動作のお題20-05
公開 2023/08/25 11:12
最終更新
2023/10/24 19:24
💎商3部時空 エトラ左右なし
※動作のお題は、お題から想像したイラスト・風景を挿絵にしたらどんな文章になるかと考えて書いていっているシリーズです。
直接動作と関係ない話になっている可能性もありますが、想像上のイラスト(頭の中だけ)からの二重変換のため、ふわっと雰囲気で読んで下さい。
カタカタ カタカタ タンッ
カタカタ カタカタカタ
ほんの少し前に日付を跨いだ自宅のリビングに、小さな打鍵音が響いている。
時々止まって、考えるように同じキーを数回トントンと空押ししてから、またカタカタと連続した音が流れ出す。
防音の効いた部屋には、窓を開けない限り外からの音も入ってこない。
もし窓が開いていたとしても、閑静な住宅街を見下ろすマンションの最上階だ。こんな時間でも途切れることのない街の喧騒が聞こえてくる、なんてこともないだろうが。
ちらりと目をラップトップの端に表示されている時計に向ける。これ以上は心配性の雇用主様に怒られてしまいそうな時間だが、どうしてもやっておきたいところまでは、あと少し。
コツコツコツ
もう少しだけ、キリのいいところまでやったらダッシュでベッドに飛び込むので、と脳内で言い訳していたのが聞こえたのだろうか。
キーボードを叩いている音に混じるくらいの小さな音が、背後にある扉から響いてきた。
「はーい」
「……はーい。ではないでしょう、正義」
「うん、ごめん。わかってる、そろそろ終われってことだよな」
「言われることがわかっている相手に何を言っても仕方のないことですね」
「うっ……でも、本当にあとちょっとだけだから」
「左様で」
開いた扉から覗いた顔は案の定。
働き過ぎだとため息を吐きながらソファーの傍まで進んできたリチャードは、セットされないままのはちみつ色の髪をふわんと揺らして作業中の画面を覗き込んだ。
あとこれだけです、と残ったところを見せれば、面白くなさそうな顔をしながらも一つ二つ首が縦に振れる。
そのまますたすたとソファーを回り込んで。
「ん?」
まず持ち上げられたのは膝の上のラップトップ。
「んん?」
続いて乗せられたのは、何故かこちらを向いたままどかりとソファーの隣に腰掛けたリチャードの長い足。
「んんん?」
最後にやりかけの画面がそのままのラップトップが返ってくる。
「いやいや、リチャードは寝てていいって。今日も忙しかっただろ」
「あなたの気配がずっとここにあると、気になって眠っていられません」
「だからって」
「いいから、早く、終わらせろ」
「…………まったく、こんな行儀悪い格好、みのるくんには見せられないなあ」
「私の沽券を守るのも、優秀な秘書さんの仕事でしょう」
「はいはい」
つんと澄ました物言いに笑ってしまいながら、もう一度画面に目を戻す。
なるべく早く終わらせて、シーツの海に潜りに行こう。
この夜を、少しでも長くするために。
『座る』
2022/9/9 Twitter投稿:再掲
動作のお題20
(配布元:追憶の苑 http://farfalle.x0.to/ )
特に読まなくても問題ない、ちょっといかがわしい続きはポイピク
https://poipiku.com/1059452/7472566.html
※動作のお題は、お題から想像したイラスト・風景を挿絵にしたらどんな文章になるかと考えて書いていっているシリーズです。
直接動作と関係ない話になっている可能性もありますが、想像上のイラスト(頭の中だけ)からの二重変換のため、ふわっと雰囲気で読んで下さい。
カタカタ カタカタ タンッ
カタカタ カタカタカタ
ほんの少し前に日付を跨いだ自宅のリビングに、小さな打鍵音が響いている。
時々止まって、考えるように同じキーを数回トントンと空押ししてから、またカタカタと連続した音が流れ出す。
防音の効いた部屋には、窓を開けない限り外からの音も入ってこない。
もし窓が開いていたとしても、閑静な住宅街を見下ろすマンションの最上階だ。こんな時間でも途切れることのない街の喧騒が聞こえてくる、なんてこともないだろうが。
ちらりと目をラップトップの端に表示されている時計に向ける。これ以上は心配性の雇用主様に怒られてしまいそうな時間だが、どうしてもやっておきたいところまでは、あと少し。
コツコツコツ
もう少しだけ、キリのいいところまでやったらダッシュでベッドに飛び込むので、と脳内で言い訳していたのが聞こえたのだろうか。
キーボードを叩いている音に混じるくらいの小さな音が、背後にある扉から響いてきた。
「はーい」
「……はーい。ではないでしょう、正義」
「うん、ごめん。わかってる、そろそろ終われってことだよな」
「言われることがわかっている相手に何を言っても仕方のないことですね」
「うっ……でも、本当にあとちょっとだけだから」
「左様で」
開いた扉から覗いた顔は案の定。
働き過ぎだとため息を吐きながらソファーの傍まで進んできたリチャードは、セットされないままのはちみつ色の髪をふわんと揺らして作業中の画面を覗き込んだ。
あとこれだけです、と残ったところを見せれば、面白くなさそうな顔をしながらも一つ二つ首が縦に振れる。
そのまますたすたとソファーを回り込んで。
「ん?」
まず持ち上げられたのは膝の上のラップトップ。
「んん?」
続いて乗せられたのは、何故かこちらを向いたままどかりとソファーの隣に腰掛けたリチャードの長い足。
「んんん?」
最後にやりかけの画面がそのままのラップトップが返ってくる。
「いやいや、リチャードは寝てていいって。今日も忙しかっただろ」
「あなたの気配がずっとここにあると、気になって眠っていられません」
「だからって」
「いいから、早く、終わらせろ」
「…………まったく、こんな行儀悪い格好、みのるくんには見せられないなあ」
「私の沽券を守るのも、優秀な秘書さんの仕事でしょう」
「はいはい」
つんと澄ました物言いに笑ってしまいながら、もう一度画面に目を戻す。
なるべく早く終わらせて、シーツの海に潜りに行こう。
この夜を、少しでも長くするために。
『座る』
2022/9/9 Twitter投稿:再掲
動作のお題20
(配布元:追憶の苑 http://farfalle.x0.to/ )
特に読まなくても問題ない、ちょっといかがわしい続きはポイピク
https://poipiku.com/1059452/7472566.html