現パロ俳優ジェフティナ※導入
公開 2023/12/23 23:08
最終更新
2023/12/24 08:52
その俳優が一歩スタジオの外に足を踏み出した瞬間、屋外に待機していた十数名のスチールカメラマンが一斉にフラッシュを焚いた。
同時にテレビクルーも負けじとバッテリーライトを灯す。
夕暮れ時というのに、その場だけまるで昼間のように明るくなった。
「お疲れ様ですジェフさん!初の主演映画がロングランヒット、誠におめでとうございます!」
光の渦の中心で片手を挙げてポーズを取る若き俳優ジェフ・ロニに、女性のテレビレポーターが先陣を切ってマイクを向けた。
たちまちその他の記者たちも追随し、我先にとジェフにマイクを突き付けぐるりと取り囲む。
「ご自身初の主演映画が記録づくめの大ヒットです!今のお気持ちはいかがでしょうか?」
「世界最高峰の映画賞での主演男優賞の最有力候補と目されておりますが、ご自身としての手応えは?」
大声で捲し立てられる質問の数々に、ジェフはひとつひとつ丁寧に応じている。
すらりとしたスタイルが良く映える濃紺のスーツに、ワインレッドのネクタイ。
二十二歳の若手俳優の佇まいは実に堂々としたもので、彼が今後俳優として益々大成するであろうことを場にいる取材陣全員が予感した。
だが―――
「先週報じられたティナ・Bさんとの交際は、その後順調ですか?」
―――ふいに女性記者が投げかけた一つの質問が、落ち着いていた彼の表情を年相応のそれに引き戻した。
「……ああ。それについては…」
緩んだ口元を慌てて利き手で隠すジェフに向けて、一層激しいフラッシュの雨が降り注いだ。本人は悟られまいとしている様だが、この若手俳優が照れまくっているのは場にいる誰の目にも明らかである。
彼と、往年の大女優ティナ・Bとの熱愛報道は、報じられた瞬間に世間をあっと言わせた一大スクープであった。
第一報が出て以来いまだに本人たちからの言及は無いものの、週刊誌やワイドショーは結婚秒読みなどと一方的に囃し立てている。
双方のファンの間にも動揺は広がりつつも、結局は世間の誰もがお似合いだと口を揃える美男美女のビッグカップルだ。
ジェフはフラッシュが収まるのを見計らい、やはり照れ臭さを消しきれない微笑みを正面のテレビカメラに向けた。
「お騒がせしてしまい申し訳ない。ですが近いうちに、彼女と二人で会見の場を設ける予定ですので―――
ぜひ、楽しみにしていてください」
それは、見事な交際宣言に違いなかった。
▽
「はーっ、堂々としたもんだな!流石人気絶頂の俳優ジェフくんだぜ」
お見それしましたよ、そう続けながらロックがカウンター席でテレビに向かって親指を立てた。
街角にある小さなカフェは仕事帰りの寄り道目的で立ち寄ったビジネスマンがテーブル席に一組いるのみで、カウンター席には勝手知ったる常連が二名、我が物顔で寛いでいる。
オーナーのダリルは苦笑いを浮かべ、ロックの手前にブラックコーヒーの並々注がれたアンティークカップを差し出した。
「もう最初のスクープから一週間も経ったし、本人たちも今更慌てる事じゃないって感じよね。大体アンタ、ここで油売ってて良いの?本当ならアンタも今日の囲み取材に行く筈だったんじゃ」
「ちっちっち!今日のインタビューは後輩に任せてるのさ。なにしろ俺には、もっととんでもない大仕事が控えてるからな」
「兄貴とティナの結婚会見で代表質問するんだろ?役得だよなー」
ロックの隣の席でジンジャーエールをぐいと煽り、マッシュが豪快に笑った。
「俺も当日カメラ担いで行く予定だから。宜しく頼むぜ」
「なあんだ、しっかり内輪で算段付いてるってわけ。セッツァーも抜け目ない仕事するわよね」
そう言いながらダリルは、カウンターの縁に飾られた写真立てを手に取った。
写真の日付は、三年前の夏の日。
このカフェの店先で撮影された仲間たちの集合写真だ。
オーナーのダリルの横で腕組みをするセッツァー、満面の笑みでピースサインのロックとマッシュ。劇団女優のセリスも、サングラスをずらして微笑んでいる。
そして彼らに囲まれ笑顔を見せるのは、若き日の女優ティナ・Bと、俳優ジェフ・ロニ―――
「ジェフ……エドガーもティナも、ここまで色々あったものね。これからはうんと幸せになってほしいわ」
写真立てのガラス面を大切そうに指先で撫で、ダリルは呟く。
始まりは五年前。
