リチャード・ラナシンハ・ドヴルピアン誕生祭2024
公開 2024/12/24 23:43
最終更新
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ハッピーバースデー、リチャードさん!!
なんとなんと滑り込みですが、お祝いしたい気持ちはいっぱいなので!今年もお祝いに間に合ってよかった。
あなたに出会えたおかげで、私も宝石のような時間を思い出すことができました。
たくさんの幸せをくれたあなたが、これからも大切な人とかけがえない時間を過ごすことができますように!!
滑り込んだお祝いに、東京社宅時代のお話を一つ。
3部とは時空が異なります。エトラ左右なしです。
いつも、きちんとセットされている髪だった。美しい金糸。緩やかに曲線を描くその動きさえ、まるで計算されたように白皙の美貌を彩っている。
「おーい」
その髪に向かって、声をかける。
反応はない。
「おーい。リチャードやーい」
もう一度、声をかける。
むずがるような唸り声未満の声だか吐息だかが聞こえて、見えていた髪がもぞもぞと動く。ぴったりと寄り添っていたそこに、更に身体を潜り込ませるようにして数秒。聞こえ出したのが完全に寝息に移行してしまったを感じて、あーあと軽く息を吐く。
「ついにリチャードも、こいつに取り込まれちゃったんだなあ。だから言ったのに」
なあ、と同意を求めるように柔らかく広がった髪をちょいとつまんでみるも、漏れ聞こえる呼吸の音に乱れはない。
「これは、冬の魔物なんだ、ってさ」
自信満々に問題ありませんと抜かしていた誰かさんは、器用に首まですっぽりとヤツに飲み込まれている。完全に冬の魔物——炬燵の餌食だ。初めはしずしずと正座で入ってきて、しばらくはちゃんと縦になっていたのに、気付いたら横になっていて、そのうち足だけだったのが腰、胸、首とその中に取り込まれていってしまった。気持ちいいことはわかっている。この誘惑が抗いがたいものだということも、もちろん。
でも。
「……折角の誕生日なのに。リチャード、お前それでいいのか」
本日は十二月二十四日。世間様ではクリスマス・イヴで、自分にとってはリチャードの誕生日。一年で一番、張り切ってリチャードをお祝いしまくりたい日であった。
事の発端は、リチャードに今年の誕生日のリクエストを尋ねたことだろう。もちろん料理は腕を揮うことが大前提だが、その他に何かやりたいことや欲しいものはないか、とストレートに聞いてみたところ、一つだけ、と答えが返ってきたのだ。
「炬燵を、リビングに導入しませんか」
「え。炬燵?」
あまりに予想の斜め上の要望に、思わず目が丸くなる。
いや、でもまだ何かの勘違いとか、聞き間違いということもある。『こたつ』っぽく聞こえた何か別の単語とか。そう思って、何故だかそわそわと照れたような気配のある御仁に問いを重ねてみたのだが。
「炬燵って、あのコタツか? 一度入ったら最後、簡単には脱出することができない魔性の暖房器具の?」
「魔性かどうかは存じ上げませんが、中田様のお宅にあった布団のかかったテーブルの」
「ああー……うん、炬燵だな、それは」
正真正銘、人をダメにする冬の最強の暖房妖怪の『炬燵』で間違いないようだった。
折角のリクエストである。どんなお願いであっても全力で叶える一択だとは思っていたものの、何故急に炬燵なんて言い出したのかは気になった。大きなお屋敷で、立派に飾られたダイニングで、または広間のパーティで誕生日を過ごしてきたのだろう彼である。ダイニングもリビングもまとめて居間で過ごす象徴のような炬燵など、あえて誕生日に希望するようなものには思われなかったのだ。
「そうだなあ。リビングに導入するのは、できると思うけど。なんで炬燵なんだ? 何か思い入れがあったとか?」
「……あなたと、中田様とひろみ様のお宅にお邪魔した際、炬燵でお鍋を頂いたことがありましたね」
「ああー、そういえばあったなあ。あの時はごめんな、うちの親たちが大雑把で」
「いえ」
緩く首を振ったリチャードは、はにかむように笑ってみせた。
それが嬉しかったのだと。
大きくもない炬燵台で、少し動けばぶつかるような炬燵の中に足を入れて、やいのやいの言いながら一つの鍋をつつく時間が、幸せだったのだと。
