TRISO燃料の世界市場レポート2026-2032
公開 2026/02/03 17:26
最終更新 -
TRISO燃料(トライストラクチャル・アイソトロピック燃料)とは、ウラン核を複数の炭素およびセラミック層で微小粒子化して被覆した「マイクロ粒子核燃料」である。具体的には、ウラン核(あるいはウラン酸化物/ウランナイトリド等)をまず微細な粒子(kernel)として形成し、それをまず炭素、次にセラミック(たとえばシリコンカーバイド:SiC)、さらに再び炭素など複数層で覆うことで、極めて高い耐熱性と放射性封じ込め性能を持たせる。結果、通常の軽水炉用燃料が不安定になり得る高温・高放射線環境下であっても、燃料自体の崩壊や溶融を防ぎ、炉心事故時の放射性物質漏洩リスクを著しく低減することが可能となる。また、粒子ごとに封じ込めと構造的強度を持つため、炉型に応じた柔軟なコア設計(ペブルベッド、高温ガス炉、モジュール炉、小型炉など)が可能であり、再処理や高度廃棄物管理の観点でも従来燃料に比べて有利とされる。すなわち、TRISO燃料は「次世代原子炉」「高温炉」「マイクロ炉」「小型モジュール炉(SMR)」といった未来型エネルギーインフラを支える、安全性・柔軟性・効率性を兼ね備えた“次世代コア燃料”である。



“脱炭素 × 安全性 × 柔軟性”──TRISO燃料市場が描く未来の軌跡



QYResearch調査チームの最新レポートである「2025~2031年グローバルTRISO燃料市場レポート」によると、2025年から2031年の予測期間中のCAGRが9.7%で、2031年までにグローバルTRISO燃料市場規模は4.26億米ドルに達すると予測されている。この成長を支えるドライバーは複数ある。一つは地球規模で進む脱炭素とクリーンエネルギーへの転換需要だ。化石燃料依存からの脱却を目指す多くの国々が、ベースロード電源として原子力、特に安全性と効率性に優れた次世代炉(高温ガス炉、モジュール炉、マイクロ炉)を再評価している。TRISO燃料はこうした新世代炉との親和性が高く、特に事故耐性の高さが安全性への関心と合致する。

さらに、従来の大型原子炉とは異なり、小規模かつモジュール型、あるいは分散型の炉設計が可能なSMR/マイクロ炉の普及が進んでおり、これがTRISO燃料需要の拡大を後押しする。加えて、防衛用途や遠隔地用電源、小規模産業用途といった非従来型需要も拡大しており、これまで原子炉が届かなかった市場への“新規開拓”も進む。さらに、燃料と炉のトータル最適化、コスト効率、ライフサイクルコストの低減、廃棄物管理の効率化など、経済合理性の観点からもTRISOは注目されている。こうした複合要因により、TRISO燃料は“未来の原子力インフラのキーパーツ”として、脱炭素時代を支える次なる成長市場の中心に浮上している。



QYResearchのトップ企業研究センターによると、TRISO燃料の世界的な主要製造業者には、BWX Technologies、Chinergyなどが含まれている。2024年、世界のトップ3企業は売上の観点から約98.0%の市場シェアを持っていた。



地域とリーダー企業が描く多様な展開パターン



BWXTは原料ウラン処理から燃料製造、炉システムの提供まで含めた垂直統合モデルを採用し、TRISO燃料の試作から商業生産までの道筋をつけている。2025年にはCVI(化学蒸着)炉の稼働を完了し、高濃度ウラン含有のTRISOペレットを製造可能な体制を確立した。これにより高温ガス炉(HTGR)、マイクロ炉、SMR向け燃料として、コスト競争力と安全性の両立が可能になった。さらに、米国政府(省庁)、防衛、宇宙用途など多様な用途への納入先が開拓されており、まさに“エネルギー転換/国策燃料サプライヤー”としての地位を確立しつつある。



地域別では、北米が依然として開発と初期実装の中心であり、新技術採用のスピードが速い。一方、欧州では複数国・研究機関が安全性基準の統一化、規制整備、試験炉プロジェクトを進めており、将来的な商用炉展開を視野に入れている。アジア太平洋、中東など新興国地域でも、エネルギー需要の増加、脱炭素政策、水素製造やプロセス熱用途による高温炉ニーズの拡大という背景から、TRISO採用の検討が進んでいる国・地域が増えている。



TRISO燃料の意味するもの ― エネルギーの“選択肢の拡大”と“安全な未来”



TRISO燃料は、原子力という既存技術の延長ではなく、エネルギーの“パラダイムシフト”を促す鍵となる。従来の大型炉に限らず、小規模、分散型、用途特化型の炉が実用化されれば、エネルギー供給のカタチは劇的に多様化する。地方や離島、遠隔地、軍事用途、産業用途など、これまで電力網や化石燃料に依存せざるを得なかった領域にも、クリーンで安定した電力・熱供給が可能になる。

加えて、TRISO燃料が提供する「高い安全性」「事故に強い構造」「メルトダウン耐性」「放射性物質封じ込め力」は、社会の原子力に対する不安、規制、廃棄物問題に対する答えのひとつとなる。これにより、原子力の社会的受容性、規制当局・政策当局の承認の可能性も高まり、従来型原子炉で対応が難しかった“再稼働”や“新規建設”が現実性を帯びる。



さらに、燃料の製造・供給から炉本体・設置・運用・廃炉までを見据えた総合的な事業モデルは、企業価値を飛躍的に高める。単なる燃料販売にとどまらず、サービス、メンテナンス、リサイクル、ライフサイクル管理を含めた「エネルギーインフラ・ソリューションプロバイダー」としての可能性を秘めている。こうした包括的な提供能力を持つ企業こそ、今後の脱炭素・エネルギー転換時代の中核を担う存在になり得る。



近年の主要ニュース動向



2024年2月、米国において規制当局がTRISO燃料に関するトップカル(Topical Report)を受理。80以上の性能・安全性指標とテスト項目をクリアした報告書として正式に認められたことで、TRISO燃料を用いた炉の実用化に向けた規制面でのクリアランスが大きく前進した。これにより、複数国間での燃料規格の整合化や国際展開が加速する可能性が高まったと報告されている。



2025年7月、BWX Technologies がTRISO燃料の商業生産拡大に向けた重大なマイルストーンを達成。化学蒸着炉(CVI炉)の設置と試験運転を完了し、ウラン質量密度の高いTRISO燃料を量産可能な施設を稼働開始したことを発表。これにより次世代炉、特に高温ガス炉(HTGR)やマイクロ炉向け燃料供給の拡大が現実味を帯びた。

2025年9月、BWX Technologies は、垂直統合型のTRISO燃料–炉システム展開モデルを通じて、SMR/マイクロ炉市場の一角を狙う姿勢を強めたことを表明。複数の戦略的パートナーシップを通じ、商業炉導入に向けた準備を加速させている。



【レポート詳細・無料サンプルの取得】https://www.qyresearch.co.jp/reports/1626435/triso-fuel





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