林間学校の夜
公開 2025/11/11 07:42
最終更新
2025/11/11 07:56

もう小学校の林間学校なんて何処に行ったかなんて憶えていないが、一つだけ記憶に残っている出来事がある。
それは、泊まったホテルでの出来事だ。
綺麗でも汚くも無い普通を絵に描いた様なホテルだった。
僕は入り口に近い場所に布団を敷いて横になっていた。
林間学校の夜は夜更かしをして語り合ったりするものだと思っていたが、皆すぐにすんなりと眠ってしまっていた。
僕は肩透かしを食らってしまい一人だけ眠れず横になっていた。
暗い中、ぼーっとしていると壁に違和感を感じた。程なくして違和感に気付いた。
僕から見て足側の壁に飾ってある山か何かの絵の額から白い手がヒラヒラ出ていた。
今で言う"よ〇ざわプロダクション"の様に。
僕はその手に釘付けになった。
手はすぐにイカが逃げるような動きで壁のなかにスーー…っと吸い込まれて行った。
消えたっ! と思った瞬間
部屋の入り口がガラっと開いて怖い教師が入って来た。
「コラー誰だ夜中に騒いでるのはー!」
教師はドスッと鈍い音を立てて入り口近くに横になっている僕の腹を踏んだ。
「ウッ!」
みぞおちに衝撃が走り想定外の痛さに悶絶した。
「あっゴメン!」
教師は軽く謝罪した後
「Tまたお前かー!」
熟睡していたT君の顔を平手打ちを浴びせて文字通り叩き起した。
寝ぼけているT君を教師は無理矢理連れて行った。
普段から問題児だったので、ただの偏見だろうと思った。
え〜〜〜って表情をしながら連れて行かれるT君の姿はとても面白く笑いそうになったが、先ほど踏まれたお腹の痛さに声が出ないし"白い手"の恐怖も抜けていなかった。
短い時間で感情がぐちゃぐちゃになった。
僕は廊下でT君を怒る声を聞きながら眠りについた。もう"白い手"は出てこなかった。
後で気付いた
あの時、教師にだけ夜中に騒いでいた様にナニかの声を聞いていたんだと。
怪異は"しろい手"だけじゃなかったかも知れない。
何年経っても、この林間学校の出来事は忘れられない思い出に、なった。
