【47日目】お題「宝物」
公開 2024/11/21 18:05
最終更新 -
1月中旬。私、ユカリ、ダイスケの幼馴染3人は、母校である小学校のとある木の下に集まっていた。
この木の下に埋めたタイムカプセルを開けるためだ。

「この木で合ってるよね?」
「アイちゃん、だいじょぶだよ。あってるよ。ね、ダイちゃん?」
「ああ」

3人で確認して、先ほど先生から借りてきた小学生用の小さなシャベルで地面を掘り始めた。
掘ること数分。私のシャベルが、何かにぶつかって、カツンと音を立てた。

「アイちゃん、見つけたんじゃない!?」
「アイ、慎重に掘ってみてくれ」

2人の視線が私の手元に集中する。
私は丁寧に土をどけていって、土の中からジッパー袋に入った四角い缶を取り出した。

「うわ、懐かしいね」
「ああ」

猫の装飾がされたそれは、私たちが10歳の時、埋めたものだった。
授業で『二分の一成人式』なるものをやった私たちは、本当の成人式の時の自分に何か残せないかと考えて、このタイムカプセルを作るに至ったのである。

「ねえねえ、はやく開けてみようよ!」

ユカリは見た目の懐かしさに浸るよりも、早く中が見たいようだった。
私は土を払って、ジッパー袋から缶を取り出し、開ける。袋のおかげか、単なる幸運か、缶は意外と傷んでおらず、中身は無事のようだった。

中から最初に出てきたのは、当時の自分から20歳の自分へ向けた手紙だった。
それぞれの手紙を読んでみると、内容に個性があって面白かった。
私のものはかなり無難な内容だった。要約すると『10年後も元気でいたらいいな』という程度に収まってしまう。
ダイスケは、手紙でも普段の無口さとそう変わらないらしく、ただ一文『夢に向かって頑張っていてほしい』と書かれていた。
ユカリはそれとは対照的に、かなりの長文で、書いてあることも自分のことだけではなく、家族のことや私たち友人のことにまで及んでいた。

手紙の下からは、青い石、野球のバットとボールのキーホルダー、ビーズの腕輪が出てきた。
それぞれが当時大切にしていた、未来に残したいと思った宝物たちだ。
みんなそれぞれのものを手に取った。
私が青い石、ダイスケがキーホルダー、ユカリが腕輪だ。

この青い小さな石は、偶然道端で拾ったものだ。当時の私はとても気に入っていて、すごく大切にしていた。
石を手のひらの上で転がしながら眺めていると、思い出が蘇ってくる。
筆箱の中に入れて授業中に眺めてみたり、家でも学校でもポケットに入れて持ち歩いてみたり。お母さんに見つかって捨てられそうになったときは、大泣きしたっけ。
今こうして見ると、太陽光をキラキラと反射して青く輝く石は確かに綺麗だけども、宝物というほどの代物じゃない。
それでも、あの頃の私にとっては確かに宝物で、未来に残したいと思えるほどのものだったのだ。
そう思えば、この石のことが、愛しく思えるような気がした。

他の2人もそれぞれに思い出に浸っていて、静かな時間が流れた。

しばらくして、ユカリが、どこかカフェでも入って話そうと提案してきた。
私もダイスケもそれに同意した。土を元に戻し、シャベルを返却して、学校をあとにする。
3人で入ったカフェで、あの頃の思い出話に花を咲かせた。つい最近あった成人式のときも同じような話題で盛り上がったのに、話は尽きなかった。

あの頃から時が経ち、それぞれ、宝物と呼べるものは変わった。けれども、あの頃の思い出も絆も、変わりなく私たちの間には存在している。
今の私にとって、それこそが何にも代えがたい宝物なのだと気づいて、世界が前より輝いて見える気がした。



