【ネタバレ】グッドオーメンズ2の感想、アジラフェルとクロウリーの今までのやり取りなども踏まえてのラストなど #GO2Spoilers
公開 2023/08/07 20:34
最終更新
2023/08/16 23:13
※記憶違いがあったら修正する可能性があります。6200字程度。
※2023/08/16追記
ふせったーに載せたものと同じ内容になります。
とても長いので区切ってある部分で休憩して、素敵なお茶(a nice cup of tea)など楽しみつつお読みください。
上司の前で特大の嘘をついたアジラフェルもそのスタンスに慰められた。
しかしクロウリーとアジラフェルは自分が属すならそれぞれ「暗いグレー」と「明るいグレー」を望むと言った。
この時点ですでにラストの決裂は迫っていたのかもしれない。
クロウリーはアジラフェルが善い行いをするためには(多少悪いことをするのも)惜しまないことをよくわかっているし、
子どもを生かすためについた嘘でさえ地獄行きになると落ち込んだアジラフェルを、
クロウリーはそんな少しの罪も犯せない純朴なアジラフェルのことを本当に愛おしいと想っている。
あの反省するアジラフェルを心底楽しそうに見るクロウリーを見ましたか?
身籠ったイヴのために炎の剣を渡したと告白したときも、クロウリーは同じ顔をしていた。
クロウリーも自身が完全に真っ黒な訳では無いことはよくわかっている。
でもだからといって昔のように天使に戻りたいわけじゃない。
自分が創造に関わったこの素晴らしい銀河をたった6000年でぶち壊すなんておかしいと意見しただけで悪とみなされて罰せられただから、天国も地獄も不条理なのには変わりないとよく知っている。
地獄の労働も仕方なくやっていた部分が多い。自分がやれる、嫌だと思わない範囲で悪いことをする。
悪い行いを楽しんでるように見えるときもあるけれど、それは大概 善人の命に関わらないようなことで、実はそこまで悪いことじゃない。せいぜい少し人間やアジラフェルを困らせるくらい。
一方アジラフェルも天国に殺されかけた経験があるから、その不条理さもちゃんとわかっている。でも自らの手で変えられると思っている。
アジラフェルは人々の善性や善い行いを何よりも信じて実行するから。
本当にお手本のような天使の振る舞いをする天使であり、自分だけの天使だから好きなのだ。
二人の関係を妨げてくる面倒な組織の一員として関わり合いたいわけじゃない。
クロウリーはアジラフェルという心の拠り所にいつでも会える、アジラフェルの大好きな物がたくさん詰まっている、二人が安心できるあの本屋を守りたいと思った。でもアジラフェルは天国の改革や善い行いの為ならそんなものをあっさり捨ててしまうと宣言した。永遠はないんだと。
クロウリーはショックだった。二人の大切な場所、思い出の場所、二人の関係も永遠ではないと悟ってしまった。
すべてが解決した暁には、本屋を片付けてアジラフェルを持ち、リッツで浴びるように酒を飲んで二人だけのロマンチックな時間を過ごすはずだった。
クロウリーにとってのハッピーエンドは訪れなかった。
1話のニーナの店でコーヒーを飲むときも、アジラフェルの焦った電話に駆けつけて、ただ事ではないことを察していた。
エスプレッソなんて目が冷めまくる飲み物を6杯も頼んで一気飲みして気合いを入れた。裸の男が本屋にいることを知った。
例えガブリエル以外の男であったとしても、本屋にどこぞの馬の骨が匿われている時点でクロウリーには問題でしかない。
平穏は崩れてしまった。しかしアジラフェルは二人の関係や大切な本屋が脅かされているにも関わらず、あまりにも勇敢すぎた。
アジラフェルもメタトロン相手には二度ほど本屋に対する未練を言いかけていた。しかし自分の大いなる使命のために、その個人的でとても大切な気持ちに蓋をしてしまった。
アジラフェルだってこのクロウリーとの一番の思い出の場所を簡単には手放したくないはずだったのに。(そして大量の貴重な本も。)
クロウリーにほんの少しでも本屋に対する未練があることや、どれだけ「天国とは関係なく」「自分にとってクロウリーが必要か」ということが伝えられていたら…
アジラフェルには必死の「君が必要だ」という言葉でしかクロウリーには伝えられなかった。それが最上級の手段だった。
