動作のお題20-02
公開 2023/08/22 11:31
最終更新
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💎商2部以降 エトラ左右なし 正義くんのみ
※動作のお題は、お題から想像したイラスト・風景を挿絵にしたらどんな文章になるかと考えて書いていっているシリーズです。
直接動作と関係ない話になっている可能性もありますが、想像上のイラスト(頭の中だけ)からの二重変換のため、ふわっと雰囲気で読んで下さい。
——あれ。
出張に出かけていくリチャードを見送って、さあこちらも頑張るぞとリビングに戻ると、テーブルの上に一冊の本が置かれていることに気が付いた。
少し前に、リチャードが購入したと言っていた一冊だ。
日々の余暇に、移動の合間に、寝る前にお茶を飲みながら、その背表紙に細い指を添えてページをめくっていた姿は記憶に新しい。
「忘れて……行ったんじゃないよな。しおりが一番前だ」
何気なく手に取って、表紙の一番前にしおりがあることを確認する。
忘れて行ったのではなく、読み終わったものをわざと置いて行ったのであれば、これはあるメッセージだ。
『とても面白い本でしたので、是非。おそらく、あなたもお好きかと。次にお会いした時、感想をお聞かせいただけますと幸甚です』
インターン時代、スリランカで。よくそんなやり取りをした。
もうすでに少し懐かしい気がしてしまうあの白いレジデンスで、ふわりと降ってくる声が好きだった。
視察と言うには頻繁にやってきてくれる麗しの上司様が、テーブルに積んでいってくれる置き土産。
大学時代のホテル住まいの時期、リチャードが持って来てくれる本たちをまさに浴びるように読んで読んで読みまくった結果、こういう話が好みだとか、こういう話は苦手だとか、そういう好みは完全にリチャードに把握されてしまったようだった。
そんなリチャードがわざわざ目につく場所に置いて行く本たちは、いつでも本当に面白い。
そして、リチャード自身の見立てを信用していることもあるけれど。
リチャードは、この話を読んで何を考えたのかとか、どんなところが好きだったんだろうとか。
そんなことを考えながら読む本は、目の前にはいない相手と会話をしているような心地にもなって、より一層楽しく感じる。
ちらりと壁にかけたカレンダーの印に目を向ける。
リチャードの次の戻りは五日後。
それまでに読み終われるだろうか。
いや、慌てて読むのではもったいない。
どうせならゆっくり、この本を読んでいただろうリチャードとも話をしながら。
——ああ、本当に。
「次に会うのが、待ち遠しいなあ」
笑って持ち上げた本の向こう、満足そうに瞳を細めて頷く顔が見えた気がした。
『本を読む』
2022/9/5 Twitter投稿:再掲
動作のお題20
(配布元:追憶の苑 http://farfalle.x0.to/ )
※動作のお題は、お題から想像したイラスト・風景を挿絵にしたらどんな文章になるかと考えて書いていっているシリーズです。
直接動作と関係ない話になっている可能性もありますが、想像上のイラスト(頭の中だけ)からの二重変換のため、ふわっと雰囲気で読んで下さい。
——あれ。
出張に出かけていくリチャードを見送って、さあこちらも頑張るぞとリビングに戻ると、テーブルの上に一冊の本が置かれていることに気が付いた。
少し前に、リチャードが購入したと言っていた一冊だ。
日々の余暇に、移動の合間に、寝る前にお茶を飲みながら、その背表紙に細い指を添えてページをめくっていた姿は記憶に新しい。
「忘れて……行ったんじゃないよな。しおりが一番前だ」
何気なく手に取って、表紙の一番前にしおりがあることを確認する。
忘れて行ったのではなく、読み終わったものをわざと置いて行ったのであれば、これはあるメッセージだ。
『とても面白い本でしたので、是非。おそらく、あなたもお好きかと。次にお会いした時、感想をお聞かせいただけますと幸甚です』
インターン時代、スリランカで。よくそんなやり取りをした。
もうすでに少し懐かしい気がしてしまうあの白いレジデンスで、ふわりと降ってくる声が好きだった。
視察と言うには頻繁にやってきてくれる麗しの上司様が、テーブルに積んでいってくれる置き土産。
大学時代のホテル住まいの時期、リチャードが持って来てくれる本たちをまさに浴びるように読んで読んで読みまくった結果、こういう話が好みだとか、こういう話は苦手だとか、そういう好みは完全にリチャードに把握されてしまったようだった。
そんなリチャードがわざわざ目につく場所に置いて行く本たちは、いつでも本当に面白い。
そして、リチャード自身の見立てを信用していることもあるけれど。
リチャードは、この話を読んで何を考えたのかとか、どんなところが好きだったんだろうとか。
そんなことを考えながら読む本は、目の前にはいない相手と会話をしているような心地にもなって、より一層楽しく感じる。
ちらりと壁にかけたカレンダーの印に目を向ける。
リチャードの次の戻りは五日後。
それまでに読み終われるだろうか。
いや、慌てて読むのではもったいない。
どうせならゆっくり、この本を読んでいただろうリチャードとも話をしながら。
——ああ、本当に。
「次に会うのが、待ち遠しいなあ」
笑って持ち上げた本の向こう、満足そうに瞳を細めて頷く顔が見えた気がした。
『本を読む』
2022/9/5 Twitter投稿:再掲
動作のお題20
(配布元:追憶の苑 http://farfalle.x0.to/ )
