ファッションショーは総合芸術ということを知った
公開 2026/02/04 21:37
最終更新
2026/02/04 21:45
パリで開催されたルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)の2026-27年秋冬メンズコレクションのライブ配信を観て、関連動画でたまたま再生された他のブランドのショーも鑑賞した。音楽は絶対にショーに欠かせない要素であり、演出にも工夫が凝らされている。ファッションショーは総合芸術、マルチエンターテインメントなのだと実感し、強く興味を惹かれた。そこでパリ・ファッションウィークで開催される他のブランドのショーも観てみたいと思い、各ブランドの公式YouTubeで観られるものを全て鑑賞することにした。
視聴したのは44ブランド。その中でも特に印象深かったものを紹介したい。
ジャンヌ フリオ(Jeanne Friot)
フランス発のユニセックスブランド。驚いたのは、モデルよりもダンサーが主役を張っていた点だ。コレクションを纏ったプロのダンサーたちが激しく舞う合間を縫うように、モデルのウォーキングが挟み込まれる。デザインや配色からはパンク精神が漂い、女性同士のキスシーンが含まれるなど、非常に強いメッセージ性を放つステージだった。
エチュード スタジオ(Études Studio)
出版社とファッションブランドが統合・進化したユニークな背景を持つブランド。2本のランウェイの中央にDJブースが鎮座し、ショーの進行に合わせたライブセットを披露するスタイルが新鮮だ。YouTubeの公式動画では、DJブースが映る瞬間だけVHS風のノイズ加工が施されており、映像作品としてのこだわりも感じられた。
キディル(KIDILL)
デザイナー末安弘明氏が2014年に立ち上げた日本ブランド。
BGMはマブ論に出てきそうなアイドル的要素があり、中田ヤスタカさんを彷彿とさせる日本語の曲だった。ショーの終盤には曲から小鳥のさえずりへとBGMが変化し、最後に登場したモデルは布で作られたぬいぐるみのような大きな白い翼を背負っている。鳥のさえずりも相まって、光が差してきたようなイメージすら感じられた。ランウェイにストーリー性が感じられる構成だ。モデル全員が布で作られたドレッドヘア風の同じウィッグを着用していたのも印象深い。
ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)
やはり他の老舗ブランドと比べても、ショーのエンターテイメント性が際立っている。さすがファレル・ウィリアムスだ。視覚と聴覚、両方で楽しませてくれる演出。コレクションそのものも見応えがあり、会場全体の世界観も作り込まれていて、まるで不思議の国のアリスのようにルイ・ヴィトンの世界に迷い込んだ気分になる。BGMも「後からどの曲が楽曲としてリリースされるのだろう」と期待させる仕掛けになっており、それもこのショーの魅力のひとつだ。
ソリッド オム(Solid Homme)
韓国のメンズウェアのパイオニアとして国際的に知られるWoo Young Mi(ウー・ヨンミ)が1988年に設立した韓国発のメンズブランド。
真ん中に白い廊下があり、左右には照明が暗いオフィスと工具が置かれた部屋が配置されている。観客はオフィス側の壁際と工具部屋側の壁際にそれぞれ着席した。モデルはオフィスから登場して廊下を少し歩き、工具部屋へと吸い込まれていく。フィナーレでは廊下をピンホールから覗いているような画角に切り替わり、廊下に背を向けてオフィス側の出入口と工具部屋の出入口にモデルが立ち、ショーは幕を閉じた。
スリーパラディ(3.PARADIS)
2013年にエメリック・チャチュアが設立した、パリ拠点のハイエンド・ストリートブランド。公園を会場に選び、階段を活かした構成が面白い。日本人モデル・ケンメイ氏のVlogで舞台裏も拝見したのだが、ショーの映像で途中に挿入される談笑シーンはなんと当日の朝に撮影されたものだという。10:30スタートなのに慌ただしかっただろうと想像できる。しかし、MVのように仕上がった映像は非常に見応えがあった。フィナーレでもデザイナーを先頭に歩くモデルたちが楽しそうな雰囲気を醸し出していた。
ルメール(LEMAIRE)
