アドベントカレンダー3日目
公開 2023/12/03 21:56
最終更新
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アドベントカレンダー3日目です。今日書きました。
BOOTHはこちら↓
https://flying.booth.pm/items/5310387
昨日の続きです。
初めて挨拶された日のことはよく覚えている。
震える声で、小さく「おはようございます」と話しかけられた。普段そんなことしない子だったから、妙に印象が強くて。それから毎日朝と帰りは挨拶された。よく見たら全員にしているようで、随分マメな子だな、と思ったのを覚えている。
最初は人見知り矯正の荒療治かなーと思ったけど、どうもそうでもないらしい。周りは特に気にしてなかったが、どうしても彼女の行動の理由が気になった。
「なんで座間さん、挨拶するようになったんだろ」
「いや知らんけど。何、挨拶されて好きになっちゃった?」
「それはない。でもよくわかんないと気になるじゃん。どっちかっていうとそれが気持ち悪い」
「ふーん。お前のこと好きとか?」
「適当言うなよ」
それからも彼女の挨拶は続き、俺は彼女の行動の理由を知りたくて観察を続けた。気づいたことは、頻繁に目が合うこと。目が合うとそらすこと。目が合うということは、向こうもこっちを見る機会が多いということか。目が合うとそらすのは気まずいからか。
「気づいたかもしれん」
「何に」
「座間さん、俺のこと苦手なんじゃないか」
「お前ってほんとバカ」
「はぁ?」
「ネタバレ、アドバイス、匂わせはなしにするわ」
「配信者への配慮みたいなことするじゃん」
しかし少しは納得がいく。彼女は苦手な人を減らそうとしているのではないか?だから毎日挨拶することで慣らそうとしているんじゃないか?自分の中でようやく答えがつかめかけたかもしれない。
二月も中頃のある日、座間さんがクッキーをくれた。どうもみんなに配っているらしい。見たところ手作りのもののようだ。本当にマメな子だな。バレンタインか。姉と妹が「ちゃんとお返ししたほうがいいよ」とうるさいからホワイトデーは忙しい。正直そういうの苦手なんだけどな。
「なんか座間うざくない?」
「ねー」
「八方美人すぎるでしょ」
「無視しよ」
そんな声が聞こえた気がした。
最初は気のせいかと思ったんだ。だけど気のせいではないと気づいたのは三日目だった。彼女は、無視されている。いわゆる声のでかい女子生徒たちに。それだけならまだいいかと思っていたが、その影響で他の生徒たちも彼女に話しかけなくなった。挨拶にも応えなくなった。
……その納得のいかない行動が、見るに堪えなかった。
「座間さん」
「立花くん……」
クラスがざわつく。声でか女子たちからの視線も刺さっているのがわかる。
「おはよ」
「お、おはよ」
「今日声かけてくれないからどうしたのかと思った」
「あの、それは」
「気にしなくていいから」
ちら、と声でか女子たちのほうを見てから、座間さんを見る。
「俺は君を見てたから、わかる。何も悪いことしてないじゃん」
このままここにいるのも居心地悪いか。彼女を引っ張って連れ出そうとする。
だけどそれは払われた。意外そうな顔をしてたんだろう、座間さんは俺の顔を見て、無理に笑顔を作った。
「ありがと、立花くん」
そう言うと声でか女子のほうにすたすた歩いて行って、頭を下げた。
「ごめんなさい! 私、きっと何か気に障ることしたんですよね」
真っ直ぐに彼女らを見据える。声でか女子たちの表情が面白い。
「なので悪いところがあるなら言ってください! 直せないので!」
震える声は、あの日聞いたみたいな小さなものではなく、はっきりと心臓に届く声だった。
「本当はクリスマスまで告白するつもりなかったのに、あのあと立花くんに告白されると思ってなかった」
「座間さんって気が長いよな……」
「立花くんも大概だよ」
二か年計画の話を聞かされたときは呆れてしまった。そのおかげで今があるんだけど。こうしてクリスマスにプレゼント交換ができる。
「でも立花くんが見てくれてたから、あのとき助けてもらえた」
「あの状況であの女に立ち向かっていけるなら大丈夫でしょ……」
俺には到底理解できないことだが、あのあと声でか女たちにも挨拶は続けてるんだ。なんで?と聞いたら、「単純接触効果かなー」と的外れな回答が返ってきた。