クロウリーはそれ以上の伝え方を強行するしかなかった。今まで言わなくても通じていると思っていた。どれだけお互いが必要かということを今まで話し合ったことがなかった。二人は6000年の間に周囲の人間を穴が開くほど観察して、映画や本などのフィクションからも知識を得ているから人間についてよく知っている。まるで人間のように。お互いが性愛を伴わない存在だと言うのは承知の上で、クロウリーはこれが愛だとわかる俗にも俗な行為をするしかなかった。天使にはおそらく踏み出せないであろう領域、悪魔だからこそ許される行為、天使に許されなくたっていいと覚悟を決めたキスは、最後の手段だった。
二人で天国へ行き、正式に天国に認められて、一緒に仕事をするという願ってもない理想の生活を望んだ。
まさにアジラフェルにとっての天国だった。
ある意味、結婚を周囲に認められたようなもので、さらには二人でこなした仕事を評価されるという理想すぎる環境を夢見たのかもしれない。
クロウリーにはそんなものどうでも良かった。
周囲に認められようが、られまいが、天国や地獄の物差しでこの関係を勝手に測られることを望まない。
地獄に戻るつもりもないし、天国に協力したつもりもない。ただアジラフェルに協力したかった。
アジラフェルを助けるためなら天使の変装をして天国に潜り込んだりはするけれど、それは天使に戻りたいからじゃない。
クロウリーは二人だけがお互いを信頼しあって、二人だけの世界に行きたいと願っていた。
まるで駆け落ちするかのように。ガブリエルとベルゼブブの前例を見てしまったら尚更。
消えた二人に提案したケンタウルス座で、本当はアジラフェルと共に過ごしたかった。
「月は大気もないし夜を楽しめない。ケンタウルス座か、今がベストシーズンだ。きれいな星雲だしな。見ろよ、馴染みの場所だ。」
「俺は質問しただけなのに、当時は悪だとみなされた。神の偉大な計画ってなんだよ?聞いてるか神様?その偉大な計画を教えてくれよ、わかってる、試すつもりなんだろ、世界を滅ぼすな」―シーズン1の4話、クロウリーのセリフ
(それ以前にどちらかが一方的に認識していた可能性はあるが、少なくともアジラフェルの自己紹介はこのときが初めてだった)
クロウリーが「光あれ」と言い、全てが誕生した。
無邪気なクロウリーはこのまばゆい情景を見て「見ろよ、お前は綺麗だ」と言った。
"Look at you. You are gorgeous."
*gorgeousは豪華や煌びやかみたいな意味。beautifulよりももっと超越した美しさに感激した時に使う。
その時のアジラフェルの表情、「見ろよ」の言葉に反応してついうっかりクロウリーの方を見てしまった。こんな絶景を目の前にしているのにアジラフェルが興味を持ったのはクロウリーの方だった。クロウリーを綺麗だと思ったかもしれないし、自分に言われた言葉のような気もしてついうっとりしてしまった。
これは実質的に銀河レベルの「月が綺麗ですね」である。もしかしたらこのときにはすでに恋に落ちていたのかもしれない。
以前からアジラフェルが一方的にクロウリーのことを知っていたなら、すでに片想いをしていたかもしれないし、話しかける機会をうかがっていたかもしれない。
話しかけられたくて近くを飛んでいた可能性もあるし、むしろクロウリーの方がアジラフェルに話しかける絶好の機会を逃さなかっただけかもしれない。
自分でも奇跡を起こせるのに「自分はジャケットが汚れてしまった事実を知っているから」とペイント弾を消してほしいとお願いしてみたり、
クロウリーの大切なベントレーを二人の所有物だと当たり前に思っていて、(「本屋も私のものだけど君も使ってるだろ」と図星をついて)運転したいと言ってみたり、自分好みの黄色に塗り替えたりクラクションの音を変えてしまったり、
ガブリエルを追い出そうとした件で(謝りに戻ってきてくれた時点で少し嬉しいだろうに)自分が何度もやったことがあるからと謝罪ダンスを要求してみたり…
一番初めの謝罪ダンスは経緯は、へそを曲げ続けてるクロウリーをアジラフェルが笑わせるために踊り始めたとか、あるいはクロウリーがやけくそで「そんなに許してほしいなら得意のダンスを踊ってみろよ」と冗談を言ったら本当に踊ったとか、そんな発端だったりするのだろうか
