中田正義誕生祭2024
公開 2024/05/14 16:08
最終更新
2024/05/14 21:09
ハッピーバースデー、正義くん!!
第三部になって成長著しいあなたですが、これからもたくさん大切な人と幸せな時間を過ごすことができることを願っています。
誕生日を祝いたい人、祝ってほしいと思える人と巡り合えた幸せが、これからもめいっぱい正義くんにありますように!!
正義くんの誕生日のお祝いに、再録本(緑)内シリーズ〖髪をのばしてくれる上司さま〗設定のSSを。
💎商 2部以降時空 エトラ左右なし(でもできてる二人だと思う)
「誕生日プレゼントに、何か欲しいものはありませんか」
そう、リチャードに訊かれたのはいつだっただろう。
二人で並んでソファーに座り、お互いの肩を包み合うように大きめのブランケットに一緒にくるまりながら何かの映画を観ていた時だったと思うから、きっとそれなりに寒い季節だ。
頂きもののワインが美味しくて、口の中にほろりと溶けていくチョコレートが美味しくて、世界中のどこよりも安心できる体温の横にいることで身体も心も緩んでいたのか、その時は随分とふわふわとしていて。
普段なら絶対に言わないことを、口にしていた。
「そうだなあ……うーん……本当に、なんでもいい?」
「ええ、もちろん」
「じゃあ、一度でいいからリチャードに髪を伸ばして欲しい」
そう言った時、リチャードがどんな顔をしていたか、俺ははっきりとは覚えていない。驚いていたような気もするし、面白がっていたような気もする。いや、今思い返しているやりとりも、もしかしたらもっとふにゃふにゃとした酔っ払いの会話だったかもしれないし、違う言い回しだったかもしれない。
確かに、いつも完璧に美しく、最高に格好良く、容姿端麗とはこのことかと思う美丈夫のリチャードなのだから、髪を伸ばしてもさぞ美しかろうと——そう、頭の片隅で思っていたことはあった。だからといって、「髪を伸ばしたリチャードもきっと天使が舞い降りてきたんじゃないかと思うくらいきれいなんだろうから見てみたいなあ」などという妄想懸想のレベルで思っていたことを実際に口にしてしまうなんて。
しかも、本人に大真面目に『本気』と書いて『マジ』と読むレベルで受け取られてしまうなんて。
伸ばして欲しいと言ってみたって、髪など瞬間で伸びるものでもない。髪を伸ばしていく最中の苦労など今まであまり考えたことがなかったけれど、それは傍目に見ても本当に大変そうで。何度も途中でそろそろ切ってもいいんじゃないか、と提案しようとしたが、その度にリチャードは最後まで言わせようとしなかった。
ある程度伸びてからは、その柔らかで美しい金色の川の流れに見惚れる俺に、髪ばかり見るなとやきもちを焼いているような素振りがあったり、お互いヘアスタイリング技術が上がったりと色々なことがあったけれど。
「……ああ、今日もきれいだなあ……」
朝、シーツオバケになることが少なくなったリチャードの、シーツの上に広がった長い髪に朝日が当たるのを見るのが好きだ。きらきらと、光の粒子を集めて細く紡いだような美しい金糸。手に掬えば柔らかく指を滑っていく少し冷たい感触。短い時には自然とウェーブがかかっていた髪は、髪が伸びて重みがかかったためか存外真っ直ぐだ。
手に掬っては落ち、落ちては掬い。そんなことをしながら金色の川と戯れて半ばうっとりと嘆息していると、小さく唸る声とともに髪よりも濃い金の扇のような睫毛が揺れた。何度かぱしぱしと上下して、その下の青空の色がこちらを向く。
「せいぎ」
「おはよう、リチャード」
「おはようございます。今日は、よく晴れていますか」
「うん、ぴかぴかに」
「それはよかった」
「? う、わっ!?」
何故だか天気を訊いてきたリチャードに窓の外を見てから答えると、にこりと笑った腕が不意に伸びて、驚く間もなくぐるんと視界が反転した。
顔の両側に流れかかる金色の滝が、朝の光を浴びて更に一段眩い輝きを宿す。見上げれば、真上には大好きな瞳と桜貝の唇。柔らかな笑みを湛えてこちらを見下ろすそれ以外、何も目に入らない。