元エルメスのデザイナー、クリストフ・ルメールとサラ=リン・トランが率いるパリのファッションブランド。真っすぐなランウェイではなく、半円のステージ。ホリゾント幕に2か所の出入口があり、そこからモデルが登場する。少しステージ上を歩いて、また幕の内側へ消えていく。時折、客席の合間を抜けて劇場の階段を上っていくモデルも見られた。それぞれが決まった同じ動きをしないため、従来のファッションショーというより、現代アートの「パフォーマンス・アート」を鑑賞しているかのようだった。
カンペールラボ(CAMPERLAB)
スペイン発ブランド カンペール(Camper)による、2015年に誕生したの若者向けセカンドライン。
会場の中央には、天井から円柱型の白い布が吊るされていた。その周囲を巡るランウェイで、モデルたちはウォーキング後に布の内側へ入り、円周に沿ってポージング。ショー中はスピリチュアルジャズのような環境音楽が流れる。最後のモデルのウォーキングが終わると会場は暗転し、中心の円柱型の布が赤いライトで照らし出された。そして最後のモデルでもあったミュージシャンによるギター弾き語りが始まる。演奏の終盤、布の内側にいたモデルたちがランウェイを逆回りにウォーキングして退場していった。
ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)
デザイナー山本耀司が手掛ける、黒を基調としたドレープや流れるようなシルエットが特徴の日本を代表するモードブランド。
ランウェイの折り返し地点には黒いパンチングボールが設置されており、モデルたちはパンチしてから折り返していく演出だ。ショーミュージックは中島みゆきの「ファイト」のカバー曲。短いランウェイながら、強烈に印象に残るショーとなった。
ウィリーチャバリア(WILLY CHAVARRIA)
アメリカ・ニューヨークを拠点に活動するデザイナー、ウィリー・チャバリアによるメンズウェアブランド。
会場の床には道路のように横断歩道や道路標示が描かれ、車、ベッドルームのようなセット、電話ボックス、カフェのテラス席、ベンチとバス停なども配置されていた。セットで作られた街角では、歌手がその場でライブパフォーマンスを披露。モデルたちは道路のようなランウェイを縦横無尽に行き交う。ファッションショーというより、まるで映画のワンシーンを観ているようだった。
ワイスリー(Y-3)
adidasのスポーツにおける専門的な技術・機能とYohji Yamamotoのデザインが融合したスポーツファッションブランド。
ショーの冒頭、会場の照明は落とされ、バラクラバを被った黒衣装のダンサーたちが踊っていた。灯台の明かりのように、ライトが定期的にダンサーを照らし出す。モデルのウォーキングが始まると照明は少し明るくなり、ダンサーたちは動きを止めるが、モデルが彼らの間を通過するたびに各々ポーズを変えていく。しばらくすると、ダンサーたちはバラクラバを脱ぎ、ランウェイの様々な位置へ散らばった。時折立ち位置を変え、常に動きがある演出だ。モデルがウォーキングするのは床に設置された黒い3本ラインの上。これだけでブランドを表現しているのがスタイリッシュだ。3本ライン以外にも不思議な段差がいくつも設置されており、モデルは上がったり下がったり、スロープを歩いたりする。これは靴の機能性を見せるための演出なのだろうか。
【メモ】
コレクションを気に入ったのは、韓国発のファッションブランドであるシステム(SYSTEM)。
ベルギー・アントワープ発のドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)は、ショー自体はシンプルな構成だったものの、ショーミュージックに1969年の浅川マキによるブルース「夜が明けたら」が使われていた。日本語の歌詞と楽曲の持つ力強さが相まって、ショー全体が鮮明に記憶に刻まれた。
マリアーノ(MAGLIANO)は、ショーミュージックが生演奏の口笛。斬新すぎると個人的に思ったけど、YouTubeでは「ああ…すごく変!口笛の音が気に入らなかったので音を消しました。」というコメントがあって、いいねが付いていたので万人受けしない演出だったかも。
エルメス(HERMES)。ショー自体の演出については特筆すべき点はないものの、天井から吊るされた複数のモニターが印象的だった。前後左右の方向を向いたモニターは、天井付近が暗いためまるで宙に浮いているように見える。会場のパリ旧証券取引所の重厚な建築とは不釣り合いで、SFのような雰囲気すら漂っていた。ちなみに今回のショーは、30年以上にわたりブランドを手掛けてきたデザイナーのフィナーレでもあったそうだ。
