺のスマホから発せられるメッセージを読み取ることなど容易いということだ。
すぐさま予約フォームにジャンプし、必要事項に記入を済ませる。今夜の宿泊予約をとることに成功。
早めに現地入りしておきたいとも思ったが、昨夜のうちに新潟市内のホテルに泊まっておくというのは、いかにも強行スケジュールなため却下したのだ。
正午。駅前の店でドーナツを買ってから一度アパートに戻り、冷蔵庫から牛乳パックを取り出してコップに注ぎ、慌ただしく昼食を済ませる。
なにやら任務遂行中のスパイのような食生活だが、気にしないことにした。
午後、夕方。新潟~両津のジェットフォイルに乗船し、佐渡島に上陸。すぐさまバスに乗りななみ旅館を目指す。
さすがにチェックインの時間に問題があるのではと思ったが、旅館の方々は温かく出迎えてくれた。
「三十分後にお食事の準備が整いますよ。お部屋へお持ちしますので」
「ありがとうございます」
事務三本はどこまで便宜を図ってくれていたのだろう? いや、ここは極論を採用するべきだ。つまりこの佐渡島のなかに事務三本がいる。
だが邂逅の場はここではない。旅館のなかで外国人の姿を探したりもしない。
俺は部屋に荷物を置き、ジャケットを脱いで待機することにした。せっかくここまで来たのだから、せめて料理くらいは楽しもう。
海鮮茶碗蒸し、こいつは絶品だった。魚介類そのものの味もいいが、それが染み渡ったスープが実に美味い。
山菜とカニの天ぷらもよかった。かりっと噛むとすぐさま口の中でしゅわーと柔らかく膨らみ、それでいて一瞬で溶けていく。
佐渡島のコシヒカリは、ふだん俺が食べている正体不明の米とは次元が違った。白米とはよくいったもので、きらきらと輝いている。よく噛んで旨味を堪能してから、味噌汁と一緒に飲み込んだ。
俺はこの旅の目的を忘れ、夕食に酔いしれていた。だがこれでいい。苦しむための旅行など、そうそう存在しない。
時間は瞬く間に過ぎていく――――
月曜日。梅と鮭をブレンドしたお茶漬けを朝食とし、それを飲み干してから大学へ向かった。
午前中は必修がふたつ。授業中にスマホで住吉温泉の近くに宿泊施設はないかと調べる。あった。『ななみ旅館』、いい名前だ。
しかし『直前不可』の文字が立ちふさがる。そしてGWが終わるまでは満室が続くらしい。知らない土地でいきなり野宿というのもな……。
すがるように空室チェックの画面をリロードしていたら、おそろしく都合よく、海側の和室に空きが表示された。やるな、事務三本。俺のスマホから発せられるメッセージを読み取ることなど容易いということだ。
すぐさま予約フォームにジャンプし、必要事項に記入を済ませる。今夜の宿泊予約をとることに成功。
早めに現地入りしておきたいとも思ったが、昨夜のうちに新潟市内のホテルに泊まっておくというのは、いかにも強行スケジュールなため却下したのだ。
正午。駅前の店でドーナツを買ってから一度アパートに戻り、冷蔵庫から牛乳パックを取り出してコップに注ぎ、慌ただしく昼食を済ませる。
なにやら任務遂行中のスパイのような食生活だが、気にしないことにした。
午後、夕方。新潟~両津のジェットフォイルに乗船し、佐渡島に上陸。すぐさまバスに乗りななみ旅館を目指す。
さすがにチェックインの時間に問題があるのではと思ったが、旅館の方々は温かく出迎えてくれた。
「三十分後にお食事の準備が整いますよ。お部屋へお持ちしますので」
「ありがとうございます」
事務三本はどこまで便宜を図ってくれていたのだろう? いや、ここは極論を採用するべきだ。つまりこの佐渡島のなかに事務三本がいる。
だが邂逅の場はここではない。旅館のなかで外国人の姿を探したりもしない。
俺は部屋に荷物を置き、ジャケットを脱いで待機することにした。せっかくここまで来たのだから、せめて料理くらいは楽しもう。
海鮮茶碗蒸し、こいつは絶品だった。魚介類そのものの味もいいが、それが染み渡ったスープが実に美味い。
山菜とカニの天ぷらもよかった。かりっと噛むとすぐさま口の中でしゅわーと柔らかく膨らみ、それでいて一瞬で溶けていく。
佐渡島のコシヒカリは、ふだん俺が食べている正体不明の米とは次元が違った。白米とはよくいったもので、きらきらと輝いている。よく噛んで旨味を堪能してから、味噌汁と一緒に飲み込んだ。
俺はこの旅の目的を忘れ、夕食に酔いしれていた。だがこれでいい。苦しむための旅行など、そうそう存在しない。
時間は瞬く間に過ぎていく――――