「ハッピーバースデー、正義。あなたは、これがお好きでしょう?」
「あ、りがとう。でも、いきなり引き倒されたらびっくりするよ」
「ふふ。修行が足りませんね」
胸の上に置かれたリチャードの手が、ついと顔の横の髪を一房つまんで笑う。心臓がばくばくと音を立てているのはひっくり返って驚いたからだけではない気がする。それが伝わっていそうで気恥ずかしいが、馬乗りになられた態勢では逃げようもない。
「正義、お待たせしました」
「……何を?」
「あなたへのプレゼントです。初めの年、数か月ではとても髪を伸ばしたとは言えない長さで、プレゼント足り得ませんでした。昨年一年は、伸ばした甲斐がありました。いかがでしょう。二年と少し、この髪を過程も併せてお楽しみいただけましたか?」
「……『一度でいいから、リチャードに髪を伸ばして欲しい』って言ったのは、俺なんだけど。まさか二年もかけて伸ばしてくれると思ってなかった。ほんと、最高のプレゼントだよ。ありがとう、リチャード。本当に、ありがとうな」
「喜んでいただけて、私もとても嬉しい。あなたに愛でられる髪が少々羨ましくもありましたが」
「そんなの! リチャードの髪だからに決まってるだろ!」
「存じております。よく」
くすくすと楽しげに笑ったリチャードは、さて、と一呼吸おいて少し身体を起こした。金の御簾が離れていくのが名残惜しく、その先をそっと掴んでしまえばまた笑われる。
「それでは正義、今年のバースデープレゼントです」
「まだあるのか」
「もちろん。ここまでは、『あなたのために髪を伸ばす』プレゼントでしたが、今年は『あなたの好きに髪を切れる』プレゼントです。以前にも申し上げた通り、この髪はあなたのために伸ばした、あなただけに差し上げたもの。ですので、あなたの望む形、望む長さにすることをプレゼントいたします。この長さがよろしければ、そのままでも構いません」
「…………えええ……」
「以前のようにショートスタイルにするもよし、伸ばしている過程でこの長さが良かったという長さがあればそのスタイルでも」
「うう」
なんというものをプレゼントとして差し出そうとするのだ、この男は。
「なんてものをプレゼントにするんだ、お前」
思ったことがそっくり同じように口から出てしまった。けれど、本心である。
こんなにも時間をかけて『プレゼント』してくれたリチャードそのものを、好きにしていいなんて。
伸ばしかけの頃、何度もサロンで整え直していた髪型。
耳にかけても、少し顔を傾けただけで落ちてきて横顔を隠していた髪の束。
いつしかその髪を掬って、金色の下から現れる肌を見ることが好きになっていた自分。
髪の手入れも、ヘアスタイルの作り方も、雑誌やサロンで勉強をして、時に失敗して笑い合って。
そんな時間全てをプレゼントしてくれた、大切な人。
「どうぞ、存分に悩んで下さって結構ですので」
「ああー……もう! そうさせてもらいます! ………………でも」
「でも?」
うう、だとかああ、だとかと唸っているこちらを楽しそうに笑って見ているリチャードが悔しくて、白いうなじを滑り落ちる金色を指に絡める。するりと、まるでこの手の中にあるのが当然というように馴染むその感触を毛先近くまで楽しんで、リチャードに見えるようにその一房に唇を寄せる。
「俺のために伸ばしてくれた髪だと言うなら。もうちょっと、このままでいて欲しいです」
そのままちらりと目だけを上げてみるも、意趣返しは失敗したようだ。
「ウィズ・プレジャー」
見上げた先の、嬉しさとか、幸せとか、くすぐったさとか、あったかさとか、愛しさとか、その他いっぱいの歓び全部を詰めたような笑顔に祝福されて、中田正義史上最高の誕生日は今年も絶賛記録更新中。
シリーズ〖髪をのばしてくれる上司さま〗
『この時間の全てが贈り物』
第三部になって成長著しいあなたですが、これからもたくさん大切な人と幸せな時間を過ごすことができることを願っています。
誕生日を祝いたい人、祝ってほしいと思える人と巡り合えた幸せが、これからもめいっぱい正義くんにありますように!!
