年始のご挨拶・『はじまりの朝に』
公開 2025/01/01 18:21
最終更新
2025/01/01 18:41
新しい年が明けましたね。
元旦の朝はよく晴れて、きっと初日の出を見に行った方はよく見えたのではないでしょうか。
私も、自宅の雨戸を開けて一番に、山入端から上る太陽を見ていました。
昨年まで、たくさんのことがありました。
きっと、今年も色々なことがある年になると思います。
今年こそ、私は私のために私自身を大切にしようと決めています。
どうぞ、皆様にとってもこの年が穏やかで素敵なものになりますように。
さて、何か書き初めをしようかとも思ったのですが、正月初めの今日としては以前に書いた話があまりに出来がいいので再放送をさせて頂きます。
💎商、3部時空のエトラとみのるくんの話です。
相変わらずインコは読んでいませんが、こんな雰囲気でいてくれたらいいなと思います。
今年も私のペースで彼らを見守っていきますので、よろしければお付き合いください。
まだ夜の、真っ暗なうちにそっと身体を揺すり起こされた。
さあ、行こう。眠気まなこを擦りながらやっと目を開けたみのるにそう言って笑ったのは、昨年初めて会ったはずの半分だけ血が繋がっているという兄だ。
どこに行くのかと聞くみのるに、着いてからのお楽しみだと言って美しい髪を揺らして頷いてくれたのはその兄の大切な人で、自分にとっての先生のようでもあり、先輩のようでもあり、友人のようでもあり、もう一人の兄のような人。
とにかくあったかい格好で、と二人に口々に言われ、もそもそと着替えて冬になって買ってもらったあたたかい上着と、クリスマスのプレゼントにもらった彼らと三人で色違いのマフラーを身に着けて。
車に乗り込むまではきちんと起きていたはずなのに、後部座席に座って運転席と助手席に座った二人の話す柔らかい声を聞いているうちに、どうやらまたうとうととしてしまったらしい。
「みのるくん、着いたよ」
「さあ、寒いですから。気を付けて」
二人に声をかけられる頃には、みのるはすっかり見覚えのない場所まで移動してきていた。
降り立った場所はどうやら広く水平線が見える、海岸線のようだ。
時刻は夜中から明け方に変わる頃合いで、静かでピンと張った空気が紺とも紫とも、青ともピンクとも言えない色合いの空と海に広がっていた。
昨夜、もう去年になってしまった大晦日の夜、ささやかな年越しを三人と二匹でお祝いして、やれ食べろもっと食べろと勧められるがまま、これでもかというくらいいいお肉のすき焼きをたらふく食べて、取り留めなくいろいろな話をしている最中に初日の出を見たことがあるか、という話題が出た気がする。見たことはないと、みのるは答えていた。それに対して、そっかあ、と新しくできた年の離れた兄は頷いていたけれど、特にだからどうしようとは言っていなかったはずなのに。
「正義さん、リチャードさん」
「うん?」
「いかがしましたか、みのるさま」
じわりと東の水平線の向こうが、明るくなってくる。
金色の線が、空と海の間にまっすぐ引かれて。
新しい年が生まれる場所に、みのるを連れてきてくれた兄たちが両側から笑う。
何かを言おうとして、けれどそれが言葉になる前に金色の境界から新春の曙光が頭を出し始めた。
他にも海岸線に集まっていた人たちから、静かな歓声が上がる。
――ああ。
自分でも知らないうちに、ぎゅっと胸の前で祈るように手を組んでいたようだ。声も出せずに空と海が染まっていく光景を見守るみのるを、どう思ったのか。
今年初めての朝日にほんのり顔の輪郭を光らせた両側の二人は、お互いの顔を見合わせてから、同時にふっと同じ色の空気を吐き出して。
両側から、片腕ずつ。
みのるの背で腕を交差させるように、そのがっしりした大人の身体でみのるを挟み込むように腕を回して。
「「明けましておめでとうございます」」
初日の光の中に、みのるを連れ出してくれた。
ああ、お母さん。お母さんも、見ているだろうか。ちゃんと。この、年が明けていく瞬間を。全てを静かに包んでいくこの光を。
ぐっと胸の中が熱くなって、より一層握りしめたみのるの手に力が入る。意識をして呼吸をしないと、何かが目から口から全身から零れ出ていってしまいそうだった。
そうして白く震える息をゆっくり吐き出して。
ほんの少し、光が沁みて滲む視界を瞬きで洗いながらみのるは思う。