「俺が最高なことを言ったらあいつは無意識に笑える答えを返してくれる関係性」だとニーナとマギーに話したのは衝撃的だった。今までは自分の内面を他人に話すようなタイプには見えなかったし、話しても無意味だと思っているタイプに見えた。地獄の連中も話し相手にはならないし、アジラフェルのことで悩んでいるならアジラフェルに相談するわけにもいかない。ニーナたちにはかなり心を開いているように見えた。
「突然の雨で雨宿りして、2人が見つめ合えば恋に落ちる」というのはどう考えても実体験としか思えない。
雨や隕石が降れば、お互いどちらかが自然と翼を傘のように相手のばす。
かなりまえに公開された2の先行ビジュアルで相合い傘をしていたのはつまりそういうことだったというわけだ。恋に落ちるため重要な要素、あるいは優しさや想いやり、心が通じ合うことの象徴。
もちろんキリストの処刑を目の当たりにするなどいつも素晴らしいものを見ていた訳では無いが、少なくとも二人で歴史的な瞬間は何度も見届けたことだろう。お互いの役割が似ていたから何度も巡り会ったが、途中から明らかに会いたくて会いに行っていたように見える。
これも神が許したことなのかもしれない。
アジラフェルの表情を見ていると何度もクロウリーに恋に落ちているように思う。クロウリーが自分に(あるいは他人に)優しくした瞬間に恋に落ちる。
クロウリーは恋に落ちる瞬間があるというよりもおそらくずーーーーーーーーーーーーっと一定の愛情をアジラフェルに向けている。あまり見た目では分からないけれど、熟年夫婦のような。
クロウリーの愛はほとんど条件なしの無限の愛情で(何故ならアジラフェルは変わらないから)、アジラフェルはやや条件付きの特大の愛情という違いがあるかもしれない。(クロウリーは素直じゃないから不良が良い事したように見えるギャップがある)
もちろんクロウリーもアジラフェルを特別愛おしい!と思う瞬間はままあると思う。自分にお願いしてくる瞬間、上目遣いでお礼を言う瞬間、自分の前で美味しそうにご飯を食べている瞬間とか。すでに持っている愛情に対して新たな愛情が生まれて積み重なっていく感じ。
クロウリーへの恩返しも兼ねた憧れのウェストエンドの劇場を目の前に自信なさげだったアジラフェルに「ネフェルティティを騙したお前がウェストエンドの舞台に立つんだ。お前がプロじゃなくて誰がプロなんだ?」と太鼓判を押しすぎたからだろう。
*ウェスト・エンド・シアター(West End theatre)は、ロンドンのウェスト・エンド周辺の大規模な「劇場地区」を指す用語である。
劇場や歌劇場なども多く、ニューヨークの"ブロードウェイ"と対照させ、ロンドンのミュージカルを"ウェスト・エンド"(West End theatre)と称することもある。(wikipedia)
クロウリーが予行演習で米兵のマネしたのはそういうことみたいですね。
「手品はもう辞めた方がいい」とステージ後の乾杯で言ったのも、「もう過剰な自信でアジラフェルが死ぬような目にはあってほしくないから」だったり、「大切な人がブーイングを浴びているところを見たくない」という優しさだったのでは。だから誕生日会で久々に手品をやると言い出したときにはあの悪夢を思い出して、本当に困った顔で「やめてくれ」と言った。
もしあの誕生日会でアジラフェルの命に関わるようなことがあってもクロウリーは絶対に命をかけて守ったと思いますけどね。
原作(邦訳)を久々に読み直した。
なんとクロウリーはこの誕生日パーティーで危うく弾丸を喰らうところだったが、アジラフェルのおかげで水鉄砲の水が当たるだけで済んでいた。ニルゲ先生確実に意識してますよねこれ。そう考えるとタッドフィールドの元教会のサバゲフィールドでペイント弾を実弾に変えて遊んだクロウリーはかなりスリリングなことしてるな… ※ただし誰も死なない加護付き
本当に「信頼関係」でしか成立しないステージだった。
悪魔なら当然銃を使ったことがあると思っているアジラフェルと、当然銃なんて使ったことがなかったクロウリー
たぶんギリギリまで言い出せなかったのはアジラフェルに「信頼している君にやって欲しい」とお願いされてしまったから。
本当は銃も撃ったことがないし、人も殺さない優しい悪魔だなんて自分から言い出すのは格好悪いから。
「銃を撃つのが得意な方?」で大勢の軍人が挙手→クロウリーは指名されるまで手を挙げない→奇跡が起こせないことを悟る→袖で必死に説明書を読む→銃の使い方を聞く
この一連の流れのハラハラ感ヤバいですよね…