この集合写真から更に二年遡った、ある春の日だ。
当時十七歳のエドガーと、二十二歳のティナの物語は、正にこのカフェで始まったのだ―――
続
同時にテレビクルーも負けじとバッテリーライトを灯す。
夕暮れ時というのに、その場だけまるで昼間のように明るくなった。
「お疲れ様ですジェフさん!初の主演映画がロングランヒット、誠におめでとうございます!」
光の渦の中心で片手を挙げてポーズを取る若き俳優ジェフ・ロニに、女性のテレビレポーターが先陣を切ってマイクを向けた。
たちまちその他の記者たちも追随し、我先にとジェフにマイクを突き付けぐるりと取り囲む。
「ご自身初の主演映画が記録づくめの大ヒットです!今のお気持ちはいかがでしょうか?」
「世界最高峰の映画賞での主演男優賞の最有力候補と目されておりますが、ご自身としての手応えは?」
大声で捲し立てられる質問の数々に、ジェフはひとつひとつ丁寧に応じている。
すらりとしたスタイルが良く映える濃紺のスーツに、ワインレッドのネクタイ。
二十二歳の若手俳優の佇まいは実に堂々としたもので、彼が今後俳優として益々大成するであろうことを場にいる取材陣全員が予感した。
だが―――
「先週報じられたティナ・Bさんとの交際は、その後順調ですか?」
―――ふいに女性記者が投げかけた一つの質問が、落ち着いていた彼の表情を年相応のそれに引き戻した。
「……ああ。それについては…」
緩んだ口元を慌てて利き手で隠すジェフに向けて、一層激しいフラッシュの雨が降り注いだ。本人は悟られまいとしている様だが、この若手俳優が照れまくっているのは場にいる誰の目にも明らかである。
彼と、往年の大女優ティナ・Bとの熱愛報道は、報じられた瞬間に世間をあっと言わせた一大スクープであった。
第一報が出て以来いまだに本人たちからの言及は無いものの、週刊誌やワイドショーは結婚秒読みなどと一方的に囃し立てている。
双方のファンの間にも動揺は広がりつつも、結局は世間の誰もがお似合いだと口を揃える美男美女のビッグカップルだ。
ジェフはフラッシュが収まるのを見計らい、やはり照れ臭さを消しきれない微笑みを正面のテレビカメラに向けた。
「お騒がせしてしまい申し訳ない。ですが近いうちに、彼女と二人で会見の場を設ける予定ですので―――
ぜひ、楽しみにしていてください」
それは、見事な交際宣言に違いなかった。
▽
「はーっ、堂々としたもんだな!流石人気絶頂の俳優ジェフくんだぜ」
お見それしましたよ、そう続けながらロックがカウンター席でテレビに向かって親指を立てた。
街角にある小さなカフェは仕事帰りの寄り道目的で立ち寄ったビジネスマンがテーブル席に一組いるのみで、カウンター席には勝手知ったる常連が二名、我が物顔で寛いでいる。
オーナーのダリルは苦笑いを浮かべ、ロックの手前にブラックコーヒーの並々注がれたアンティークカップを差し出した。
「もう最初のスクープから一週間も経ったし、本人たちも今更慌てる事じゃないって感じよね。大体アンタ、ここで油売ってて良いの?本当ならアンタも今日の囲み取材に行く筈だったんじゃ」
「ちっちっち!今日のインタビューは後輩に任せてるのさ。なにしろ俺には、もっととんでもない大仕事が控えてるからな」
「兄貴とティナの結婚会見で代表質問するんだろ?役得だよなー」
ロックの隣の席でジンジャーエールをぐいと煽り、マッシュが豪快に笑った。
「俺も当日カメラ担いで行く予定だから。宜しく頼むぜ」
「なあんだ、しっかり内輪で算段付いてるってわけ。セッツァーも抜け目ない仕事するわよね」
そう言いながらダリルは、カウンターの縁に飾られた写真立てを手に取った。
写真の日付は、三年前の夏の日。
このカフェの店先で撮影された仲間たちの集合写真だ。
オーナーのダリルの横で腕組みをするセッツァー、満面の笑みでピースサインのロックとマッシュ。劇団女優のセリスも、サングラスをずらして微笑んでいる。
そして彼らに囲まれ笑顔を見せるのは、若き日の女優ティナ・Bと、俳優ジェフ・ロニ―――
「ジェフ……エドガーもティナも、ここまで色々あったものね。これからはうんと幸せになってほしいわ」
写真立てのガラス面を大切そうに指先で撫で、ダリルは呟く。
始まりは五年前。
この集合写真から更に二年遡った、ある春の日だ。
当時十七歳のエドガーと、二十二歳のティナの物語は、正にこのカフェで始まったのだ―――
続