正義くんの誕生日のお祝いに、再録本(緑)内シリーズ〖髪をのばしてくれる上司さま〗設定のSSを。
💎商 2部以降時空 エトラ左右なし(でもできてる二人だと思う)
「誕生日プレゼントに、何か欲しいものはありませんか」
そう、リチャードに訊かれたのはいつだっただろう。
二人で並んでソファーに座り、お互いの肩を包み合うように大きめのブランケットに一緒にくるまりながら何かの映画を観ていた時だったと思うから、きっとそれなりに寒い季節だ。
頂きもののワインが美味しくて、口の中にほろりと溶けていくチョコレートが美味しくて、世界中のどこよりも安心できる体温の横にいることで身体も心も緩んでいたのか、その時は随分とふわふわとしていて。
普段なら絶対に言わないことを、口にしていた。
「そうだなあ……うーん……本当に、なんでもいい?」
「ええ、もちろん」
「じゃあ、一度でいいからリチャードに髪を伸ばして欲しい」
そう言った時、リチャードがどんな顔をしていたか、俺ははっきりとは覚えていない。驚いていたような気もするし、面白がっていたような気もする。いや、今思い返しているやりとりも、もしかしたらもっとふにゃふにゃとした酔っ払いの会話だったかもしれないし、違う言い回しだったかもしれない。
確かに、いつも完璧に美しく、最高に格好良く、容姿端麗とはこのことかと思う美丈夫のリチャードなのだから、髪を伸ばしてもさぞ美しかろうと——そう、頭の片隅で思っていたことはあった。だからといって、「髪を伸ばしたリチャードもきっと天使が舞い降りてきたんじゃないかと思うくらいきれいなんだろうから見てみたいなあ」などという妄想懸想のレベルで思っていたことを実際に口にしてしまうなんて。
しかも、本人に大真面目に『本気』と書いて『マジ』と読むレベルで受け取られてしまうなんて。
伸ばして欲しいと言ってみたって、髪など瞬間で伸びるものでもない。髪を伸ばしていく最中の苦労など今まであまり考えたことがなかったけれど、それは傍目に見ても本当に大変そうで。何度も途中でそろそろ切ってもいいんじゃないか、と提案しようとしたが、その度にリチャードは最後まで言わせようとしなかった。
ある程度伸びてからは、その柔らかで美しい金色の川の流れに見惚れる俺に、髪ばかり見るなとやきもちを焼いているような素振りがあったり、お互いヘアスタイリング技術が上がったりと色々なことがあったけれど。
「……ああ、今日もきれいだなあ……」
朝、シーツオバケになることが少なくなったリチャードの、シーツの上に広がった長い髪に朝日が当たるのを見るのが好きだ。きらきらと、光の粒子を集めて細く紡いだような美しい金糸。手に掬えば柔らかく指を滑っていく少し冷たい感触。短い時には自然とウェーブがかかっていた髪は、髪が伸びて重みがかかったためか存外真っ直ぐだ。
手に掬っては落ち、落ちては掬い。そんなことをしながら金色の川と戯れて半ばうっとりと嘆息していると、小さく唸る声とともに髪よりも濃い金の扇のような睫毛が揺れた。何度かぱしぱしと上下して、その下の青空の色がこちらを向く。
「せいぎ」
「おはよう、リチャード」
「おはようございます。今日は、よく晴れていますか」
「うん、ぴかぴかに」
「それはよかった」
「? う、わっ!?」
何故だか天気を訊いてきたリチャードに窓の外を見てから答えると、にこりと笑った腕が不意に伸びて、驚く間もなくぐるんと視界が反転した。
顔の両側に流れかかる金色の滝が、朝の光を浴びて更に一段眩い輝きを宿す。見上げれば、真上には大好きな瞳と桜貝の唇。柔らかな笑みを湛えてこちらを見下ろすそれ以外、何も目に入らない。
「ハッピーバースデー、正義。あなたは、これがお好きでしょう?」