ファッションショーは華やかで、コレクションもフロントロウの招待客であるセレブリティもキラキラした世界だ。その一方で、出演する側のモデルのVlogでキャスティングへの挑戦を観ていると、その現実は非常にシビアである。きっとコレクションを制作している裏方も、ショーが近づくにつれて殺伐とした空気の中で働いているのだろう。たくさんの人間のぶつかり合いで、それぞれのブランドのショーが作られているのだと思うと、表の部分だけを観て「素晴らしい」と一言で片付けることはできないと感じた。
視聴したのは44ブランド。その中でも特に印象深かったものを紹介したい。
ジャンヌ フリオ(Jeanne Friot)
フランス発のユニセックスブランド。驚いたのは、モデルよりもダンサーが主役を張っていた点だ。コレクションを纏ったプロのダンサーたちが激しく舞う合間を縫うように、モデルのウォーキングが挟み込まれる。デザインや配色からはパンク精神が漂い、女性同士のキスシーンが含まれるなど、非常に強いメッセージ性を放つステージだった。
エチュード スタジオ(Études Studio)
出版社とファッションブランドが統合・進化したユニークな背景を持つブランド。2本のランウェイの中央にDJブースが鎮座し、ショーの進行に合わせたライブセットを披露するスタイルが新鮮だ。YouTubeの公式動画では、DJブースが映る瞬間だけVHS風のノイズ加工が施されており、映像作品としてのこだわりも感じられた。
キディル(KIDILL)
デザイナー末安弘明氏が2014年に立ち上げた日本ブランド。
BGMはマブ論に出てきそうなアイドル的要素があり、中田ヤスタカさんを彷彿とさせる日本語の曲だった。ショーの終盤には曲から小鳥のさえずりへとBGMが変化し、最後に登場したモデルは布で作られたぬいぐるみのような大きな白い翼を背負っている。鳥のさえずりも相まって、光が差してきたようなイメージすら感じられた。ランウェイにストーリー性が感じられる構成だ。モデル全員が布で作られたドレッドヘア風の同じウィッグを着用していたのも印象深い。
ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)
やはり他の老舗ブランドと比べても、ショーのエンターテイメント性が際立っている。さすがファレル・ウィリアムスだ。視覚と聴覚、両方で楽しませてくれる演出。コレクションそのものも見応えがあり、会場全体の世界観も作り込まれていて、まるで不思議の国のアリスのようにルイ・ヴィトンの世界に迷い込んだ気分になる。BGMも「後からどの曲が楽曲としてリリースされるのだろう」と期待させる仕掛けになっており、それもこのショーの魅力のひとつだ。
ソリッド オム(Solid Homme)
韓国のメンズウェアのパイオニアとして国際的に知られるWoo Young Mi(ウー・ヨンミ)が1988年に設立した韓国発のメンズブランド。
真ん中に白い廊下があり、左右には照明が暗いオフィスと工具が置かれた部屋が配置されている。観客はオフィス側の壁際と工具部屋側の壁際にそれぞれ着席した。モデルはオフィスから登場して廊下を少し歩き、工具部屋へと吸い込まれていく。フィナーレでは廊下をピンホールから覗いているような画角に切り替わり、廊下に背を向けてオフィス側の出入口と工具部屋の出入口にモデルが立ち、ショーは幕を閉じた。
スリーパラディ(3.PARADIS)
2013年にエメリック・チャチュアが設立した、パリ拠点のハイエンド・ストリートブランド。公園を会場に選び、階段を活かした構成が面白い。日本人モデル・ケンメイ氏のVlogで舞台裏も拝見したのだが、ショーの映像で途中に挿入される談笑シーンはなんと当日の朝に撮影されたものだという。10:30スタートなのに慌ただしかっただろうと想像できる。しかし、MVのように仕上がった映像は非常に見応えがあった。フィナーレでもデザイナーを先頭に歩くモデルたちが楽しそうな雰囲気を醸し出していた。
ルメール(LEMAIRE)
元エルメスのデザイナー、クリストフ・ルメールとサラ=リン・トランが率いるパリのファッションブランド。真っすぐなランウェイではなく、半円のステージ。ホリゾント幕に2か所の出入口があり、そこからモデルが登場する。少しステージ上を歩いて、また幕の内側へ消えていく。時折、客席の合間を抜けて劇場の階段を上っていくモデルも見られた。それぞれが決まった同じ動きをしないため、従来のファッションショーというより、現代アートの「パフォーマンス・アート」を鑑賞しているかのようだった。
カンペールラボ(CAMPERLAB)
スペイン発ブランド カンペール(Camper)による、2015年に誕生したの若者向けセカンドライン。
