生卵には戻せない。
公開 2026/07/11 14:55
最終更新
2026/07/11 17:12

青空。 #
朝。当たり前のように冷房の効いた寝室からリビングへ向かう。暑い。家の中ですらこれだけ暑いのだから、外に出たらどれだけ暑いのかと思うと、出掛ける前から憂鬱だ。準備が整い覚悟を決めて玄関のドアを開ける。暑い。スマホの時計を見ると7時32分。隣に表示されている気温は現在30℃。午前中からこんなに暑いだなんてうんざりしながら、もはや欠かせなくなってしまった日傘を差して歩き出す。
いつだったか『雨』についてのエッセイを書いた。未だに雨とは適切な距離感で接することが出来ていないが、雨が降ったら傘を差さなきゃいけないのに、晴れていても傘を差さなきゃいけないのか、と思ってしまう。足元が濡れないだけマシ、むしろ涼しさを感じられる、のは頭では理解している。だが「降るなら降るで構わないので、私が家の中や室内にいる時だけにしてほしい。」と『雨』のエッセイで書いたように「夏が暑いのは仕方ないが、私が家の中や室内にいる時だけにしてほしい。」と、同じことを思う。
夏バテ。 #
そんな訳で夏の暑さも猛威を振るい始めてきた今日この頃。今年も相変わらず夏バテになって、お米やパンが遠ざかっていく。蕎麦と素麺と冷製パスタのローテーションで日々を過ごしていて、ふと思う。あれ、こんなにも夏と冬で食べる量って違うっけ。
例えば、夏はよく冷しゃぶサラダを作っているのだが、豚肉100g、茹でたもやしやサラダ用のカット野菜で300g、豆腐1パックが150g、合わせて550gぐらいだと思う。これを冬にしゃぶしゃぶをするとなれば、豚肉に鶏肉に水餃子につくねに白菜にキノコに水菜に大根に長ネギに加えて〆にうどん、となると合わせて550gを大きく超えて1kgぐらいは平気で食べている気がする。え、本当に?
そう思って検索してみると、やはり冬の方が身体を温めるために、脳がエネルギーを補給しようとして、そもそもの食欲が増進するらしい。対して夏の方は体温調節のために、基礎代謝が下がって、エネルギーの消費量も減って、食欲が減退しやすくなる、ということだそう。であれば夏バテも、もしかしたらごく自然なことなのかもしれないなと思った。
とはいえ暑いのはどうしたって避けたい。上手に付き合うとか対策を重ねるとか、もうそういうレベルの暑さではないと思う。地球温暖化だって小学生の頃からずっと言われているはず。YouTubeでのラジオ企画『言葉の稽古場』でも「暑さ」をトークテーマに選んでいるくらいには、暑さに対しての適応力が無いのだなと感じてしまう。
冷凍便。 #
例えば、の話ではあるけれども。少し現実的なことを考えてみるならば、翌日40℃を超える予報が出たら全企業一斉に休業する法律はどうだろう。あるいは本格的にシエスタの導入を法で定めるのも良いかもしれない。
エアコンの設定温度を冷房20℃の強風にして、窓を全開にしてサーキュレーターで外に冷気を送り出したら、気温が下がるかな。冬の空気をトランクルームに保管しておいて夏になって一気に放出してみたら、ひょっとしたら雪を降らすことも出来るかも。製氷機から氷を10個持ち出して近所にばら撒いて、打ち水ならぬ打ち氷をしてみたら。そんなことを世界中の色んな国の誰かと一緒にチャレンジする地球寒冷化大作戦を脳内で妄想してしまう。
そんなことを妄想しながらエアコンの効いた涼しい部屋でエッセイを書いている。お茶でも飲もうかと電気ケトルでお湯を沸かす。時間にして大体10分もかからない。ついでに明日の水筒に入れる氷も作っておこうと製氷皿を取り出す。となると、新しく氷を作るには少なくとも3時間はかかることに気付く。温度を上げるよりも下げる方が難しいことなのだと改めて感じた。
いつだったか、『ゆで卵になったら生卵には戻せない』といった趣旨の、熱中症の危険性を呼びかける呟きがあった。体調を崩しては元も子もないので、現状の暑さ対策は可能な限りしつつ、出来る範囲で気温を下げるために取り組んでも良いのかもしれない。地球がゆで卵になる前に。
【次回は8月11日(火)に公開予定です】
中西崇将 エッセイ『ハチミツはまだ早い』
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