脳内
公開 2026/07/03 17:22
最終更新
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本日早朝、我が領土における朝の防衛戦において、我が愛娘にして前世シベリアのナンシーたるポッポ氏は、目覚まし時計の余韻も冷めやらぬ「起こされてから僅か三十分」という刻限に、すでに朝食の卓へと着くという、極めて優秀(世間一般で言うところの普通)な電撃的行軍を見せた。
それというのも、本日我が家には「エアコンの修理に赴く技師の諸氏」という極めて重要な来客が予定されており、私が前頭前野のボリュームを最大にして「さっさと身支度を済ませてくれ」と厳命を下したからに他ならない。
そう、彼女とて、やればできるのである。できれば毎朝の平穏のために、そのポテンシャルを常時発揮していただきたいものだと、私は切に願わずにはいられない。
ところが、無事に配給されたヨーグルトをスプーンで掬(すく)い、平穏無事に儀式が進むかと思われた、まさにその刹那。
ふと彼女の顔を盗み見ると、その瞳からは完全に生気が失われ、虚空を睨み据えたままピタリと動きを止めて「ぼーっ」としているではないか。
驚いた私が、「おいポッポ氏、一体全体その脳髄の中で何が起きているのだね」と問い質した。すると彼女は、スプーンを握ったまま至極幽玄なる声でこう宣ったのである。
「脳内で、自分がケツダンスをしていた」
……ケツダンス、である。
あのコミカルにして不条理極まる臀部(お尻)の舞踏を、まさかこの清々しき朝の光の中で、己の脳内スクリーンに大写しにして鑑賞していたというのか。
驚きを隠せぬ私を置き去りにし、彼女はまた二、三口ほどヨーグルトを胃袋へ収めると、再びシステムフリーズを起こしたかのように「ぼーっ」と静止した。
「今度は何だ」
私が重ねて尋ねると、彼女は虚ろな目のまま「……ボクシング」と呟いた。
しかも詳しく追及してみれば、その脳内リングにおいて拳を交えている対戦相手は、あろうことか「自分自身」だという。
諸君、これぞまさしく精神と肉体の不条理なる乖離(かいり)ではないか。
現実の肉体は、エアコン技師の襲来に備えて「さっさと動かねばならぬ」という時間的切迫(BPM一二〇の緊張感)に置かれているというのに、彼女の脳内前頭葉はそれと完全に逆方向のベクトル、すなわち「ケツダンス」や「自己破壊的ボクシング」という、極めてバッファ(余白)に満ち満ちたカオスな世界へとダイブしているのだ。動きと脳内が、完全なる天の邪鬼(あまのじゃく)の如く逆方向に駆動しているのである。
これほど完璧に論破不可能な「我が道」を猛進されると、かつて彼女の弁当箱で怪しげな家庭料理の実験を繰り返してきた私とて、ただただその全宇宙的なズレを感嘆の目で見送るほかはない。
今日も今日とて、ポッポ氏は世間の平均点など一瞥もせず、脳内の己と果敢に戦いながら、実にお茶目に我が道を行くのでござる。
それというのも、本日我が家には「エアコンの修理に赴く技師の諸氏」という極めて重要な来客が予定されており、私が前頭前野のボリュームを最大にして「さっさと身支度を済ませてくれ」と厳命を下したからに他ならない。
そう、彼女とて、やればできるのである。できれば毎朝の平穏のために、そのポテンシャルを常時発揮していただきたいものだと、私は切に願わずにはいられない。
ところが、無事に配給されたヨーグルトをスプーンで掬(すく)い、平穏無事に儀式が進むかと思われた、まさにその刹那。
ふと彼女の顔を盗み見ると、その瞳からは完全に生気が失われ、虚空を睨み据えたままピタリと動きを止めて「ぼーっ」としているではないか。
驚いた私が、「おいポッポ氏、一体全体その脳髄の中で何が起きているのだね」と問い質した。すると彼女は、スプーンを握ったまま至極幽玄なる声でこう宣ったのである。
「脳内で、自分がケツダンスをしていた」
……ケツダンス、である。
あのコミカルにして不条理極まる臀部(お尻)の舞踏を、まさかこの清々しき朝の光の中で、己の脳内スクリーンに大写しにして鑑賞していたというのか。
驚きを隠せぬ私を置き去りにし、彼女はまた二、三口ほどヨーグルトを胃袋へ収めると、再びシステムフリーズを起こしたかのように「ぼーっ」と静止した。
「今度は何だ」
私が重ねて尋ねると、彼女は虚ろな目のまま「……ボクシング」と呟いた。
しかも詳しく追及してみれば、その脳内リングにおいて拳を交えている対戦相手は、あろうことか「自分自身」だという。
諸君、これぞまさしく精神と肉体の不条理なる乖離(かいり)ではないか。
現実の肉体は、エアコン技師の襲来に備えて「さっさと動かねばならぬ」という時間的切迫(BPM一二〇の緊張感)に置かれているというのに、彼女の脳内前頭葉はそれと完全に逆方向のベクトル、すなわち「ケツダンス」や「自己破壊的ボクシング」という、極めてバッファ(余白)に満ち満ちたカオスな世界へとダイブしているのだ。動きと脳内が、完全なる天の邪鬼(あまのじゃく)の如く逆方向に駆動しているのである。
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