ハッピーまんなかバースデーのお話
公開 2023/09/03 13:06
最終更新
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💎2部以降 エトラ左右なし
9/3はエトラのまんなかバースデーなので!
今年のエトラも、お互いにもらったプレゼントでコーディネートして秘密の記念日デートをしていたらいいなあ。
ある人にとっては、大切なパートナーとの記念日。
またある人にとっては、仲の良い友人とのイベント。
いずれにしても、それを行う二人以外にはわからない、秘密の記念日。
『二人だけの秘密だよ』
茶目っ気のある目を器用に片方だけ閉じて左頬にえくぼを浮かべていた誰かは遥か遠く、彼以外にそのような言葉を交わせる相手もなく、どこかに伸ばしたかった手はいつだって届かないままだったけれど。
「さて、正義。本日ですが、時間は空けて頂いておりますね」
「当然! 実はかなり楽しみにしてたんだ」
「それは重畳」
「リチャードもだろ。こんな時間に自分で起きてくるなんてさ」
俺から起こしに行こうと思ってたのに、と正義がエプロンを首から外しながら笑う。
今日ばかりは寝坊をするわけにはいかないと、目覚ましを余分に二つかけたのだ。
きっと朝食を用意していたのだろう彼にも聞こえたと思うのだが、階段を下りる音に驚いて廊下まで出てきてくれた本日の約束相手は、一瞬眩しそうに目を細めてからおはようの代わりに開口一番、「ハッピーまんなかバースデー!」と笑って腕を広げてくれた。
まんなかバースデーなら、Middle Birthdayなのだろうか。階段の残りを三段分降りて「Happy Middle Birthday」とハグを交わせば、楽しげな笑い声が肩口で踊った。
「なあ、リチャード。願いごとの方を、先に言ってもいいかな」
「ええ、何なりと。あなたの望むことなら今日だけと言わず」
「安請け合いしすぎだぞ」
「何とでも」
「——じゃあ。これの中身はちょっとしたアイテムなんだけどさ。今日はこの後、これを身に着けて俺とデートして欲しいです」
「…………」
「……おーい。何なりと、じゃなかったのか」
「……先を越されました」
「なんだって?」
「いえ。ちなみにプランは」
「ランチデートをして帰ってくる予定?」
「なるほど」
「それで、返事は?」
「交換条件があります」
「ええ?」
「実は、こちらの中身はちょっとしたアイテムなのですが。本日はこちらを身に着けて、あなたの願いごとのランチデートの後に私とデートをして頂きたいのです」
「えええ?」
「ディナーの予約は万全です」
「予約済み!」
「当然です」
「なんだ、お互い同じような事考えてたな」
「そのようですね。それで、お返事は?」
手にした箱は決して大きくはないけれど、中に詰まったものは大きさなどでは測れない。
「そんなの、もちろん」
お互いが選んだものを一つずつコーディネートに組み込んで、今年も、次も、その次も『秘密の記念日』のデートが続けばいいと。
「喜んで!」
いつだって届かないと思っていた。掴めるはずなどないと。
けれど、諦められずにいた先に、彼はいた。
新しい約束も、一つずつ。
伸ばした手を強く握り返してくれる、あなたと。
『いつだってとどかないまま』
2021/9/3 Twitter投稿:再掲
【One pint of Words】収録
9/3はエトラのまんなかバースデーなので!
今年のエトラも、お互いにもらったプレゼントでコーディネートして秘密の記念日デートをしていたらいいなあ。
ある人にとっては、大切なパートナーとの記念日。
またある人にとっては、仲の良い友人とのイベント。
いずれにしても、それを行う二人以外にはわからない、秘密の記念日。
『二人だけの秘密だよ』
茶目っ気のある目を器用に片方だけ閉じて左頬にえくぼを浮かべていた誰かは遥か遠く、彼以外にそのような言葉を交わせる相手もなく、どこかに伸ばしたかった手はいつだって届かないままだったけれど。
「さて、正義。本日ですが、時間は空けて頂いておりますね」
「当然! 実はかなり楽しみにしてたんだ」
「それは重畳」
「リチャードもだろ。こんな時間に自分で起きてくるなんてさ」
俺から起こしに行こうと思ってたのに、と正義がエプロンを首から外しながら笑う。
今日ばかりは寝坊をするわけにはいかないと、目覚ましを余分に二つかけたのだ。
きっと朝食を用意していたのだろう彼にも聞こえたと思うのだが、階段を下りる音に驚いて廊下まで出てきてくれた本日の約束相手は、一瞬眩しそうに目を細めてからおはようの代わりに開口一番、「ハッピーまんなかバースデー!」と笑って腕を広げてくれた。
まんなかバースデーなら、Middle Birthdayなのだろうか。階段の残りを三段分降りて「Happy Middle Birthday」とハグを交わせば、楽しげな笑い声が肩口で踊った。
「なあ、リチャード。願いごとの方を、先に言ってもいいかな」
「ええ、何なりと。あなたの望むことなら今日だけと言わず」
「安請け合いしすぎだぞ」
「何とでも」
「——じゃあ。これの中身はちょっとしたアイテムなんだけどさ。今日はこの後、これを身に着けて俺とデートして欲しいです」
「…………」
「……おーい。何なりと、じゃなかったのか」
「……先を越されました」
「なんだって?」
「いえ。ちなみにプランは」
「ランチデートをして帰ってくる予定?」
「なるほど」
「それで、返事は?」
「交換条件があります」
「ええ?」
「実は、こちらの中身はちょっとしたアイテムなのですが。本日はこちらを身に着けて、あなたの願いごとのランチデートの後に私とデートをして頂きたいのです」
「えええ?」
「ディナーの予約は万全です」
「予約済み!」
「当然です」
「なんだ、お互い同じような事考えてたな」
「そのようですね。それで、お返事は?」
手にした箱は決して大きくはないけれど、中に詰まったものは大きさなどでは測れない。
「そんなの、もちろん」
お互いが選んだものを一つずつコーディネートに組み込んで、今年も、次も、その次も『秘密の記念日』のデートが続けばいいと。
「喜んで!」
いつだって届かないと思っていた。掴めるはずなどないと。
けれど、諦められずにいた先に、彼はいた。
新しい約束も、一つずつ。
伸ばした手を強く握り返してくれる、あなたと。
『いつだってとどかないまま』
2021/9/3 Twitter投稿:再掲
【One pint of Words】収録