https://kaku-app.web.app/p/AYUkvxzOW4heFxGKLlmC
きまぐれ創作者。一次も二次も夢BLGLNLなんでもござれな雑食。
二次の推しジャンルはオルタンシア・サーガ。
最近の記事
【152日目】お題「question」
3歳年下の妹は、好奇心旺盛な子どもだった。母はよく、なぜ?なに?どうして?の質問攻めされていた。 「おねえちゃん、あの…
2025/03/06 16:39
【151日目】お題「約束」
過去を振り返ると、いつもがむしゃらに頑張ってきたな、と思う。他人よりできないことが多い私は、いつも周りに置いていかれな…
2025/03/05 13:33
【150日目】お題「ひらり」
びゅうと風が吹き、ひらりと白いレジ袋が飛んでいく。 あのレジ袋はどこから来たんだろう。 持ち主は袋が飛んじゃったとき…
2025/03/04 13:54
【149日目】お題「誰かしら」
紺のブレザーの群れの中を行く白いセーラー服は、とても目立っていた。さらに目立つことに、その白いセーラー服の女子は綺麗な…
2025/03/03 17:55
【148日目】お題「芽吹きのとき」
バリッ バリバリッ 踏みしめると、霜柱が割れる音がする。 茶色くて、何も生えてない土。 暖かくなったら、ここに緑が芽吹…
2025/03/02 18:10
【147日目】お題「あの日の温もり」
覚えてるよ。あの冬の日、絶望した私がひとりぽっちでいた時に駆けつけてくれたこと。ギュって抱きしめてくれたこと。私に「大…
2025/03/02 11:35
書く習慣ハート数1500突破!!!
書く習慣アプリでの『もっと読みたい』のハート数が1500を突破しました!!! 嬉しいです!!! 今回、意外な伸び…
2025/02/28 21:48
【146日目】お題「cute!」
お化粧って、すごいんだよ。 鏡に映るすっぴんの私はどこにでもいそうな冴えない平たい顔族なんだけど、お化粧したら、平たい…
2025/02/28 21:47
【145日目】お題「記録」
通っているスイミングで月に一度ある記録測定の日。200m個人メドレー。自己ベストは更新できても、あいつには勝てない。 こ…
2025/02/27 16:54
【144日目】お題「さぁ冒険だ」
小さい頃は、何でもかんでも冒険だった。いつもの帰り道だって、何かしら新しい発見があって、いつも違う景色みたいに見えてい…
2025/02/26 15:27
【143日目】お題「一輪の花」
庭の雑草を抜いていたら、玄関までの通り道に一輪、花が咲いていた。薄桃色の花弁の可憐な花だった。何の花だかはわからないけ…
2025/02/25 09:40
【142日目】お題「魔法」
私は小さい頃、魔法使いになりたかった。某魔法学校から入学許可証が届くのを、長い間待っていた。 でも、自分は全然魔法っぽ…
2025/02/24 16:28
【141日目】お題「君と見た虹」
雨上がり、元気にしっぽを振って見上げてくる君のリクエストにお応えして、一緒に散歩に出かけた。 雨上がりは、いつもの散…
2025/02/23 10:45
【140日目】お題「夜空を駆ける」
僕は星。夜空を彩る無数の星のひとつ。ずーっと昔は地上に生きている人間だったみたいだけれど、地上を離れてからはずーっと星…
2025/02/22 11:26
【139日目】お題「ひそかな想い」
たとえば、あなたが好きだと言っていた食べ物、漫画、音楽……。そういうものに触れたとき、私はあなたを思い出す。中学を卒業し…
2025/02/21 16:46
【138日目】お題「あなたは誰」
「あなたは誰?」 事故に遭った彼女の病室に駆けつけたとき、彼女の私への第一声はそれだった。 彼女のお母さんがどんなに…
2025/02/20 12:55
【137日目】お題「手紙の行方」
4階の窓から外へ、ルーズリーフで作った紙飛行機を飛ばす。 飛行機の中には、最近あった、先生の面白エピソードとか、俺の家族…
2025/02/19 13:26
【136日目】お題「輝き」
光を浴びて、重の中で鰻がキラキラと輝いて見える。食べ物を宝石に例えるグルメレポーターがいたけども、まさに宝石のような美…
2025/02/18 10:07
【135日目】お題「時間よ止まれ」
推しのライブのアンコール。 盛り上がりは最高潮。 もう最っっっ高に楽しくて、「時間よ止まれ!」って感じ。 でも、ついさ…
2025/02/18 09:39
【134日目】お題「君の声がする」
月曜日の朝、幼馴染で隣のクラスのユズから、メッセージが入った。 『熱でた。今日休む』 最近本格的に寒くなってきた上…
2025/02/16 15:25
もっと見る
タグ
書く習慣アプリ(159)
記念(9)
創作(1)
もっと見る