現パロ俳優ジェフティナ第二話の始め
公開 2024/01/24 17:57
最終更新
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『星のゆく先』というタイトルのTVドラマが大流行したのは、今からちょうど十年前のことだ。
記憶を失った天涯孤独のヒロインが、様々な出逢いと別れを経て自らの宿命に立ち向かうロードムービー仕立てのストーリーで、TVドラマながらそこらの映画に勝るとも劣らない壮大な映像演出、そして主演の女優ティナ・Bの天才的な演技は全ての視聴者の胸を震わせ、涙させた。
華々しくデビューを飾った地方の小劇団出身の十七歳の少女に、誰もが夢中になった。
当時七歳の俺も、ドラマの放送時間の五分前にはテレビの前に陣取り、両親やマッシュを呆れさせたものだ。
ティナの演技のひとつひとつに、俺は心の底から惹かれていた。
ティナが幸せそうに微笑むシーンでは、まるで自分に微笑みが向けられている様に頬が熱くなり、ティナが土砂降りの雨の中一人で絶望に涙するシーンでは、まるで自分のことのように胸が痛くなったものだ。
毎週のようにドラマの放送後は泣き腫らした目元を拭う俺を見て、弟はよく笑ったものだ―――
―――兄貴はホントにティナが大好きなんだな!
そうだ。
ファン、憧れ、そんなものではない。
紛れもなく初恋だった。
そして、それは今も。
ドラマが最終回を迎えた後も、女優ティナ・Bを目にしない日はなかった。
急遽制作された『星のゆく先』の劇場版も当然のように大ヒット。
雑誌の表紙はティナ一色、テレビCMでも街の看板広告でも、いつどこを見てもティナ・Bは可憐な微笑みを見せてくれていた。
俺は彼女の足跡を追い掛けるように、それらの看板をカメラに収め、買い漁った雑誌や小さな新聞記事さえも切り抜いてスクラップした。
いつか自分も、彼女と同じ舞台に立ちたい。
彼女のように、見る者の心を幸福感でいっぱいにできるような演技がしたい。
始まりは単なる子供の夢にすぎなかった。
それでも、その夢は年月を経ても褪せるどころか、確かな目標として俺の中に根付いていった。
だが―――
華々しいデビューから、五年。
ティナ・Bの姿は、表舞台からぱたりと消えた。
デビュー時に所属していた劇団から大手芸能事務所への移籍が決まった、そんな話がワイドショーを数日賑わせたっきり―――
あれほど日々あちこちで見かけていたティナの姿は、完全に消えてしまったのだ。
新聞も、週刊誌も、どこを探しても、名前さえも見当たらなかった。
彼女はどこに行ってしまったんだろう。
引退してしまったのだろうか。
誰か良い人と結婚して、家庭を築いて…
いや、だがあれほど活躍した女優が引退したのなら、新聞や何かしらの媒体で記事になる筈だ。
ほんとうに消えてしまった。
まるで総てが夢であったかのように。
俺にはもう、彼女の足跡を追う手段は何もなかった。
だけど、それでも俺は。
『…マッシュ。やっぱり、俺は役者を目指すよ。親父の期待を裏切るのは、悪いと思ってるけど…』
『良いと思うぜ!親父の仕事は俺が継ぐ。それでいつか、兄貴が主役の映画に俺が技術屋として関わるんだ。サイコーの親孝行になるさ!』
七歳の俺の夢は色褪せることなく、十五歳の俺の揺るがぬ目標になった。
まずは都心に出てみよう。
彼女と同じ世界に飛び込んでみれば、いつかまた彼女の足跡を見付けられるかもしれない―――
▽
記憶を失った天涯孤独のヒロインが、様々な出逢いと別れを経て自らの宿命に立ち向かうロードムービー仕立てのストーリーで、TVドラマながらそこらの映画に勝るとも劣らない壮大な映像演出、そして主演の女優ティナ・Bの天才的な演技は全ての視聴者の胸を震わせ、涙させた。
華々しくデビューを飾った地方の小劇団出身の十七歳の少女に、誰もが夢中になった。
当時七歳の俺も、ドラマの放送時間の五分前にはテレビの前に陣取り、両親やマッシュを呆れさせたものだ。
ティナの演技のひとつひとつに、俺は心の底から惹かれていた。
ティナが幸せそうに微笑むシーンでは、まるで自分に微笑みが向けられている様に頬が熱くなり、ティナが土砂降りの雨の中一人で絶望に涙するシーンでは、まるで自分のことのように胸が痛くなったものだ。
毎週のようにドラマの放送後は泣き腫らした目元を拭う俺を見て、弟はよく笑ったものだ―――
―――兄貴はホントにティナが大好きなんだな!
そうだ。
ファン、憧れ、そんなものではない。
紛れもなく初恋だった。
そして、それは今も。
ドラマが最終回を迎えた後も、女優ティナ・Bを目にしない日はなかった。
急遽制作された『星のゆく先』の劇場版も当然のように大ヒット。
雑誌の表紙はティナ一色、テレビCMでも街の看板広告でも、いつどこを見てもティナ・Bは可憐な微笑みを見せてくれていた。
俺は彼女の足跡を追い掛けるように、それらの看板をカメラに収め、買い漁った雑誌や小さな新聞記事さえも切り抜いてスクラップした。
いつか自分も、彼女と同じ舞台に立ちたい。
彼女のように、見る者の心を幸福感でいっぱいにできるような演技がしたい。
始まりは単なる子供の夢にすぎなかった。
それでも、その夢は年月を経ても褪せるどころか、確かな目標として俺の中に根付いていった。
だが―――
華々しいデビューから、五年。
ティナ・Bの姿は、表舞台からぱたりと消えた。
デビュー時に所属していた劇団から大手芸能事務所への移籍が決まった、そんな話がワイドショーを数日賑わせたっきり―――
あれほど日々あちこちで見かけていたティナの姿は、完全に消えてしまったのだ。
新聞も、週刊誌も、どこを探しても、名前さえも見当たらなかった。
彼女はどこに行ってしまったんだろう。
引退してしまったのだろうか。
誰か良い人と結婚して、家庭を築いて…
いや、だがあれほど活躍した女優が引退したのなら、新聞や何かしらの媒体で記事になる筈だ。
ほんとうに消えてしまった。
まるで総てが夢であったかのように。
俺にはもう、彼女の足跡を追う手段は何もなかった。
だけど、それでも俺は。
『…マッシュ。やっぱり、俺は役者を目指すよ。親父の期待を裏切るのは、悪いと思ってるけど…』
『良いと思うぜ!親父の仕事は俺が継ぐ。それでいつか、兄貴が主役の映画に俺が技術屋として関わるんだ。サイコーの親孝行になるさ!』
七歳の俺の夢は色褪せることなく、十五歳の俺の揺るがぬ目標になった。
まずは都心に出てみよう。
彼女と同じ世界に飛び込んでみれば、いつかまた彼女の足跡を見付けられるかもしれない―――
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