【創作】とりとさかなの雑貨店
公開 2024/05/23 23:23
最終更新
2024/05/24 01:30
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あおだま先生、こんにちは。
来週の木曜日は運動会なので
午前中で学校が終わります。
お店へ遊びに行ってもいいですか?
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私は小さな雑貨店の店主だ。
ある日、お店のSNSにメッセージが届いた。
フォローしてくれている女の子からだ。
彼女は将来、雑貨店を開きたいそうで、
私のことを『先生』と呼んで慕ってくれている。
何度かやりとりしているうちに、彼女は中学生で、鳥と魚と雑貨が好きだということが分かった。
大人になったら、好きなものに囲まれて仕事がしたい。
私のお店は、彼女の夢のロールモデルだったのだ。
ついに木曜日がやってきた。
その日は朝からそわそわしていた。
いそいそとお茶の支度をしながら、SNSの中の人と現実で会うのか、と独り言を呟いた。
🐥🐟
「先生!」
お店の自動ドアが開くなり、
女の子が駆け寄ってきた。
私は思わず、ハグをした。
女の子は、制服のブレザーのポケットからメモ帳を取り出し、「今日はよろしくお願いします」とお辞儀をした。
質問事項を事前にまとめてきたらしい。
私は早速、彼女をお店のバックヤードへご招待した。
作業途中の散らかった机を見て、女の子は「先生、これはもしかして」と息を呑んだ。
「そうだよ、ねこぜちゃんのシールだよ」
ねこぜちゃんとは、私が描いたオリジナルキャラクターだ。鳥と魚をモチーフにしたイラストで、お客様にも好評だ。
女の子は目を輝かせ、「お店のお手伝いをしてみたい」と言ってくれた。
私はお言葉に甘えて、ねこぜちゃんのシール作りを体験してもらうことにした。
「先生は、小さい頃から鳥と魚が好きなんですか?」
喋りながらも作業の手を止めない、なかなかの働き者だ。
将来有望かもしれない。
私はお店を始めた日のことを話した。
女の子は時折、メモを取り、熱心に聞いていた。
女の子はペンを置き、ふうっと息をついた。
「わたしは、『女の子なのに鳥と魚が好きなのは変だ』って言われるんです。だから、大人になったら鳥と魚のお店を開いて、わたしみたいな女の子に『そんなことないよ』って言いたいんです。」
うつむいているからか、女の子は少しだけ猫背になっていた。
女の子は子どもらしく、唐突にペンギンの話題にワープした。
家族旅行でオーストラリアへ行き、フィリップ島のリトルペンギンを見た思い出を熱っぽく語ってくれた。
彼女が大好きな鳥の話を教えてくれたのだ。
「貴方には、伝える力があるね。」
「いえ、そんなことないです」
「ううん、これは貴方だけの才能だよ。お店のホームページで商品を紹介する時はね、写真だけじゃなくて、文章でも説明をするんだよ。素敵なお話を書いたら、お店を気に入ってくれる人にたくさん出会えるかもしれない。立派な才能だよ。」
「いえ、そんな」
「いつか書いてみてね。楽しみだな。」
女の子は「はい」と、恥ずかしそうにメモを取った。
🐥🐟
「あ!先生」
帰り際、女の子は名刺を差し出した。
消しゴムはんこで、女の子の名前が押されていた。
「お仕事を始めるなら、名刺が必要だって」
私たちはビジネスマナーに則り、厳かに名刺交換をした。
「すごいね。手作りだね。」
「はい、名刺が必要だって、お友だちが教えてくれたんです」
優秀なブレーンも居るのか。頼もしい。
そろそろ閉店の時間だ。
初夏は夕方でも空は明るい。
女の子は両手を力強く振って、バイバイしてくれた。
今すぐ飛び立てそうだ。
私もがんばろう。
きっとまた会える。
次はあの子のお店へ遊びに行こう。
🐥🐟
▼あおだま雑貨店
https://aodama.buyshop.jp/
あおだま先生、こんにちは。
来週の木曜日は運動会なので
午前中で学校が終わります。
お店へ遊びに行ってもいいですか?
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私は小さな雑貨店の店主だ。
ある日、お店のSNSにメッセージが届いた。
フォローしてくれている女の子からだ。
彼女は将来、雑貨店を開きたいそうで、
私のことを『先生』と呼んで慕ってくれている。
何度かやりとりしているうちに、彼女は中学生で、鳥と魚と雑貨が好きだということが分かった。
大人になったら、好きなものに囲まれて仕事がしたい。
私のお店は、彼女の夢のロールモデルだったのだ。
ついに木曜日がやってきた。
その日は朝からそわそわしていた。
いそいそとお茶の支度をしながら、SNSの中の人と現実で会うのか、と独り言を呟いた。
🐥🐟
「先生!」
お店の自動ドアが開くなり、
女の子が駆け寄ってきた。
私は思わず、ハグをした。
女の子は、制服のブレザーのポケットからメモ帳を取り出し、「今日はよろしくお願いします」とお辞儀をした。
質問事項を事前にまとめてきたらしい。
私は早速、彼女をお店のバックヤードへご招待した。
作業途中の散らかった机を見て、女の子は「先生、これはもしかして」と息を呑んだ。
「そうだよ、ねこぜちゃんのシールだよ」
ねこぜちゃんとは、私が描いたオリジナルキャラクターだ。鳥と魚をモチーフにしたイラストで、お客様にも好評だ。
女の子は目を輝かせ、「お店のお手伝いをしてみたい」と言ってくれた。
私はお言葉に甘えて、ねこぜちゃんのシール作りを体験してもらうことにした。
「先生は、小さい頃から鳥と魚が好きなんですか?」
喋りながらも作業の手を止めない、なかなかの働き者だ。
将来有望かもしれない。
私はお店を始めた日のことを話した。
女の子は時折、メモを取り、熱心に聞いていた。
女の子はペンを置き、ふうっと息をついた。
「わたしは、『女の子なのに鳥と魚が好きなのは変だ』って言われるんです。だから、大人になったら鳥と魚のお店を開いて、わたしみたいな女の子に『そんなことないよ』って言いたいんです。」
うつむいているからか、女の子は少しだけ猫背になっていた。
女の子は子どもらしく、唐突にペンギンの話題にワープした。
家族旅行でオーストラリアへ行き、フィリップ島のリトルペンギンを見た思い出を熱っぽく語ってくれた。
彼女が大好きな鳥の話を教えてくれたのだ。
「貴方には、伝える力があるね。」
「いえ、そんなことないです」
「ううん、これは貴方だけの才能だよ。お店のホームページで商品を紹介する時はね、写真だけじゃなくて、文章でも説明をするんだよ。素敵なお話を書いたら、お店を気に入ってくれる人にたくさん出会えるかもしれない。立派な才能だよ。」
「いえ、そんな」
「いつか書いてみてね。楽しみだな。」
女の子は「はい」と、恥ずかしそうにメモを取った。
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帰り際、女の子は名刺を差し出した。
消しゴムはんこで、女の子の名前が押されていた。
「お仕事を始めるなら、名刺が必要だって」
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「はい、名刺が必要だって、お友だちが教えてくれたんです」
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