クロウリーなりにステージに上ってからはニコニコして、白けた会場を盛り上げようとしているのも優しさ。
アジラフェルはその優しさに愛を感じたし、自分のために怒られるクロウリーに恩返しがしたくて手品師の代打を引き受けた。
本当は酒を届けるついでにアジラフェルの大好きな劇場で一緒にショーを見たかっただけかもしれないのに。
クロウリーは自分以外の他人に銃を持たせてアジラフェルを殺させるようなことはしなかった。
アジラフェルも撮られた反逆の証拠をうまくすり替えて二人の危機を逃れた。
このような命懸けの助け合い、愛の循環を日々積み重ねているのかもしれないですね。
だから最終回のラストもいつもの喧嘩の延長線上でしかなくて、時間はかかってもいいから仲直りができるといいんですが……
もしかしたらあのツーショット写真はアジラフェルが大切にとっておいてるかもしれないし、3があったら仲直りのきっかけで写真がポトリと出てくるかもしれない。
※2023/08/16追記
ふせったーに載せたものと同じ内容になります。
とても長いので区切ってある部分で休憩して、素敵なお茶(a nice cup of tea)など楽しみつつお読みください。
◆ #
クロウリーは白黒付けない状態の「グレーも悪くない」と言った。上司の前で特大の嘘をついたアジラフェルもそのスタンスに慰められた。
しかしクロウリーとアジラフェルは自分が属すならそれぞれ「暗いグレー」と「明るいグレー」を望むと言った。
この時点ですでにラストの決裂は迫っていたのかもしれない。
◆ #
地獄を知るクロウリーにとっては、本当に些細で地獄に落ちようがないようなちっぽけな罪でも、いつも真っ白でふわふわなアジラフェルは真正面から落ち込む。クロウリーはアジラフェルが善い行いをするためには(多少悪いことをするのも)惜しまないことをよくわかっているし、
子どもを生かすためについた嘘でさえ地獄行きになると落ち込んだアジラフェルを、
クロウリーはそんな少しの罪も犯せない純朴なアジラフェルのことを本当に愛おしいと想っている。
あの反省するアジラフェルを心底楽しそうに見るクロウリーを見ましたか?
身籠ったイヴのために炎の剣を渡したと告白したときも、クロウリーは同じ顔をしていた。
◇ #
アジラフェルはクロウリーの深いところにある善性を見出している。クロウリーも自身が完全に真っ黒な訳では無いことはよくわかっている。
でもだからといって昔のように天使に戻りたいわけじゃない。
自分が創造に関わったこの素晴らしい銀河をたった6000年でぶち壊すなんておかしいと意見しただけで悪とみなされて罰せられただから、天国も地獄も不条理なのには変わりないとよく知っている。
地獄の労働も仕方なくやっていた部分が多い。自分がやれる、嫌だと思わない範囲で悪いことをする。
悪い行いを楽しんでるように見えるときもあるけれど、それは大概 善人の命に関わらないようなことで、実はそこまで悪いことじゃない。せいぜい少し人間やアジラフェルを困らせるくらい。
一方アジラフェルも天国に殺されかけた経験があるから、その不条理さもちゃんとわかっている。でも自らの手で変えられると思っている。
アジラフェルは人々の善性や善い行いを何よりも信じて実行するから。
◆ #
クロウリーはアジラフェルのそんなところが大好きだけれど、でも彼が「天国に属す天使だから」という理由で好きなわけじゃない。本当にお手本のような天使の振る舞いをする天使であり、自分だけの天使だから好きなのだ。
二人の関係を妨げてくる面倒な組織の一員として関わり合いたいわけじゃない。
クロウリーはアジラフェルという心の拠り所にいつでも会える、アジラフェルの大好きな物がたくさん詰まっている、二人が安心できるあの本屋を守りたいと思った。でもアジラフェルは天国の改革や善い行いの為ならそんなものをあっさり捨ててしまうと宣言した。永遠はないんだと。
クロウリーはショックだった。二人の大切な場所、思い出の場所、二人の関係も永遠ではないと悟ってしまった。
◆ #