この美しくて澄んだ光景を、きっと忘れはしない、と。
【はじまりの朝に】
元旦の朝はよく晴れて、きっと初日の出を見に行った方はよく見えたのではないでしょうか。
私も、自宅の雨戸を開けて一番に、山入端から上る太陽を見ていました。
昨年まで、たくさんのことがありました。
きっと、今年も色々なことがある年になると思います。
今年こそ、私は私のために私自身を大切にしようと決めています。
どうぞ、皆様にとってもこの年が穏やかで素敵なものになりますように。
さて、何か書き初めをしようかとも思ったのですが、正月初めの今日としては以前に書いた話があまりに出来がいいので再放送をさせて頂きます。
💎商、3部時空のエトラとみのるくんの話です。
相変わらずインコは読んでいませんが、こんな雰囲気でいてくれたらいいなと思います。
今年も私のペースで彼らを見守っていきますので、よろしければお付き合いください。
まだ夜の、真っ暗なうちにそっと身体を揺すり起こされた。
さあ、行こう。眠気まなこを擦りながらやっと目を開けたみのるにそう言って笑ったのは、昨年初めて会ったはずの半分だけ血が繋がっているという兄だ。
どこに行くのかと聞くみのるに、着いてからのお楽しみだと言って美しい髪を揺らして頷いてくれたのはその兄の大切な人で、自分にとっての先生のようでもあり、先輩のようでもあり、友人のようでもあり、もう一人の兄のような人。
とにかくあったかい格好で、と二人に口々に言われ、もそもそと着替えて冬になって買ってもらったあたたかい上着と、クリスマスのプレゼントにもらった彼らと三人で色違いのマフラーを身に着けて。
車に乗り込むまではきちんと起きていたはずなのに、後部座席に座って運転席と助手席に座った二人の話す柔らかい声を聞いているうちに、どうやらまたうとうととしてしまったらしい。
「みのるくん、着いたよ」
「さあ、寒いですから。気を付けて」
二人に声をかけられる頃には、みのるはすっかり見覚えのない場所まで移動してきていた。
降り立った場所はどうやら広く水平線が見える、海岸線のようだ。
時刻は夜中から明け方に変わる頃合いで、静かでピンと張った空気が紺とも紫とも、青ともピンクとも言えない色合いの空と海に広がっていた。
昨夜、もう去年になってしまった大晦日の夜、ささやかな年越しを三人と二匹でお祝いして、やれ食べろもっと食べろと勧められるがまま、これでもかというくらいいいお肉のすき焼きをたらふく食べて、取り留めなくいろいろな話をしている最中に初日の出を見たことがあるか、という話題が出た気がする。見たことはないと、みのるは答えていた。それに対して、そっかあ、と新しくできた年の離れた兄は頷いていたけれど、特にだからどうしようとは言っていなかったはずなのに。
「正義さん、リチャードさん」
「うん?」
「いかがしましたか、みのるさま」
じわりと東の水平線の向こうが、明るくなってくる。
金色の線が、空と海の間にまっすぐ引かれて。
新しい年が生まれる場所に、みのるを連れてきてくれた兄たちが両側から笑う。
何かを言おうとして、けれどそれが言葉になる前に金色の境界から新春の曙光が頭を出し始めた。
他にも海岸線に集まっていた人たちから、静かな歓声が上がる。
――ああ。
自分でも知らないうちに、ぎゅっと胸の前で祈るように手を組んでいたようだ。声も出せずに空と海が染まっていく光景を見守るみのるを、どう思ったのか。
今年初めての朝日にほんのり顔の輪郭を光らせた両側の二人は、お互いの顔を見合わせてから、同時にふっと同じ色の空気を吐き出して。
両側から、片腕ずつ。
みのるの背で腕を交差させるように、そのがっしりした大人の身体でみのるを挟み込むように腕を回して。
「「明けましておめでとうございます」」
初日の光の中に、みのるを連れ出してくれた。
ああ、お母さん。お母さんも、見ているだろうか。ちゃんと。この、年が明けていく瞬間を。全てを静かに包んでいくこの光を。
ぐっと胸の中が熱くなって、より一層握りしめたみのるの手に力が入る。意識をして呼吸をしないと、何かが目から口から全身から零れ出ていってしまいそうだった。
そうして白く震える息をゆっくり吐き出して。
ほんの少し、光が沁みて滲む視界を瞬きで洗いながらみのるは思う。
この美しくて澄んだ光景を、きっと忘れはしない、と。
【はじまりの朝に】
