ゆめのまにまに
公開 2023/08/07 08:24
最終更新
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💎商2部以降秘書時空未満 エトラ左右なし
暑すぎず、寒すぎず。
ちょうど良い季節の午睡は、心地良い。
もう少ししたら洗濯物を取り込むのだ。
それまで、ほんの少しだけ。
窓を開け、入ってくる風でふわりとたなびく白を横目に、ごろりと横になるソファーの何と気持ち良いことか。
こちらが昼寝の態勢を取ったことに気付いたのか、可愛い二匹の家族の気配もすぐそばだ。
——ああ、ここにもう一人いたならなあ。
足りないと感じるのは、きっと贅沢だ。
いつも一緒にいられるわけではないのだから。
たまの視察の、貴重な時間。
当然、こんな午睡に誘うことなどできるわけもない。
それでも。
——ここに、あいつもいてくれたらなあ。
きっと、とても気持ちがいいだろうに。
うとうとと、瞼を閉じてどのくらいが経ったのか。
体感としては寝過ごすほどは経っていない気がするのだが、昼寝と決め込んで横になる前と、空気の匂いが違う。
時折風に乗って届く、庭の花の香りではない。
すっきりとしているのに少しだけ甘い、優しい香り。
そうして、本当に微かに聞こえる、どこか懐かしい歌。
「り、ちゃ……ど……?」
いつ帰ってきたんだ。
今日は来る予定じゃなかったのに。
来ると知っていたら、もっとちゃんと。
思うことは色々とあるのに、半分以上眠りに沈んだままの頭では、うまく思考がまとまらない。
開かない目のままなんとか腕を持ち上げれば、小さく聞こえていた歌に微かに笑いの気配が混じったようだ。
そうして、とん、とん、と。
ゆっくり手が腹の上を優しく叩く感触。
『————』
耳に届いた気がしたのは、ここにいればいいのにと思った彼の声によく似ていて。
「ワン!」
「ワンワン!」
「はっっ!?」
愛犬たちが大きく鳴く声に驚いて跳ね起きれば、外は真っ黒な色に塗りつぶされていた。
見れば、ポツポツと雨が地面に点を描き出している。
「うわー! ジロー、サブロー、助かった!! 洗濯物!!」
慌てて庭に駆け出して、乾き切った洗濯物たちがびしょ濡れにならないように救出に向かう。ようやく全部取り込んで、ほっと一息吐いた部屋の中は、昼寝の前と変わらない。
変わらない、はずなのだけれど。
「なあ、ジロー。サブロー。お前たち、もう一人のご主人見なかったか?」
頭に乗った雫を払いながら二匹に聞いても、クゥン? と首を傾げるばかり。
そうだよなあ、とは思うのだけども。
「……まあ、そうだよなあ」
ふわりと鼻先を掠めた気がする香りに思わず笑ってしまいながら、次の視察の予定を指折り数えてしまったりするのだ。
『ゆめのまにまに』
2022/5/11 Twitter投稿:再掲
暑すぎず、寒すぎず。
ちょうど良い季節の午睡は、心地良い。
もう少ししたら洗濯物を取り込むのだ。
それまで、ほんの少しだけ。
窓を開け、入ってくる風でふわりとたなびく白を横目に、ごろりと横になるソファーの何と気持ち良いことか。
こちらが昼寝の態勢を取ったことに気付いたのか、可愛い二匹の家族の気配もすぐそばだ。
——ああ、ここにもう一人いたならなあ。
足りないと感じるのは、きっと贅沢だ。
いつも一緒にいられるわけではないのだから。
たまの視察の、貴重な時間。
当然、こんな午睡に誘うことなどできるわけもない。
それでも。
——ここに、あいつもいてくれたらなあ。
きっと、とても気持ちがいいだろうに。
うとうとと、瞼を閉じてどのくらいが経ったのか。
体感としては寝過ごすほどは経っていない気がするのだが、昼寝と決め込んで横になる前と、空気の匂いが違う。
時折風に乗って届く、庭の花の香りではない。
すっきりとしているのに少しだけ甘い、優しい香り。
そうして、本当に微かに聞こえる、どこか懐かしい歌。
「り、ちゃ……ど……?」
いつ帰ってきたんだ。
今日は来る予定じゃなかったのに。
来ると知っていたら、もっとちゃんと。
思うことは色々とあるのに、半分以上眠りに沈んだままの頭では、うまく思考がまとまらない。
開かない目のままなんとか腕を持ち上げれば、小さく聞こえていた歌に微かに笑いの気配が混じったようだ。
そうして、とん、とん、と。
ゆっくり手が腹の上を優しく叩く感触。
『————』
耳に届いた気がしたのは、ここにいればいいのにと思った彼の声によく似ていて。
「ワン!」
「ワンワン!」
「はっっ!?」
愛犬たちが大きく鳴く声に驚いて跳ね起きれば、外は真っ黒な色に塗りつぶされていた。
見れば、ポツポツと雨が地面に点を描き出している。
「うわー! ジロー、サブロー、助かった!! 洗濯物!!」
慌てて庭に駆け出して、乾き切った洗濯物たちがびしょ濡れにならないように救出に向かう。ようやく全部取り込んで、ほっと一息吐いた部屋の中は、昼寝の前と変わらない。
変わらない、はずなのだけれど。
「なあ、ジロー。サブロー。お前たち、もう一人のご主人見なかったか?」
頭に乗った雫を払いながら二匹に聞いても、クゥン? と首を傾げるばかり。
そうだよなあ、とは思うのだけども。
「……まあ、そうだよなあ」
ふわりと鼻先を掠めた気がする香りに思わず笑ってしまいながら、次の視察の予定を指折り数えてしまったりするのだ。
『ゆめのまにまに』
2022/5/11 Twitter投稿:再掲