そう軽く目を伏せて笑う顔が、その言葉が本心であることを伝えてくる。
もしリチャードが、その炬燵で過ごした時間のおかげで『中田家の一員になれた』と感じられたのだとしたら。炬燵が『あたたかな家族の形』のように感じられたのだとしたら。それを自分と過ごすこの場所に導入したいと言う、その心は。そう思ったらなんだか無性に照れくさくて。
「わかった。じゃあ、今年のお前の誕生日はリビングの模様替えをして炬燵が置けるようにするよ。超快適空間を目指すからな!」
「ふふ。楽しみにしています」
「おう、任せとけ」
やはり、当初に考えていた通り、全力で叶える一択だ。改めて気合を入れ直し、誕生日ディナーは炬燵で食べるのにふさわしいラインナップにしようと決めた。
斯くしてリビングに設置された炬燵スペースである。
フローリングの床でもふかふかになるように断熱シートとカーペットも揃え、座椅子代わりの炬燵用のクッションも誂えた。あったかふわふわの炬燵布団を広げれば、紛うことなき立派な炬燵の完成だ。カゴに入れたみかんも置いて、気分はまさに日本の冬。
誕生日ディナーもすませてくつろぐ頃には、ぽかぽかあたたかい空間にすっかりリチャードも蕩けていた。
「おーい。リチャードさーん」
何度目かも知れない呼びかけをしながら、自分もごろりと横になる。他にやろうとしていたことや、考えていたこともあったのだけれど、炬燵のあたたかさと常になく緩んだ美貌の人の気配に、どれもこれもが溶けていく。
もぞもぞと動いてリチャードの顔がある辺りに近付けば、半ば以上布団に包まって気持ちよさそうに瞼を閉じているのが見えた。
もうすぐ、日付も変わる。炬燵は気持ちがいいけれど、ここで寝るのはあまり身体によくない。わかっているけれど、このなんともふやけた顔を起こすのももったいない。
「リチャード、誕生日おめでとう。……なあ、このリクエストって実は遠回しのプロポーズだったりとかする?」
もったいないので、起こさないようにそっと呟いただけだったのに。
途端にかあっと朱が差した顔に、思わず笑いが込み上げる。
日付が変われば、クリスマスだ。
イエスの返事を込めたプレゼントを渡すのは、もう少しだけ後。
『返事はイエスでよろしいですか』
なんとなんと滑り込みですが、お祝いしたい気持ちはいっぱいなので!今年もお祝いに間に合ってよかった。
あなたに出会えたおかげで、私も宝石のような時間を思い出すことができました。
たくさんの幸せをくれたあなたが、これからも大切な人とかけがえない時間を過ごすことができますように!!
滑り込んだお祝いに、東京社宅時代のお話を一つ。
3部とは時空が異なります。エトラ左右なしです。
いつも、きちんとセットされている髪だった。美しい金糸。緩やかに曲線を描くその動きさえ、まるで計算されたように白皙の美貌を彩っている。
「おーい」
その髪に向かって、声をかける。
反応はない。
「おーい。リチャードやーい」
もう一度、声をかける。
むずがるような唸り声未満の声だか吐息だかが聞こえて、見えていた髪がもぞもぞと動く。ぴったりと寄り添っていたそこに、更に身体を潜り込ませるようにして数秒。聞こえ出したのが完全に寝息に移行してしまったを感じて、あーあと軽く息を吐く。
「ついにリチャードも、こいつに取り込まれちゃったんだなあ。だから言ったのに」
なあ、と同意を求めるように柔らかく広がった髪をちょいとつまんでみるも、漏れ聞こえる呼吸の音に乱れはない。
「これは、冬の魔物なんだ、ってさ」
自信満々に問題ありませんと抜かしていた誰かさんは、器用に首まですっぽりとヤツに飲み込まれている。完全に冬の魔物——炬燵の餌食だ。初めはしずしずと正座で入ってきて、しばらくはちゃんと縦になっていたのに、気付いたら横になっていて、そのうち足だけだったのが腰、胸、首とその中に取り込まれていってしまった。気持ちいいことはわかっている。この誘惑が抗いがたいものだということも、もちろん。
でも。
「……折角の誕生日なのに。リチャード、お前それでいいのか」
本日は十二月二十四日。世間様ではクリスマス・イヴで、自分にとってはリチャードの誕生日。一年で一番、張り切ってリチャードをお祝いしまくりたい日であった。
