動作のお題20-07
公開 2023/08/27 12:18
最終更新
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💎商2部以降 エトラ左右なし
※動作のお題は、お題から想像したイラスト・風景を挿絵にしたらどんな文章になるかと考えて書いていっているシリーズです。
直接動作と関係ない話になっている可能性もありますが、想像上のイラスト(頭の中だけ)からの二重変換のため、ふわっと雰囲気で読んで下さい。
「あれ、あやとりだ」
それを見たのは日本を飛び出して約半日、空気の温度も色も異なる平坦な土地を歩いている時だった。
広場で、街角で、音楽だったり特技だったり絵画だったりの様々なパフォーマンスをしている人を数人、時には数十人が囲んでいる光景は、どの国で見ても楽しい。今頃もしかしたらこんな風に街角に折り畳みチェアを置いて、ギターを膝に乗せているかもしれない友人の一人を想像するからだろうか。ああ、そういえばまた最近連絡を取っていない。
そんなことを思い出したのは、パフォーマンスが何となくちょっと見知ったもので、かつこんなところで『パフォーマンス』として見るとは思わないものだったからだ。
「String figure ですね」
「英語だとString figure って言うのか? なんだかこういうところで路上パフォーマンスとしてやるものって感じがしてなかったから、意外だなあ」
思わず足を止めて呟いてしまえば、一歩半先で止まったリチャードが半身を向けて振り返った。
図形を作ることを指す時は『String Figure』、あやとりをすること自体を指す時は『Cat's cradle』と言うのだと、耳に優しい声が教えてくれる。呼び方が異なるけれど、こちらは手品のような手捌きで指と紐を操って図形を作って見せてくれるパフォーマンスのようだから、『String figure』の方なんだろう。
もちろん、エトランジェの約款のことは今もずっとこの身に染み込んでいる。遊びに性差など関係ないし、夢中になれる、魅せられる技術に年齢も関係ない。
けれど、『あやとり』というと自分の中のイメージは幼稚園とか小学生くらいの女の子たちが長い毛糸の輪っかに指を通して遊んでいる姿だ。そういう時の、女子の間にあるもったりとした濃密で重たい空気感や距離感が子ども心に不思議だったことを、思い出す。
目の前で繰り広げられる指の間で複雑に形作られたカラフルな紐は、見たことがある形もあれば、全く知らないものもある。
勝手に日本の遊びだと思っていたけれど。
無意識に女の子たちがやるものだと思っていたけれど。
「なんだか、手品みたいだなあ」
「ふふ、正真正銘タネも仕掛けもない研鑽された技術の賜物ですが」
「そうだよなあ。うん、すごいなあ」
まだまだ、知らないことばかりだ。
知らなかったことを知れば知るほど、世界は遠く遥かに広がっていく。
そろそろ、と促されるのに頷いて、パフォーマーの近くに置かれたチップ入れに足を向ける。
飛ばないように紙幣をコインで押さえれば、「~~~」すぐ横から声がかかった。
聞き覚えのないそれは、まだ自分が知らない言語の、きっとお礼の言葉。
グレイ混じりの髪と、深く刻まれた笑い皺。
その無骨な手が描いていたのは、美しい形の星だった。
『あやとり』
2022/9/12 Twitter投稿:再掲
動作のお題20
(配布元:追憶の苑 http://farfalle.x0.to/ )
※動作のお題は、お題から想像したイラスト・風景を挿絵にしたらどんな文章になるかと考えて書いていっているシリーズです。
直接動作と関係ない話になっている可能性もありますが、想像上のイラスト(頭の中だけ)からの二重変換のため、ふわっと雰囲気で読んで下さい。
「あれ、あやとりだ」
それを見たのは日本を飛び出して約半日、空気の温度も色も異なる平坦な土地を歩いている時だった。
広場で、街角で、音楽だったり特技だったり絵画だったりの様々なパフォーマンスをしている人を数人、時には数十人が囲んでいる光景は、どの国で見ても楽しい。今頃もしかしたらこんな風に街角に折り畳みチェアを置いて、ギターを膝に乗せているかもしれない友人の一人を想像するからだろうか。ああ、そういえばまた最近連絡を取っていない。
そんなことを思い出したのは、パフォーマンスが何となくちょっと見知ったもので、かつこんなところで『パフォーマンス』として見るとは思わないものだったからだ。
「String figure ですね」
「英語だとString figure って言うのか? なんだかこういうところで路上パフォーマンスとしてやるものって感じがしてなかったから、意外だなあ」
思わず足を止めて呟いてしまえば、一歩半先で止まったリチャードが半身を向けて振り返った。
図形を作ることを指す時は『String Figure』、あやとりをすること自体を指す時は『Cat's cradle』と言うのだと、耳に優しい声が教えてくれる。呼び方が異なるけれど、こちらは手品のような手捌きで指と紐を操って図形を作って見せてくれるパフォーマンスのようだから、『String figure』の方なんだろう。
もちろん、エトランジェの約款のことは今もずっとこの身に染み込んでいる。遊びに性差など関係ないし、夢中になれる、魅せられる技術に年齢も関係ない。
けれど、『あやとり』というと自分の中のイメージは幼稚園とか小学生くらいの女の子たちが長い毛糸の輪っかに指を通して遊んでいる姿だ。そういう時の、女子の間にあるもったりとした濃密で重たい空気感や距離感が子ども心に不思議だったことを、思い出す。
目の前で繰り広げられる指の間で複雑に形作られたカラフルな紐は、見たことがある形もあれば、全く知らないものもある。
勝手に日本の遊びだと思っていたけれど。
無意識に女の子たちがやるものだと思っていたけれど。
「なんだか、手品みたいだなあ」
「ふふ、正真正銘タネも仕掛けもない研鑽された技術の賜物ですが」
「そうだよなあ。うん、すごいなあ」
まだまだ、知らないことばかりだ。
知らなかったことを知れば知るほど、世界は遠く遥かに広がっていく。
そろそろ、と促されるのに頷いて、パフォーマーの近くに置かれたチップ入れに足を向ける。
飛ばないように紙幣をコインで押さえれば、「~~~」すぐ横から声がかかった。
聞き覚えのないそれは、まだ自分が知らない言語の、きっとお礼の言葉。
グレイ混じりの髪と、深く刻まれた笑い皺。
その無骨な手が描いていたのは、美しい形の星だった。
『あやとり』
2022/9/12 Twitter投稿:再掲
動作のお題20
(配布元:追憶の苑 http://farfalle.x0.to/ )
