2024年8月に読んだ本
公開 2024/11/24 17:46
最終更新 -
※ネタバレあります。





『RIKA』五十嵐貴久

おすすめの怖い本ランキングでよく見かける作品だったので……。
軽い気持ちで登録した出会い系サイトで、最恐ストーカーに目をつけられてしまう話。

随分前に書かれた作品であることはわかってる。
わかっているのだけど、主人公が職場のPCで出会い系サイトに登録して
就業時間中に女の子たちとメールや電話のやり取りをしていて、
色んな意味で「ひぇ〜〜〜!!!」ってなってしまった。
インターネット黎明期はこんなもんだったのだろうか。

そして妻子持ち。
なのにそのストーカーに自宅を特定され、彼女が殺人犯である可能性が浮上しても尚、
出会い系サイト経由で知り合った後ろめたさから奥さんにその事実を共有しない。
色んな意味でひやひやしっぱなしだった。

あのエンディングは確かにおぞましかったけど、
リカの人間離れした頑丈さもあいまって、ちょっとギャグちっくだった。
バイオハザードに出てくるクリーチャーか?

『軽はずみに心霊スポットに突撃して案の定呪われた』系ホラーと同じジャンルかもしれない……



『長い長い殺人』宮部みゆき

複数の語り手による一人称ミステリ……なのだけど、その語り手がなんと『財布』。

登場人物たちの見た目や容姿に関する描写はほぼない。
だって常にポケットや鞄の中だから。
彼らが得られる情報は周囲の物音や話し声、そして持ち主たちが財布に隠した秘密だけ。
いくつもの財布の物語が語られるうち、やがて連続殺人事件の真相が見えてくる……というお話。

たぶん宮部みゆき先生なら、普通に人間視点の物語でも充分面白く仕上げられただろうけど、
『財布視点』という一捻りを加えることで読む楽しみがさらに増してる。
ほろ苦いけど希望の持てるラストも好き。



『方舟』夕木春央

去年あたりものすごく話題になった作品が文庫化したと聞いて、さっそく買った。
帰省中に一気読み。分かっちゃいたけど面白い……。
「面白いよ」と母に勧めて実家に置いてきたのをちょっと後悔している。

山奥にある忘れ去られた地下建築に男女数名が閉じ込められ、さらに殺人事件が発生。
ここから脱出するには誰か一人を犠牲にする必要がある。
地下建築が水没する前に殺人犯を見つけ出さなくては……という話。

極限状態で、複雑に入り組んだ事件を冷静に論理的に解き明かした探偵役が、
こんな惨い結末を迎える作品は初めて読んだ。
真っ暗闇の中で、びくともしない上蓋を何とか持ち上げようと足掻いたであろう
彼らの人生最後の数時間を思うと、暗澹たる気分になる。
(数時間で済めばいいけど……)

「俺は、君が、極限状況のときに誰よりも理性的な判断ができることを信じている」

……犯人、これ言われた時、笑いを堪えるのに必死だっただろうな。
言ってることは少しも間違ってない。
事実、犯人は誰よりも冷静に判断し行動したわけだから。

見事に犯人を指摘することができて、いくら理性的に振る舞おうとしていたとしても、
心のなかには達成感というか、自分の頭脳を誇る気持ちが少なからずあったと思う。
そんな優秀な『探偵役』の存在を逆手に取って逃げおおせたのだから、見事と言う他ない。

関係ないけど、しばらく古めのミステリばかり読んでたから
スマホがトリックの核心に絡んでくると「おお……」って謎の感動がある。



『予言の島』澤村伊智

かつて一世を風靡した霊能力者が不吉な予言を残した瀬戸内海の孤島。
そこへ旅行に訪れた主人公たちを、次々と予言通りの惨劇が襲う……という話。

いわゆる『因習村』系かと思わせておいて、それをあざ笑う鮮やかな仕掛け。
島民の老人たちが妙に人間臭いのが何とも厭だ。
『話の通じない怪物』と『手を取り合える隣人』との境界をずーっと行ったり来たりしてる感じ。
彼らの目的がわかった後もずっと身の置きどころがなくて不安な気持ちが拭えない。

まだページが半分ほど残っている段階で『怨霊』の正体が明かされたので、
これはまだ何かあるなと予感してはいた。
時々幼馴染たちの口調が変わったり、動作の主体が曖昧だったりすることにも気づいてはいた。
なのに騙された。クヤシイ……。



『星を継ぐもの』 J・P・ホーガン

言わずと知れた古典SFの名作。
序盤は翻訳が硬くて読みにくかったけど、そこを乗り越えると後はもうずっっっと面白い。

月面で宇宙服を着込んだ死体が発見されて、しかもそれは推定五万年も前のものだった!?
……という大風呂敷を広げておいて、その謎のすべてに解答を用意してくれると思わなかった。
すげぇ。

主人公とそれを取り巻く人間関係の描写は至極あっさりしたもので、
本当にずーっと科学者たちがああでもないこうでもないと話し合ってるだけ。
なのにめちゃくちゃ面白い。タイトル回収も鮮やか。

巻末の解説にも書いてあったけど、次から次へと降ってくる謎を解き明かしていく過程は
ミステリの「アリバイ崩し」的な気持ちよさがある。
「SFオールタイム・ベスト」みたいな特集の常連である理由がよーく分かった。
読書/観劇/ゲームなど
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