あなたとならばどこへでも
公開 2023/08/13 08:12
最終更新
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💎商2部以降 エトラ左右なし
枕を並べて寝ている距離感
どこかに行こうか。
ぽっかり空いた休みの日の朝、隣の枕に頬杖をついた彼はくふくふと笑ってこちらを見た。
一度起き出した時に開いたらしい窓からは、初夏の午前の涼やかな風が入り込む。
ふわりと揺れたカーテンが作る影が、彼の日に焼けた肌の上を撫でていく。
どこに行きましょうか。
眠気の残る眼をこすりながら、なんとかそれを口にする。
すると、こちらから返事が返ってくるとは思わなかったのだろうか。
きょとんと瞬いた顔が、まだ半分頭に乗ったままのシーツをひょいと持ち上げる。
なんだ、起きていたのかと笑う額を引き寄せて、彼にだけ聞こえるように朝の挨拶を告げる。
二人で一緒に転がれば、明るく爽やかな緑の風が踊る中。
行くならどこがいいかなあ。
あの店にも行ってみたいし、一度あそこを歩いてみたいと思ってたんだ。
行くならどこがいいでしょう。
その店に行くなら、食事をするなら看板が気になっていたあの店で。
そちらに向かう前に、こちらに立ち寄るのも良いかもしれません。
そんなことをシーツの波間で話すうち、ゆっくりと意識が波の彼方へ船を出そうとしている。
せっかく、どこかへ行こうと話をしているというのに。
瞼が落ちるその前に、一言そっと名前を呼んだ。
せいぎ、とだけ呼んだのに、名前の主はどう思ったのだろう。
いつの間にやら、二人そろってゆったりとしたまどろみを揺蕩う船の上。
どこかに行くのではなかったのですか。
瞼が持ち上がらないのは棚に上げて、隣の枕に向かってこぼす。
勝手に少し拗ねた物言いになってしまったのを聞いて、彼は笑う。
どこかに行くんだからいいんじゃないか。
ゆらゆら揺れて運ばれていくその先が、一緒に行きたい場所なんだから、と。
そう言われてみたら、それもいいような気になって。
ふわふわ、ゆらゆら、揺らぐ光の向こうまで。
行きたい場所は『どこか』ではなく
二人でならば、『どこへでも』
『あなたとならばどこへでも』
2022/5/19 Twitter投稿:再掲
枕を並べて寝ている距離感
どこかに行こうか。
ぽっかり空いた休みの日の朝、隣の枕に頬杖をついた彼はくふくふと笑ってこちらを見た。
一度起き出した時に開いたらしい窓からは、初夏の午前の涼やかな風が入り込む。
ふわりと揺れたカーテンが作る影が、彼の日に焼けた肌の上を撫でていく。
どこに行きましょうか。
眠気の残る眼をこすりながら、なんとかそれを口にする。
すると、こちらから返事が返ってくるとは思わなかったのだろうか。
きょとんと瞬いた顔が、まだ半分頭に乗ったままのシーツをひょいと持ち上げる。
なんだ、起きていたのかと笑う額を引き寄せて、彼にだけ聞こえるように朝の挨拶を告げる。
二人で一緒に転がれば、明るく爽やかな緑の風が踊る中。
行くならどこがいいかなあ。
あの店にも行ってみたいし、一度あそこを歩いてみたいと思ってたんだ。
行くならどこがいいでしょう。
その店に行くなら、食事をするなら看板が気になっていたあの店で。
そちらに向かう前に、こちらに立ち寄るのも良いかもしれません。
そんなことをシーツの波間で話すうち、ゆっくりと意識が波の彼方へ船を出そうとしている。
せっかく、どこかへ行こうと話をしているというのに。
瞼が落ちるその前に、一言そっと名前を呼んだ。
せいぎ、とだけ呼んだのに、名前の主はどう思ったのだろう。
いつの間にやら、二人そろってゆったりとしたまどろみを揺蕩う船の上。
どこかに行くのではなかったのですか。
瞼が持ち上がらないのは棚に上げて、隣の枕に向かってこぼす。
勝手に少し拗ねた物言いになってしまったのを聞いて、彼は笑う。
どこかに行くんだからいいんじゃないか。
ゆらゆら揺れて運ばれていくその先が、一緒に行きたい場所なんだから、と。
そう言われてみたら、それもいいような気になって。
ふわふわ、ゆらゆら、揺らぐ光の向こうまで。
行きたい場所は『どこか』ではなく
二人でならば、『どこへでも』
『あなたとならばどこへでも』
2022/5/19 Twitter投稿:再掲