思えばクロウリーはアジラフェルが小売店の会合の参加者集めに忙しいときに、本屋にガブリエルがいると寝られない、急に記憶を思い出すかもしれないしそもそも芝居だったら俺もお前も消される、安心できないと、外の店でワインに溺れたあとに弱々しくアジラフェルに語った。クロウリーらしくなかった。あの時すでに「アジラフェルと二人だけの時間がほしい」と伝えようとしていたのかもしれない。2の現在進行形の場面では、二人で乾杯しているロマンチックなシーンが存在しない。アジラフェルはここでクロウリーの誘いとワインを断った。すべてが解決した暁には、本屋を片付けてアジラフェルを持ち、リッツで浴びるように酒を飲んで二人だけのロマンチックな時間を過ごすはずだった。
クロウリーにとってのハッピーエンドは訪れなかった。
1話のニーナの店でコーヒーを飲むときも、アジラフェルの焦った電話に駆けつけて、ただ事ではないことを察していた。
エスプレッソなんて目が冷めまくる飲み物を6杯も頼んで一気飲みして気合いを入れた。裸の男が本屋にいることを知った。
例えガブリエル以外の男であったとしても、本屋にどこぞの馬の骨が匿われている時点でクロウリーには問題でしかない。
平穏は崩れてしまった。しかしアジラフェルは二人の関係や大切な本屋が脅かされているにも関わらず、あまりにも勇敢すぎた。
アジラフェルもメタトロン相手には二度ほど本屋に対する未練を言いかけていた。しかし自分の大いなる使命のために、その個人的でとても大切な気持ちに蓋をしてしまった。
アジラフェルだってこのクロウリーとの一番の思い出の場所を簡単には手放したくないはずだったのに。(そして大量の貴重な本も。)
クロウリーにほんの少しでも本屋に対する未練があることや、どれだけ「天国とは関係なく」「自分にとってクロウリーが必要か」ということが伝えられていたら…
アジラフェルには必死の「君が必要だ」という言葉でしかクロウリーには伝えられなかった。それが最上級の手段だった。
クロウリーはそれ以上の伝え方を強行するしかなかった。今まで言わなくても通じていると思っていた。どれだけお互いが必要かということを今まで話し合ったことがなかった。二人は6000年の間に周囲の人間を穴が開くほど観察して、映画や本などのフィクションからも知識を得ているから人間についてよく知っている。まるで人間のように。お互いが性愛を伴わない存在だと言うのは承知の上で、クロウリーはこれが愛だとわかる俗にも俗な行為をするしかなかった。天使にはおそらく踏み出せないであろう領域、悪魔だからこそ許される行為、天使に許されなくたっていいと覚悟を決めたキスは、最後の手段だった。
◆ #
クロウリーに天使に戻ってほしい、それはアジラフェルの一方的な望みに過ぎない。二人で天国へ行き、正式に天国に認められて、一緒に仕事をするという願ってもない理想の生活を望んだ。
まさにアジラフェルにとっての天国だった。
ある意味、結婚を周囲に認められたようなもので、さらには二人でこなした仕事を評価されるという理想すぎる環境を夢見たのかもしれない。
クロウリーにはそんなものどうでも良かった。
周囲に認められようが、られまいが、天国や地獄の物差しでこの関係を勝手に測られることを望まない。
地獄に戻るつもりもないし、天国に協力したつもりもない。ただアジラフェルに協力したかった。
アジラフェルを助けるためなら天使の変装をして天国に潜り込んだりはするけれど、それは天使に戻りたいからじゃない。
クロウリーは二人だけがお互いを信頼しあって、二人だけの世界に行きたいと願っていた。
まるで駆け落ちするかのように。ガブリエルとベルゼブブの前例を見てしまったら尚更。
消えた二人に提案したケンタウルス座で、本当はアジラフェルと共に過ごしたかった。
「月は大気もないし夜を楽しめない。ケンタウルス座か、今がベストシーズンだ。きれいな星雲だしな。見ろよ、馴染みの場所だ。」
「俺は質問しただけなのに、当時は悪だとみなされた。神の偉大な計画ってなんだよ?聞いてるか神様?その偉大な計画を教えてくれよ、わかってる、試すつもりなんだろ、世界を滅ぼすな」―シーズン1の4話、クロウリーのセリフ
◇ #
天地創造の際に天使だったクロウリーがアジラフェルを呼び止めたのが二人の初めての出会いだったと思われる。(それ以前にどちらかが一方的に認識していた可能性はあるが、少なくともアジラフェルの自己紹介はこのときが初めてだった)
クロウリーが「光あれ」と言い、全てが誕生した。
無邪気なクロウリーはこのまばゆい情景を見て「見ろよ、お前は綺麗だ」と言った。
"Look at you. You are gorgeous."
