ポッポととうもろこし
公開 2026/07/02 13:53
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我が庵(いおり)において、ポッポ氏は突如として「とうもろこしは、もっと野性味(ワイルド)を以て食すべきである!」と大見得を切った。しかるに、その実態たるや、指先で一粒、また一粒と、気の遠くなるような牛歩の歩みで毟(むし)り喰うている。およそ野性とは程遠い、極微の工芸品でも扱うかのような手つきであった。
あまりの遅々たる進み具合に、私が「一体いつまで食うているつもりか」と呆れ果てて問い質すと、氏は大真面目な面持ちでこう応じた。
「あと、わずか3行である」
行(ぎょう)?
とうもろこしを食う話をしておる筈が、何故に文章の単位が飛び出すのか。我が脳内は一瞬にして混沌の渦に巻き込まれた。
しかし、怪異はそれだけに留まらない。氏の動向を注視するうち、私は驚愕の事実に直面した。あろうことか、氏は一応の決着を見たはずの戦場を後にし、平然と「二本目」の巨躯に手をかけ、再び一粒ずつの解体作業を開始したのである。
この調子では、とうもろこしの外皮を剥ぎ終える前に、日はとっぷりと暮れ、夜の帳(とばり)が全てを覆い尽くしてしまうに違いない。
誠に困った、実にもって不可解極まる事態である。
最後の1本がいよいよ終盤、残り三分の一という隘路(あいろ)に差し掛かったその時、事態は風雲急を告げた。
先ほどまで頑なに「野性」を標榜していた筈のポッポ氏が、突如としてその身に怪しげな術をかけられたかの如く、「もっと食べたいん♡」などという、耳を疑うような甘ったるい嬌声を放ち、更なる配給を要求してきたのである。
しかしながら、我が城の兵糧(ひょうろう)は既に底を突いており、とうもろこしの在庫など一粒たりとも残ってはいない。その冷酷なる事実を告げるや否や、氏は「そんな〜ん」と、世の終わりを迎えたかのような絶望の声を漏らして身悶えした。
一介の黄色き穀物に過ぎぬとうもろこしが、人間の人格をも瞬時に変貌せしめ、おどろおどろしき執着を生み出すとは。
とうもろこしの魔力、真に恐るべし。
あまりの遅々たる進み具合に、私が「一体いつまで食うているつもりか」と呆れ果てて問い質すと、氏は大真面目な面持ちでこう応じた。
「あと、わずか3行である」
行(ぎょう)?
とうもろこしを食う話をしておる筈が、何故に文章の単位が飛び出すのか。我が脳内は一瞬にして混沌の渦に巻き込まれた。
しかし、怪異はそれだけに留まらない。氏の動向を注視するうち、私は驚愕の事実に直面した。あろうことか、氏は一応の決着を見たはずの戦場を後にし、平然と「二本目」の巨躯に手をかけ、再び一粒ずつの解体作業を開始したのである。
この調子では、とうもろこしの外皮を剥ぎ終える前に、日はとっぷりと暮れ、夜の帳(とばり)が全てを覆い尽くしてしまうに違いない。
誠に困った、実にもって不可解極まる事態である。
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