北欧神話の長編小説について
公開 2024/12/26 22:12
最終更新
2025/01/01 15:17
ゆっくりですが進めています。
――――――――――――――――――
青い。雲のない、澄んだ青空だ。ヨツンヘイムでは滅多に見ることのできない、目を細めてしまうような明るい空。
通る風にも不快な湿気はなく爽やかだ。地に咲く草花が心地よさそうに揺れている。
「ロキ」
ふと、名前を呼ばれた。
ロキが振り返ると、少し離れた場所にひとりの若い女が立っている。肩下まで伸びた金色の髪、穏やかな青色の瞳。
そこでロキは気がついた。
これは、夢だ。
あのときから、ときどき見るようになった夢。
記憶にない場所。
名も知らない女。
――おまえは、誰だ?
問いたくてロキは口を開いたが、声が形になる寸前で世界は溶けるように暗闇へと消えていった。
◆◆◆
ふわぁ……、と欠伸が漏れた。
「寝不足かい、ロキ」
アングルボダが棚から取り出した麻袋を机に置いて、ロキの顔を見る。
ロキは彼女を見返して少し眉をしかめた。
「夢見が悪かったんだ」
「なんだ、悪夢でも見たのかい?」
「………」
少し茶化すようなアングルボダにロキは言い返したくなったが、ほんの少し唇を開いたところでやめた。視線を手元の木製のカップへと落とす。
あれは、悪夢、ではない。
思い出そうとすると、脳裏にちらちらと浮かぶ明るい景色が浮かんでくる。爽やかな青色に緑色、そして金色――。しかし、そのどれもが妙に曖昧だ。引っかかるものはあるのに、うまくつかむことができない。
何度挑戦しても、明確な形を結ばない。
(……変な夢だ……)
――――――――――――――――――
青い。雲のない、澄んだ青空だ。ヨツンヘイムでは滅多に見ることのできない、目を細めてしまうような明るい空。
通る風にも不快な湿気はなく爽やかだ。地に咲く草花が心地よさそうに揺れている。
「ロキ」
ふと、名前を呼ばれた。
ロキが振り返ると、少し離れた場所にひとりの若い女が立っている。肩下まで伸びた金色の髪、穏やかな青色の瞳。
そこでロキは気がついた。
これは、夢だ。
あのときから、ときどき見るようになった夢。
記憶にない場所。
名も知らない女。
――おまえは、誰だ?
問いたくてロキは口を開いたが、声が形になる寸前で世界は溶けるように暗闇へと消えていった。
◆◆◆
ふわぁ……、と欠伸が漏れた。
「寝不足かい、ロキ」
アングルボダが棚から取り出した麻袋を机に置いて、ロキの顔を見る。
ロキは彼女を見返して少し眉をしかめた。
「夢見が悪かったんだ」
「なんだ、悪夢でも見たのかい?」
「………」
少し茶化すようなアングルボダにロキは言い返したくなったが、ほんの少し唇を開いたところでやめた。視線を手元の木製のカップへと落とす。
あれは、悪夢、ではない。
思い出そうとすると、脳裏にちらちらと浮かぶ明るい景色が浮かんでくる。爽やかな青色に緑色、そして金色――。しかし、そのどれもが妙に曖昧だ。引っかかるものはあるのに、うまくつかむことができない。
何度挑戦しても、明確な形を結ばない。
(……変な夢だ……)