会場の中央には、天井から円柱型の白い布が吊るされていた。その周囲を巡るランウェイで、モデルたちはウォーキング後に布の内側へ入り、円周に沿ってポージング。ショー中はスピリチュアルジャズのような環境音楽が流れる。最後のモデルのウォーキングが終わると会場は暗転し、中心の円柱型の布が赤いライトで照らし出された。そして最後のモデルでもあったミュージシャンによるギター弾き語りが始まる。演奏の終盤、布の内側にいたモデルたちがランウェイを逆回りにウォーキングして退場していった。
ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)
デザイナー山本耀司が手掛ける、黒を基調としたドレープや流れるようなシルエットが特徴の日本を代表するモードブランド。
ランウェイの折り返し地点には黒いパンチングボールが設置されており、モデルたちはパンチしてから折り返していく演出だ。ショーミュージックは中島みゆきの「ファイト」のカバー曲。短いランウェイながら、強烈に印象に残るショーとなった。
ウィリーチャバリア(WILLY CHAVARRIA)
アメリカ・ニューヨークを拠点に活動するデザイナー、ウィリー・チャバリアによるメンズウェアブランド。
会場の床には道路のように横断歩道や道路標示が描かれ、車、ベッドルームのようなセット、電話ボックス、カフェのテラス席、ベンチとバス停なども配置されていた。セットで作られた街角では、歌手がその場でライブパフォーマンスを披露。モデルたちは道路のようなランウェイを縦横無尽に行き交う。ファッションショーというより、まるで映画のワンシーンを観ているようだった。
ワイスリー(Y-3)
adidasのスポーツにおける専門的な技術・機能とYohji Yamamotoのデザインが融合したスポーツファッションブランド。
ショーの冒頭、会場の照明は落とされ、バラクラバを被った黒衣装のダンサーたちが踊っていた。灯台の明かりのように、ライトが定期的にダンサーを照らし出す。モデルのウォーキングが始まると照明は少し明るくなり、ダンサーたちは動きを止めるが、モデルが彼らの間を通過するたびに各々ポーズを変えていく。しばらくすると、ダンサーたちはバラクラバを脱ぎ、ランウェイの様々な位置へ散らばった。時折立ち位置を変え、常に動きがある演出だ。モデルがウォーキングするのは床に設置された黒い3本ラインの上。これだけでブランドを表現しているのがスタイリッシュだ。3本ライン以外にも不思議な段差がいくつも設置されており、モデルは上がったり下がったり、スロープを歩いたりする。これは靴の機能性を見せるための演出なのだろうか。
【メモ】
コレクションを気に入ったのは、韓国発のファッションブランドであるシステム(SYSTEM)。
ベルギー・アントワープ発のドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)は、ショー自体はシンプルな構成だったものの、ショーミュージックに1969年の浅川マキによるブルース「夜が明けたら」が使われていた。日本語の歌詞と楽曲の持つ力強さが相まって、ショー全体が鮮明に記憶に刻まれた。
マリアーノ(MAGLIANO)は、ショーミュージックが生演奏の口笛。斬新すぎると個人的に思ったけど、YouTubeでは「ああ…すごく変!口笛の音が気に入らなかったので音を消しました。」というコメントがあって、いいねが付いていたので万人受けしない演出だったかも。
エルメス(HERMES)。ショー自体の演出については特筆すべき点はないものの、天井から吊るされた複数のモニターが印象的だった。前後左右の方向を向いたモニターは、天井付近が暗いためまるで宙に浮いているように見える。会場のパリ旧証券取引所の重厚な建築とは不釣り合いで、SFのような雰囲気すら漂っていた。ちなみに今回のショーは、30年以上にわたりブランドを手掛けてきたデザイナーのフィナーレでもあったそうだ。
ファッションショーは華やかで、コレクションもフロントロウの招待客であるセレブリティもキラキラした世界だ。その一方で、出演する側のモデルのVlogでキャスティングへの挑戦を観ていると、その現実は非常にシビアである。きっとコレクションを制作している裏方も、ショーが近づくにつれて殺伐とした空気の中で働いているのだろう。たくさんの人間のぶつかり合いで、それぞれのブランドのショーが作られているのだと思うと、表の部分だけを観て「素晴らしい」と一言で片付けることはできないと感じた。
