動作のお題20-09
公開 2023/08/30 12:30
最終更新
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💎商 バク山
※動作のお題は、お題から想像したイラスト・風景を挿絵にしたらどんな文章になるかと考えて書いていっているシリーズです。
直接動作と関係ない話になっている可能性もありますが、想像上のイラスト(頭の中だけ)からの二重変換のため、ふわっと雰囲気で読んで下さい。
つやつやとよく磨かれた濃いブラウンの靴の先が、ほんの少し、ふわりと浮くのが視界に入って目を向ける。
身体の雰囲気によく合った、落ち着いた色味の白に包まれた長い足が、交差を解いてゆったりと下ろされる。
床に下りたそこに自然な動きで体重が乗って、浮き上がるように深く沈んでいたソファーから立ち上がる。
すらりと身を立てた姿はまるでどこかの神様の像を見るようで、いつでもとても眩しくて、ほんの少し遠い。
きれいで、キレイな、俺の神様。
ソファーに寝そべったまま、空っぽになった座面の一つと立ち上がった中天の太陽のような人を見比べる。
そうしている間にスタンドテーブルの上にあったジャケットには腕が通って、キラキラ輝く姿はドアの前。
鈍く艶の消えたノブに白い指がかかり、それが動けばこちらなど振り返らずに出て行ってしまうのだろう。
それでいいと思う。そうして欲しいと思う。それなのに、振り返ってくれたらいいのに、とも思ってしまう。
早く。
早く。
早く。
待ってよ先生、とその背中に飛びついてしまいたくなる前に。そのドアを開けて置いて行ってくれたなら。
じっと、息を飲んで見守るうちに、持ち上がった指がノブにかかる。
カチャリと響く金属の音と、軽く軋むドアの音。
それに紛れるようなわざとらしいため息。
「……いつまでそうしているつもりですか。行きますよ、山田さん」
「! はあい、先生」
ドアを開いたままこちらを見るのは、溶けた氷のような透き通る青。
その美しい声に呼ばれたのなら、行かずにいられるわけがない。
ぱっと立ち上がって詰める距離は大股で数歩。
我ながら本当に犬のような反応だった。
先生も同じことを思ったのだろう。
竦められた肩に、吐息が一つ。
笑ってしまえば一睨み。
先生は、きっと知らない。
刺々しさなど欠片もない、やさしいばかりのその音が
この首に見えない首輪をかけてることを。
『立ち上がる』
2022/9/16 Twitter投稿:再掲
動作のお題20
(配布元:追憶の苑 http://farfalle.x0.to/ )
※動作のお題は、お題から想像したイラスト・風景を挿絵にしたらどんな文章になるかと考えて書いていっているシリーズです。
直接動作と関係ない話になっている可能性もありますが、想像上のイラスト(頭の中だけ)からの二重変換のため、ふわっと雰囲気で読んで下さい。
つやつやとよく磨かれた濃いブラウンの靴の先が、ほんの少し、ふわりと浮くのが視界に入って目を向ける。
身体の雰囲気によく合った、落ち着いた色味の白に包まれた長い足が、交差を解いてゆったりと下ろされる。
床に下りたそこに自然な動きで体重が乗って、浮き上がるように深く沈んでいたソファーから立ち上がる。
すらりと身を立てた姿はまるでどこかの神様の像を見るようで、いつでもとても眩しくて、ほんの少し遠い。
きれいで、キレイな、俺の神様。
ソファーに寝そべったまま、空っぽになった座面の一つと立ち上がった中天の太陽のような人を見比べる。
そうしている間にスタンドテーブルの上にあったジャケットには腕が通って、キラキラ輝く姿はドアの前。
鈍く艶の消えたノブに白い指がかかり、それが動けばこちらなど振り返らずに出て行ってしまうのだろう。
それでいいと思う。そうして欲しいと思う。それなのに、振り返ってくれたらいいのに、とも思ってしまう。
早く。
早く。
早く。
待ってよ先生、とその背中に飛びついてしまいたくなる前に。そのドアを開けて置いて行ってくれたなら。
じっと、息を飲んで見守るうちに、持ち上がった指がノブにかかる。
カチャリと響く金属の音と、軽く軋むドアの音。
それに紛れるようなわざとらしいため息。
「……いつまでそうしているつもりですか。行きますよ、山田さん」
「! はあい、先生」
ドアを開いたままこちらを見るのは、溶けた氷のような透き通る青。
その美しい声に呼ばれたのなら、行かずにいられるわけがない。
ぱっと立ち上がって詰める距離は大股で数歩。
我ながら本当に犬のような反応だった。
先生も同じことを思ったのだろう。
竦められた肩に、吐息が一つ。
笑ってしまえば一睨み。
先生は、きっと知らない。
刺々しさなど欠片もない、やさしいばかりのその音が
この首に見えない首輪をかけてることを。
『立ち上がる』
2022/9/16 Twitter投稿:再掲
動作のお題20
(配布元:追憶の苑 http://farfalle.x0.to/ )