「あ、りがとう。でも、いきなり引き倒されたらびっくりするよ」
「ふふ。修行が足りませんね」
胸の上に置かれたリチャードの手が、ついと顔の横の髪を一房つまんで笑う。心臓がばくばくと音を立てているのはひっくり返って驚いたからだけではない気がする。それが伝わっていそうで気恥ずかしいが、馬乗りになられた態勢では逃げようもない。
「正義、お待たせしました」
「……何を?」
「あなたへのプレゼントです。初めの年、数か月ではとても髪を伸ばしたとは言えない長さで、プレゼント足り得ませんでした。昨年一年は、伸ばした甲斐がありました。いかがでしょう。二年と少し、この髪を過程も併せてお楽しみいただけましたか?」
「……『一度でいいから、リチャードに髪を伸ばして欲しい』って言ったのは、俺なんだけど。まさか二年もかけて伸ばしてくれると思ってなかった。ほんと、最高のプレゼントだよ。ありがとう、リチャード。本当に、ありがとうな」
「喜んでいただけて、私もとても嬉しい。あなたに愛でられる髪が少々羨ましくもありましたが」
「そんなの! リチャードの髪だからに決まってるだろ!」
「存じております。よく」
くすくすと楽しげに笑ったリチャードは、さて、と一呼吸おいて少し身体を起こした。金の御簾が離れていくのが名残惜しく、その先をそっと掴んでしまえばまた笑われる。
「それでは正義、今年のバースデープレゼントです」
「まだあるのか」
「もちろん。ここまでは、『あなたのために髪を伸ばす』プレゼントでしたが、今年は『あなたの好きに髪を切れる』プレゼントです。以前にも申し上げた通り、この髪はあなたのために伸ばした、あなただけに差し上げたもの。ですので、あなたの望む形、望む長さにすることをプレゼントいたします。この長さがよろしければ、そのままでも構いません」
「…………えええ……」
「以前のようにショートスタイルにするもよし、伸ばしている過程でこの長さが良かったという長さがあればそのスタイルでも」
「うう」
なんというものをプレゼントとして差し出そうとするのだ、この男は。
「なんてものをプレゼントにするんだ、お前」
思ったことがそっくり同じように口から出てしまった。けれど、本心である。
こんなにも時間をかけて『プレゼント』してくれたリチャードそのものを、好きにしていいなんて。
伸ばしかけの頃、何度もサロンで整え直していた髪型。
耳にかけても、少し顔を傾けただけで落ちてきて横顔を隠していた髪の束。
いつしかその髪を掬って、金色の下から現れる肌を見ることが好きになっていた自分。
髪の手入れも、ヘアスタイルの作り方も、雑誌やサロンで勉強をして、時に失敗して笑い合って。
そんな時間全てをプレゼントしてくれた、大切な人。
「どうぞ、存分に悩んで下さって結構ですので」
「ああー……もう! そうさせてもらいます! ………………でも」
「でも?」
うう、だとかああ、だとかと唸っているこちらを楽しそうに笑って見ているリチャードが悔しくて、白いうなじを滑り落ちる金色を指に絡める。するりと、まるでこの手の中にあるのが当然というように馴染むその感触を毛先近くまで楽しんで、リチャードに見えるようにその一房に唇を寄せる。
「俺のために伸ばしてくれた髪だと言うなら。もうちょっと、このままでいて欲しいです」
そのままちらりと目だけを上げてみるも、意趣返しは失敗したようだ。
「ウィズ・プレジャー」
見上げた先の、嬉しさとか、幸せとか、くすぐったさとか、あったかさとか、愛しさとか、その他いっぱいの歓び全部を詰めたような笑顔に祝福されて、中田正義史上最高の誕生日は今年も絶賛記録更新中。
シリーズ〖髪をのばしてくれる上司さま〗
『この時間の全てが贈り物』
