【15日目】お題「すれ違い」
公開 2024/10/19 23:21
最終更新
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駅の改札口。時刻は午前10時55分。待ち合わせ時間まであと5分というところ、待ち合わせ相手のルークさんからメッセージが入った。
『ハクさん、すみません。電車が遅れてて、30分くらい遅れます……!』
遅刻の連絡だった。電光掲示板にルークさんの使うはずの路線の遅延情報が出ていたので、もしかしてと思っていた。
『了解です。そしたら、西口のドニーズに入ってますね。』
元々食事をする予定だったファミレスに入っている旨を返信して、そこへ向かう。
入店して、店員に座席に案内された。
『席座れました。入ってきて右側の窓際、入り口から数えて3番目の席です。』
またルークさんに連絡を入れて、窓際の席に腰を落ち着けた。
ルークさんとは、SNSで知り合った。知り合ってもう2年になる。お互いに本名は知らない。同じゲームが好きで、オンラインでやり取りしているうちに仲良くなった。今回は、そのゲームのリアルイベントが開催されるので、一緒に行こうと言う話になり、その前日の今日、初めて会うことになったのである。
テーブルに備え付けのタブレッドでとりあえずドリンクバーを頼み、何となくメニューを見て時間を潰す。ページをスワイプしていたら、“昭和レトロメニュー”が出てきた。昔ながらのオムライスやハンバーグ、プリン、メロンソーダなどなど、ノスタルジーを感じさせるものが並んでいる。オムライスが特に美味しそうだったので、お昼はこれに決めた。
“昭和レトロメニュー”を見ていると、これをタブレットで見ているのが、なんだか不思議な気がしてくる。時代の変化が目の前にあるような。
もしも昭和だったら、きっとこんな気楽に待ち合わせできなかっただろうと、ふと思った。かつては、移動中不測の事態があって遅刻しそうなときや、急に具合が悪くなって行けなくなったとき、連絡手段がなかったんじゃないだろうか。それで、待っていられず帰ってしまったり、単にすっぽかされたんだと怒って帰ってしまったりして、すれ違いが起こったんじゃないだろうか。
そもそも、ルークさんとこうして会うこともなかったかも、と思い至る。ネットも無かった時代だ。同じものが好きでも、お互いを知ることはなかったかもしれない。リアルイベントが開催されても、ただ会場ですれ違うだけで終わったかもしれない。
そう考えると、今日会えるのって、奇跡だなあ。
そんなふうに思いを巡らせていたとき、少し慌ただしい足取りで1人の女性が近づいてきた。私の座る向かいにきて、口を開く。
「ハクさん、ですか?」
「そうです!ルークさんですよね。一応初めましてですね」
「ええ、初めまして。ほんと遅れてすみません……!」
その女性――ルークさんは、頭を下げて申し訳なさそうにしている。
「いえいえ、大丈夫ですよ。おかげでちょっとした奇跡に気づけたので」
ルークさんにメニューのタブレットを差し出しながら、私は笑って返した。
https://kaku-app.web.app/p/Ui9IZEPixvtVcxUcY5pR
『ハクさん、すみません。電車が遅れてて、30分くらい遅れます……!』
遅刻の連絡だった。電光掲示板にルークさんの使うはずの路線の遅延情報が出ていたので、もしかしてと思っていた。
『了解です。そしたら、西口のドニーズに入ってますね。』
元々食事をする予定だったファミレスに入っている旨を返信して、そこへ向かう。
入店して、店員に座席に案内された。
『席座れました。入ってきて右側の窓際、入り口から数えて3番目の席です。』
またルークさんに連絡を入れて、窓際の席に腰を落ち着けた。
ルークさんとは、SNSで知り合った。知り合ってもう2年になる。お互いに本名は知らない。同じゲームが好きで、オンラインでやり取りしているうちに仲良くなった。今回は、そのゲームのリアルイベントが開催されるので、一緒に行こうと言う話になり、その前日の今日、初めて会うことになったのである。
テーブルに備え付けのタブレッドでとりあえずドリンクバーを頼み、何となくメニューを見て時間を潰す。ページをスワイプしていたら、“昭和レトロメニュー”が出てきた。昔ながらのオムライスやハンバーグ、プリン、メロンソーダなどなど、ノスタルジーを感じさせるものが並んでいる。オムライスが特に美味しそうだったので、お昼はこれに決めた。
“昭和レトロメニュー”を見ていると、これをタブレットで見ているのが、なんだか不思議な気がしてくる。時代の変化が目の前にあるような。
もしも昭和だったら、きっとこんな気楽に待ち合わせできなかっただろうと、ふと思った。かつては、移動中不測の事態があって遅刻しそうなときや、急に具合が悪くなって行けなくなったとき、連絡手段がなかったんじゃないだろうか。それで、待っていられず帰ってしまったり、単にすっぽかされたんだと怒って帰ってしまったりして、すれ違いが起こったんじゃないだろうか。
そもそも、ルークさんとこうして会うこともなかったかも、と思い至る。ネットも無かった時代だ。同じものが好きでも、お互いを知ることはなかったかもしれない。リアルイベントが開催されても、ただ会場ですれ違うだけで終わったかもしれない。
そう考えると、今日会えるのって、奇跡だなあ。
そんなふうに思いを巡らせていたとき、少し慌ただしい足取りで1人の女性が近づいてきた。私の座る向かいにきて、口を開く。
「ハクさん、ですか?」
「そうです!ルークさんですよね。一応初めましてですね」
「ええ、初めまして。ほんと遅れてすみません……!」
その女性――ルークさんは、頭を下げて申し訳なさそうにしている。
「いえいえ、大丈夫ですよ。おかげでちょっとした奇跡に気づけたので」
ルークさんにメニューのタブレットを差し出しながら、私は笑って返した。
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