「物好きだよ」
「立花くんもね」
「嫌いじゃないけど」
できれば来年も、彼女の観察はそばで続けていきたい。
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昨日の続きです。
初めて挨拶された日のことはよく覚えている。
震える声で、小さく「おはようございます」と話しかけられた。普段そんなことしない子だったから、妙に印象が強くて。それから毎日朝と帰りは挨拶された。よく見たら全員にしているようで、随分マメな子だな、と思ったのを覚えている。
最初は人見知り矯正の荒療治かなーと思ったけど、どうもそうでもないらしい。周りは特に気にしてなかったが、どうしても彼女の行動の理由が気になった。
「なんで座間さん、挨拶するようになったんだろ」
「いや知らんけど。何、挨拶されて好きになっちゃった?」
「それはない。でもよくわかんないと気になるじゃん。どっちかっていうとそれが気持ち悪い」
「ふーん。お前のこと好きとか?」
「適当言うなよ」
それからも彼女の挨拶は続き、俺は彼女の行動の理由を知りたくて観察を続けた。気づいたことは、頻繁に目が合うこと。目が合うとそらすこと。目が合うということは、向こうもこっちを見る機会が多いということか。目が合うとそらすのは気まずいからか。
「気づいたかもしれん」
「何に」
「座間さん、俺のこと苦手なんじゃないか」
「お前ってほんとバカ」
「はぁ?」
「ネタバレ、アドバイス、匂わせはなしにするわ」
「配信者への配慮みたいなことするじゃん」
しかし少しは納得がいく。彼女は苦手な人を減らそうとしているのではないか?だから毎日挨拶することで慣らそうとしているんじゃないか?自分の中でようやく答えがつかめかけたかもしれない。
二月も中頃のある日、座間さんがクッキーをくれた。どうもみんなに配っているらしい。見たところ手作りのもののようだ。本当にマメな子だな。バレンタインか。姉と妹が「ちゃんとお返ししたほうがいいよ」とうるさいからホワイトデーは忙しい。正直そういうの苦手なんだけどな。
「なんか座間うざくない?」
「ねー」
「八方美人すぎるでしょ」
「無視しよ」
そんな声が聞こえた気がした。
最初は気のせいかと思ったんだ。だけど気のせいではないと気づいたのは三日目だった。彼女は、無視されている。いわゆる声のでかい女子生徒たちに。それだけならまだいいかと思っていたが、その影響で他の生徒たちも彼女に話しかけなくなった。挨拶にも応えなくなった。
……その納得のいかない行動が、見るに堪えなかった。
「座間さん」
「立花くん……」
クラスがざわつく。声でか女子たちからの視線も刺さっているのがわかる。
「おはよ」
「お、おはよ」
「今日声かけてくれないからどうしたのかと思った」
「あの、それは」
「気にしなくていいから」
ちら、と声でか女子たちのほうを見てから、座間さんを見る。
「俺は君を見てたから、わかる。何も悪いことしてないじゃん」
このままここにいるのも居心地悪いか。彼女を引っ張って連れ出そうとする。
だけどそれは払われた。意外そうな顔をしてたんだろう、座間さんは俺の顔を見て、無理に笑顔を作った。
「ありがと、立花くん」
そう言うと声でか女子のほうにすたすた歩いて行って、頭を下げた。
「ごめんなさい! 私、きっと何か気に障ることしたんですよね」
真っ直ぐに彼女らを見据える。声でか女子たちの表情が面白い。
「なので悪いところがあるなら言ってください! 直せないので!」
震える声は、あの日聞いたみたいな小さなものではなく、はっきりと心臓に届く声だった。
「本当はクリスマスまで告白するつもりなかったのに、あのあと立花くんに告白されると思ってなかった」
「座間さんって気が長いよな……」
「立花くんも大概だよ」
二か年計画の話を聞かされたときは呆れてしまった。そのおかげで今があるんだけど。こうしてクリスマスにプレゼント交換ができる。
「でも立花くんが見てくれてたから、あのとき助けてもらえた」
「あの状況であの女に立ち向かっていけるなら大丈夫でしょ……」
俺には到底理解できないことだが、あのあと声でか女たちにも挨拶は続けてるんだ。なんで?と聞いたら、「単純接触効果かなー」と的外れな回答が返ってきた。
「物好きだよ」
「立花くんもね」
「嫌いじゃないけど」
できれば来年も、彼女の観察はそばで続けていきたい。