*gorgeousは豪華や煌びやかみたいな意味。beautifulよりももっと超越した美しさに感激した時に使う。
その時のアジラフェルの表情、「見ろよ」の言葉に反応してついうっかりクロウリーの方を見てしまった。こんな絶景を目の前にしているのにアジラフェルが興味を持ったのはクロウリーの方だった。クロウリーを綺麗だと思ったかもしれないし、自分に言われた言葉のような気もしてついうっとりしてしまった。
これは実質的に銀河レベルの「月が綺麗ですね」である。もしかしたらこのときにはすでに恋に落ちていたのかもしれない。
以前からアジラフェルが一方的にクロウリーのことを知っていたなら、すでに片想いをしていたかもしれないし、話しかける機会をうかがっていたかもしれない。
話しかけられたくて近くを飛んでいた可能性もあるし、むしろクロウリーの方がアジラフェルに話しかける絶好の機会を逃さなかっただけかもしれない。
◇ #
アジラフェルのクロウリーに対して甘えたなところ。自分でも奇跡を起こせるのに「自分はジャケットが汚れてしまった事実を知っているから」とペイント弾を消してほしいとお願いしてみたり、
クロウリーの大切なベントレーを二人の所有物だと当たり前に思っていて、(「本屋も私のものだけど君も使ってるだろ」と図星をついて)運転したいと言ってみたり、自分好みの黄色に塗り替えたりクラクションの音を変えてしまったり、
ガブリエルを追い出そうとした件で(謝りに戻ってきてくれた時点で少し嬉しいだろうに)自分が何度もやったことがあるからと謝罪ダンスを要求してみたり…
一番初めの謝罪ダンスは経緯は、へそを曲げ続けてるクロウリーをアジラフェルが笑わせるために踊り始めたとか、あるいはクロウリーがやけくそで「そんなに許してほしいなら得意のダンスを踊ってみろよ」と冗談を言ったら本当に踊ったとか、そんな発端だったりするのだろうか
「俺が最高なことを言ったらあいつは無意識に笑える答えを返してくれる関係性」だとニーナとマギーに話したのは衝撃的だった。今までは自分の内面を他人に話すようなタイプには見えなかったし、話しても無意味だと思っているタイプに見えた。地獄の連中も話し相手にはならないし、アジラフェルのことで悩んでいるならアジラフェルに相談するわけにもいかない。ニーナたちにはかなり心を開いているように見えた。
「突然の雨で雨宿りして、2人が見つめ合えば恋に落ちる」というのはどう考えても実体験としか思えない。
雨や隕石が降れば、お互いどちらかが自然と翼を傘のように相手のばす。
かなりまえに公開された2の先行ビジュアルで相合い傘をしていたのはつまりそういうことだったというわけだ。恋に落ちるため重要な要素、あるいは優しさや想いやり、心が通じ合うことの象徴。
◆ #
素敵な景色を二人っきりで眺めるというロマンチックな体験を二人は6000年もの間に幾度もすることになる。もちろんキリストの処刑を目の当たりにするなどいつも素晴らしいものを見ていた訳では無いが、少なくとも二人で歴史的な瞬間は何度も見届けたことだろう。お互いの役割が似ていたから何度も巡り会ったが、途中から明らかに会いたくて会いに行っていたように見える。
これも神が許したことなのかもしれない。
アジラフェルの表情を見ていると何度もクロウリーに恋に落ちているように思う。クロウリーが自分に(あるいは他人に)優しくした瞬間に恋に落ちる。
クロウリーは恋に落ちる瞬間があるというよりもおそらくずーーーーーーーーーーーーっと一定の愛情をアジラフェルに向けている。あまり見た目では分からないけれど、熟年夫婦のような。
クロウリーの愛はほとんど条件なしの無限の愛情で(何故ならアジラフェルは変わらないから)、アジラフェルはやや条件付きの特大の愛情という違いがあるかもしれない。(クロウリーは素直じゃないから不良が良い事したように見えるギャップがある)
もちろんクロウリーもアジラフェルを特別愛おしい!と思う瞬間はままあると思う。自分にお願いしてくる瞬間、上目遣いでお礼を言う瞬間、自分の前で美味しそうにご飯を食べている瞬間とか。すでに持っている愛情に対して新たな愛情が生まれて積み重なっていく感じ。
◇ #