事の発端は、リチャードに今年の誕生日のリクエストを尋ねたことだろう。もちろん料理は腕を揮うことが大前提だが、その他に何かやりたいことや欲しいものはないか、とストレートに聞いてみたところ、一つだけ、と答えが返ってきたのだ。
「炬燵を、リビングに導入しませんか」
「え。炬燵?」
あまりに予想の斜め上の要望に、思わず目が丸くなる。
いや、でもまだ何かの勘違いとか、聞き間違いということもある。『こたつ』っぽく聞こえた何か別の単語とか。そう思って、何故だかそわそわと照れたような気配のある御仁に問いを重ねてみたのだが。
「炬燵って、あのコタツか? 一度入ったら最後、簡単には脱出することができない魔性の暖房器具の?」
「魔性かどうかは存じ上げませんが、中田様のお宅にあった布団のかかったテーブルの」
「ああー……うん、炬燵だな、それは」
正真正銘、人をダメにする冬の最強の暖房妖怪の『炬燵』で間違いないようだった。
折角のリクエストである。どんなお願いであっても全力で叶える一択だとは思っていたものの、何故急に炬燵なんて言い出したのかは気になった。大きなお屋敷で、立派に飾られたダイニングで、または広間のパーティで誕生日を過ごしてきたのだろう彼である。ダイニングもリビングもまとめて居間で過ごす象徴のような炬燵など、あえて誕生日に希望するようなものには思われなかったのだ。
「そうだなあ。リビングに導入するのは、できると思うけど。なんで炬燵なんだ? 何か思い入れがあったとか?」
「……あなたと、中田様とひろみ様のお宅にお邪魔した際、炬燵でお鍋を頂いたことがありましたね」
「ああー、そういえばあったなあ。あの時はごめんな、うちの親たちが大雑把で」
「いえ」
緩く首を振ったリチャードは、はにかむように笑ってみせた。
それが嬉しかったのだと。
大きくもない炬燵台で、少し動けばぶつかるような炬燵の中に足を入れて、やいのやいの言いながら一つの鍋をつつく時間が、幸せだったのだと。
そう軽く目を伏せて笑う顔が、その言葉が本心であることを伝えてくる。
もしリチャードが、その炬燵で過ごした時間のおかげで『中田家の一員になれた』と感じられたのだとしたら。炬燵が『あたたかな家族の形』のように感じられたのだとしたら。それを自分と過ごすこの場所に導入したいと言う、その心は。そう思ったらなんだか無性に照れくさくて。
「わかった。じゃあ、今年のお前の誕生日はリビングの模様替えをして炬燵が置けるようにするよ。超快適空間を目指すからな!」
「ふふ。楽しみにしています」
「おう、任せとけ」
やはり、当初に考えていた通り、全力で叶える一択だ。改めて気合を入れ直し、誕生日ディナーは炬燵で食べるのにふさわしいラインナップにしようと決めた。
斯くしてリビングに設置された炬燵スペースである。
フローリングの床でもふかふかになるように断熱シートとカーペットも揃え、座椅子代わりの炬燵用のクッションも誂えた。あったかふわふわの炬燵布団を広げれば、紛うことなき立派な炬燵の完成だ。カゴに入れたみかんも置いて、気分はまさに日本の冬。
誕生日ディナーもすませてくつろぐ頃には、ぽかぽかあたたかい空間にすっかりリチャードも蕩けていた。
「おーい。リチャードさーん」
何度目かも知れない呼びかけをしながら、自分もごろりと横になる。他にやろうとしていたことや、考えていたこともあったのだけれど、炬燵のあたたかさと常になく緩んだ美貌の人の気配に、どれもこれもが溶けていく。
もぞもぞと動いてリチャードの顔がある辺りに近付けば、半ば以上布団に包まって気持ちよさそうに瞼を閉じているのが見えた。
もうすぐ、日付も変わる。炬燵は気持ちがいいけれど、ここで寝るのはあまり身体によくない。わかっているけれど、このなんともふやけた顔を起こすのももったいない。
「リチャード、誕生日おめでとう。……なあ、このリクエストって実は遠回しのプロポーズだったりとかする?」
もったいないので、起こさないようにそっと呟いただけだったのに。
途端にかあっと朱が差した顔に、思わず笑いが込み上げる。
日付が変われば、クリスマスだ。
イエスの返事を込めたプレゼントを渡すのは、もう少しだけ後。
『返事はイエスでよろしいですか』
