亡霊
公開 2024/03/03 22:26
最終更新
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世の中にはいろいろな才能があるけれど、「腐る才能」っていうのもあるんだなと感じました。自分がどうなりたいか、何がしたいのか、そのために必要な努力ややらなければいけないことを、あれやこれやと理由をつけて「やらない」という才能。そして、瀬名泉にはその才能が無い。でも、じゃあその他大勢より何か秀でていて、一際輝ける才能が彼にあるかと聞かれたら、それもないと思います。歌も、ダンスも、持って生まれた輝きというものが彼にあるかと言われたら、分からない。それを一番理解しているのは瀬名泉本人で、けれどそれが彼にとって「やらない」という理由にはならなかっただけ。月永レオという才能の塊、そこに居るだけで全員の目を奪ってしまうような存在が隣にいる環境で、比べるわけでも、釣り合おうとするわけでもなく、彼が彼のためだけに自分を磨き続けている。そうして生まれた輝きは、見える人にしか見えないんだよなあ。見える人だった月永レオは、瀬名泉に惹かれるわけですが。
モノクロのチェックメイト、瀬名泉がいかに「普通か」ということがよく分かりました。普通の人間だから、誰かに必要としてもらえるのは心地良い。鬱陶しく思いながらも、月永レオと二人で過ごす温い時間は、多分嫌いじゃない。認められれば、結果が出れば奮い立つほど嬉しい。月永レオが酷く傷ついたときは、彼も酷く狼狽える。どう声をかけていいのか分からないし、己が傷つくのも嫌で、つい発言に予防線を張ってしまう。そういう、普通の人間。
月永レオは思ってたよりずっと善の強い人間でした。腐ることのない瀬名泉を見て、みんながそうだと本当に信じてしまう程には。そんな彼が時間をかけて、誰にも気づかれない程度にゆっくりとおかしくなっていく。ライブの最後、剣先を地に突き立てて呼吸を荒くする姿が、すべてを物語っていると思いました。
けど私はそんな彼らが好きでした。自分が自分としてそこに立つために、自分を削りながら、舞台に上がる彼らが好きでした。終わりに、新しい王を立てて笑顔で踊る彼らを見たとき、私は亡霊になったのだと、そう思いました。
モノクロのチェックメイト、瀬名泉がいかに「普通か」ということがよく分かりました。普通の人間だから、誰かに必要としてもらえるのは心地良い。鬱陶しく思いながらも、月永レオと二人で過ごす温い時間は、多分嫌いじゃない。認められれば、結果が出れば奮い立つほど嬉しい。月永レオが酷く傷ついたときは、彼も酷く狼狽える。どう声をかけていいのか分からないし、己が傷つくのも嫌で、つい発言に予防線を張ってしまう。そういう、普通の人間。
月永レオは思ってたよりずっと善の強い人間でした。腐ることのない瀬名泉を見て、みんながそうだと本当に信じてしまう程には。そんな彼が時間をかけて、誰にも気づかれない程度にゆっくりとおかしくなっていく。ライブの最後、剣先を地に突き立てて呼吸を荒くする姿が、すべてを物語っていると思いました。
けど私はそんな彼らが好きでした。自分が自分としてそこに立つために、自分を削りながら、舞台に上がる彼らが好きでした。終わりに、新しい王を立てて笑顔で踊る彼らを見たとき、私は亡霊になったのだと、そう思いました。