アジラフェルがウォーロック坊ちゃまの誕生日パーティーでやたら手品師として自信有りげだった理由がわかった。クロウリーへの恩返しも兼ねた憧れのウェストエンドの劇場を目の前に自信なさげだったアジラフェルに「ネフェルティティを騙したお前がウェストエンドの舞台に立つんだ。お前がプロじゃなくて誰がプロなんだ?」と太鼓判を押しすぎたからだろう。
*ウェスト・エンド・シアター(West End theatre)は、ロンドンのウェスト・エンド周辺の大規模な「劇場地区」を指す用語である。
劇場や歌劇場なども多く、ニューヨークの"ブロードウェイ"と対照させ、ロンドンのミュージカルを"ウェスト・エンド"(West End theatre)と称することもある。(wikipedia)
クロウリーが予行演習で米兵のマネしたのはそういうことみたいですね。
「手品はもう辞めた方がいい」とステージ後の乾杯で言ったのも、「もう過剰な自信でアジラフェルが死ぬような目にはあってほしくないから」だったり、「大切な人がブーイングを浴びているところを見たくない」という優しさだったのでは。だから誕生日会で久々に手品をやると言い出したときにはあの悪夢を思い出して、本当に困った顔で「やめてくれ」と言った。
もしあの誕生日会でアジラフェルの命に関わるようなことがあってもクロウリーは絶対に命をかけて守ったと思いますけどね。
◆追記 #
2023/08/16:原作(邦訳)を久々に読み直した。
なんとクロウリーはこの誕生日パーティーで危うく弾丸を喰らうところだったが、アジラフェルのおかげで水鉄砲の水が当たるだけで済んでいた。ニルゲ先生確実に意識してますよねこれ。そう考えるとタッドフィールドの元教会のサバゲフィールドでペイント弾を実弾に変えて遊んだクロウリーはかなりスリリングなことしてるな… ※ただし誰も死なない加護付き
◆ #
奇跡ブロッカーによってクロウリーは人間的な意味での奇跡を起こすしかなかった。本当に「信頼関係」でしか成立しないステージだった。
悪魔なら当然銃を使ったことがあると思っているアジラフェルと、当然銃なんて使ったことがなかったクロウリー
たぶんギリギリまで言い出せなかったのはアジラフェルに「信頼している君にやって欲しい」とお願いされてしまったから。
本当は銃も撃ったことがないし、人も殺さない優しい悪魔だなんて自分から言い出すのは格好悪いから。
「銃を撃つのが得意な方?」で大勢の軍人が挙手→クロウリーは指名されるまで手を挙げない→奇跡が起こせないことを悟る→袖で必死に説明書を読む→銃の使い方を聞く
この一連の流れのハラハラ感ヤバいですよね…
クロウリーなりにステージに上ってからはニコニコして、白けた会場を盛り上げようとしているのも優しさ。
◆ #
クロウリーはアジラフェルと大切な本を守ることしか考えられず、キャバレーに届けるはずだった酒を自分が落とした爆弾でうっかり壊してしまった。アジラフェルはその優しさに愛を感じたし、自分のために怒られるクロウリーに恩返しがしたくて手品師の代打を引き受けた。
本当は酒を届けるついでにアジラフェルの大好きな劇場で一緒にショーを見たかっただけかもしれないのに。
クロウリーは自分以外の他人に銃を持たせてアジラフェルを殺させるようなことはしなかった。
アジラフェルも撮られた反逆の証拠をうまくすり替えて二人の危機を逃れた。
このような命懸けの助け合い、愛の循環を日々積み重ねているのかもしれないですね。
だから最終回のラストもいつもの喧嘩の延長線上でしかなくて、時間はかかってもいいから仲直りができるといいんですが……
もしかしたらあのツーショット写真はアジラフェルが大切にとっておいてるかもしれないし、3があったら仲直りのきっかけで写真がポトリと出てくるかもしれない。
体が弱い絵描き。
最近は文字を書く方が得意かもしれないと思い始めた。
お散歩中の犬とすれ違うことが喜び。
@tyato24
https://lit.link/tyato24
最近は文字を書く方が得意かもしれないと思い始めた。
お散歩中の犬とすれ違うことが喜び。
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